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ポッコチーヌ様のお世話係
旅立つヴードゥの鳥②
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「やっぱりおねえちゃんだ!」
「あ、あの時のお嬢ちゃん」
巡回時に助けたオクトパールの少女が、嬉しそうに微笑んでいる。ゲルダは屈み、少女と目線を合わせた。
「貴女もここへ来てたんだね」
「うん! えらいひとたちがね、おとなりのくにでおはなしするんだよ。せんそうがおわってオクトパールにもどれるかもしれないんだって!」
「きっとそうなるよ。良かったね」
少女は口角を上げて頷くと、踵を上げ下げして身体を揺らす。
「うん、だってね、わたしね、このくにのおうさまにおねがいしたんだよ」
「ええ?陛下に会ったの?!」
うん、と少女は自慢げに薄い胸を張る。ゲルダは驚きながらも、国王陛下が難民の救済に意欲的だったことを思い出した。オクトパールの居住区に何度も足を運んでいたらしい。その際に少女と会っていた可能性は十分あり得る。
「おねえちゃんとあのおうじさまみたいなきしさまのことをおはなししたんだよ」
「わ、私と団長の事を?!」
「うん!」
今度は身体を左右にひねりながら、少女はその時のことを語り始めた。
「おねえちゃんとあのきしさまはぜんぜんちがったでしょ? だけどあいしあってたよね?」
「あ、あい?!」
あいって、愛?!
いや、あの時はまだそんな関係では無かったはずだが……しかし、そんなことを陛下に話したというのか?
ゲルダは全身に汗が滲むのを意識する。顔も心なしか熱くなってきた。少女はそんなゲルダを見て、うふふと笑う。
「みてたらわかったもん! だからね、おはなししたんだ。ぜんぜんちがうふたりがあいしあえるこのくにはとってもすてきです。だけど、オクトパールはみかけがみんなおなじなのに、なぜたたかうんでしょうか。わたしはとてもかなしいです。なんとかしてくださいって!」
さすが怖いもの知らずの子供と言うべきか。良くも言えたものだ。感心する。
それに比べて自分はどうだ。
あの時、全然違うという少女の言葉を聞くも、勝手に傷つき、怖くて意味を訊き返す事が出来なかった。
なんと臆病だったことだろう。
「おうさまは、にこにこわらってあたまをなでてくれたの。なんとかしてみよう、っていってくれたんだよ!」
「凄い、貴女のお陰なんだ」
少女は、えへへと照れ笑いする。ゲルダは込み上げる感情を抑えながら、少女の頭を撫でた。
少女の素直で真摯な願いは、国王の心に深く響いた筈だ。
平和で公平な世界を作るのは、きっと、そんな宝石のように純粋な思いと勇気ある行動の積み重ねなのだ。
それは、少しずつ、だけど確実に、凝り固まった理を変えていく。
「今回の和平交渉は陛下のご提案で、ご本人も同行される。スクウィラは、過去に国内で勃発した内乱を乗り越え平和を維持している国だ。その経験から良い仲介役を務められると陛下が判断されたのだ」
「へぇー、そうなんですねぇ」
ゲルダは降ってきた親切な声にお礼を言おうと、背後を振り仰ぐ。
途端に強い日差しが目に入り、ゲルダの視界を白く遮った。その人物の顔はまったく見えない。
仕方なく視線を下げたゲルダの目に、見慣れた黒のブーツと白のスラックスが飛び込んできた。
ゲルダは息を呑み、動揺のあまり尻もちをつく。地面に座り込んだゲルダへ、手が伸ばされる。
深く折り返されたその白い袖には金糸の刺繍。
「やはりお前は粗忽者だな」
「あ、あの時のお嬢ちゃん」
巡回時に助けたオクトパールの少女が、嬉しそうに微笑んでいる。ゲルダは屈み、少女と目線を合わせた。
「貴女もここへ来てたんだね」
「うん! えらいひとたちがね、おとなりのくにでおはなしするんだよ。せんそうがおわってオクトパールにもどれるかもしれないんだって!」
「きっとそうなるよ。良かったね」
少女は口角を上げて頷くと、踵を上げ下げして身体を揺らす。
「うん、だってね、わたしね、このくにのおうさまにおねがいしたんだよ」
「ええ?陛下に会ったの?!」
うん、と少女は自慢げに薄い胸を張る。ゲルダは驚きながらも、国王陛下が難民の救済に意欲的だったことを思い出した。オクトパールの居住区に何度も足を運んでいたらしい。その際に少女と会っていた可能性は十分あり得る。
「おねえちゃんとあのおうじさまみたいなきしさまのことをおはなししたんだよ」
「わ、私と団長の事を?!」
「うん!」
今度は身体を左右にひねりながら、少女はその時のことを語り始めた。
「おねえちゃんとあのきしさまはぜんぜんちがったでしょ? だけどあいしあってたよね?」
「あ、あい?!」
あいって、愛?!
いや、あの時はまだそんな関係では無かったはずだが……しかし、そんなことを陛下に話したというのか?
ゲルダは全身に汗が滲むのを意識する。顔も心なしか熱くなってきた。少女はそんなゲルダを見て、うふふと笑う。
「みてたらわかったもん! だからね、おはなししたんだ。ぜんぜんちがうふたりがあいしあえるこのくにはとってもすてきです。だけど、オクトパールはみかけがみんなおなじなのに、なぜたたかうんでしょうか。わたしはとてもかなしいです。なんとかしてくださいって!」
さすが怖いもの知らずの子供と言うべきか。良くも言えたものだ。感心する。
それに比べて自分はどうだ。
あの時、全然違うという少女の言葉を聞くも、勝手に傷つき、怖くて意味を訊き返す事が出来なかった。
なんと臆病だったことだろう。
「おうさまは、にこにこわらってあたまをなでてくれたの。なんとかしてみよう、っていってくれたんだよ!」
「凄い、貴女のお陰なんだ」
少女は、えへへと照れ笑いする。ゲルダは込み上げる感情を抑えながら、少女の頭を撫でた。
少女の素直で真摯な願いは、国王の心に深く響いた筈だ。
平和で公平な世界を作るのは、きっと、そんな宝石のように純粋な思いと勇気ある行動の積み重ねなのだ。
それは、少しずつ、だけど確実に、凝り固まった理を変えていく。
「今回の和平交渉は陛下のご提案で、ご本人も同行される。スクウィラは、過去に国内で勃発した内乱を乗り越え平和を維持している国だ。その経験から良い仲介役を務められると陛下が判断されたのだ」
「へぇー、そうなんですねぇ」
ゲルダは降ってきた親切な声にお礼を言おうと、背後を振り仰ぐ。
途端に強い日差しが目に入り、ゲルダの視界を白く遮った。その人物の顔はまったく見えない。
仕方なく視線を下げたゲルダの目に、見慣れた黒のブーツと白のスラックスが飛び込んできた。
ゲルダは息を呑み、動揺のあまり尻もちをつく。地面に座り込んだゲルダへ、手が伸ばされる。
深く折り返されたその白い袖には金糸の刺繍。
「やはりお前は粗忽者だな」
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