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ポッコチーヌ様のお世話係
最後の日①
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十日ぶりに戻るマクシミリアンの執務室で、ゲルダは執拗な口付けを受けていた。壁に押し付けられ、唇を貪られる。両手で顔を固定され、硬い身体で押さえつけられ身動ぎする事さえ叶わない。
「ゲルダ……お前は相変わらず美しい」
熱に浮かされた声で吐息混じりに囁く声が、ゲルダの胸を身体を疼かせる。
それを必死で抑制しながらゲルダは自らに言い聞かせた。
恋は錯覚に近い。
短期間で盛り上がったものなら尚更だ。
こうやって全身で愛を語るマクシミリアンも、ゲルダが傍にいなくなれば熱は冷め、やがて気づくだろう。とるに足らない女だったことに。
そう、恋もまた洗脳のようなもの。
元凶が居なくなれば解ける呪いだ。
「愛している」
蕩けるような愛の告白を呑み込んでしまえば、きっとゲルダの足は動かない。
羽を持たぬ鳥は駆けねば生きていけない。
マクシミリアンがせっかく得た羽なのに、その足枷になるのは嫌だ。
ゲルダを背負っては飛べるものも飛べない。
ゲルダは堪らなくなり顔を背けた。行き場を見失った唇が首筋に当たる。しかし、懲りないマクシミリアンにペロンと舌で撫で上げられ、ゲルダの口から変な声が出た。
「うひょぃ」
「ふふ……なんという声だ。面白いな。ここはどうだ?」
顎の裏を舌先で擽られ、ゲルダは顔を反らし壁に後頭部を打ち付ける。
「うげへ」
「ははっ、困ったな、全身舐めたくなってきたぞ」
「私で遊ぶのは止めて下さい」
「俺の事を舐めても良いぞ」
白い首筋を晒してみせる美人をじとっと見ながら、ゲルダはマクシミリアンの脇腹に手を当ててガシガシと掻いた。マクシミリアンは笑い声を上げて後退る。ゲルダはそれを追いかけ、ベッドに追い詰めると再び脇腹を手荒に擽った。マクシミリアンがゲルダの襟を掴んでシーツの上に倒れ込む。ゲルダは覆いかぶさって脇腹に加えて脇を攻めた。
「は、ははっ、止めろっ、あはははははっ!」
マクシミリアンは高い声で笑いながら目尻に涙を浮かべる。ゲルダはニヤニヤ笑いながらも手を緩めない。バタバタと手足を動かしてこそばゆさを逃すマクシミリアンだったが、やがて呼吸をするのもままならなくなったようで、ゲルダの腕をかなり強めにバンバンと叩き始めた。
ゲルダは漸く手を緩め、流れ落ちて生え際を濡らす涙を指で拭う。
「すいません、やり過ぎました」
マクシミリアンは胸を上下させ、はぁはぁと呼吸を落ち着けていたが、やがて、エメラルドの瞳を揺らしながら静かに告げた。
「今朝、父上に面会した」
「そうですか」
ゲルダは努めて冷静に応える。マクシミリアンは天井に視線を向けながらポツポツと語り始めた。
「父上は様変わりしていた。僅か十日で人はあのように老けるものなのだろうか」
「ゲルダ……お前は相変わらず美しい」
熱に浮かされた声で吐息混じりに囁く声が、ゲルダの胸を身体を疼かせる。
それを必死で抑制しながらゲルダは自らに言い聞かせた。
恋は錯覚に近い。
短期間で盛り上がったものなら尚更だ。
こうやって全身で愛を語るマクシミリアンも、ゲルダが傍にいなくなれば熱は冷め、やがて気づくだろう。とるに足らない女だったことに。
そう、恋もまた洗脳のようなもの。
元凶が居なくなれば解ける呪いだ。
「愛している」
蕩けるような愛の告白を呑み込んでしまえば、きっとゲルダの足は動かない。
羽を持たぬ鳥は駆けねば生きていけない。
マクシミリアンがせっかく得た羽なのに、その足枷になるのは嫌だ。
ゲルダを背負っては飛べるものも飛べない。
ゲルダは堪らなくなり顔を背けた。行き場を見失った唇が首筋に当たる。しかし、懲りないマクシミリアンにペロンと舌で撫で上げられ、ゲルダの口から変な声が出た。
「うひょぃ」
「ふふ……なんという声だ。面白いな。ここはどうだ?」
顎の裏を舌先で擽られ、ゲルダは顔を反らし壁に後頭部を打ち付ける。
「うげへ」
「ははっ、困ったな、全身舐めたくなってきたぞ」
「私で遊ぶのは止めて下さい」
「俺の事を舐めても良いぞ」
白い首筋を晒してみせる美人をじとっと見ながら、ゲルダはマクシミリアンの脇腹に手を当ててガシガシと掻いた。マクシミリアンは笑い声を上げて後退る。ゲルダはそれを追いかけ、ベッドに追い詰めると再び脇腹を手荒に擽った。マクシミリアンがゲルダの襟を掴んでシーツの上に倒れ込む。ゲルダは覆いかぶさって脇腹に加えて脇を攻めた。
「は、ははっ、止めろっ、あはははははっ!」
マクシミリアンは高い声で笑いながら目尻に涙を浮かべる。ゲルダはニヤニヤ笑いながらも手を緩めない。バタバタと手足を動かしてこそばゆさを逃すマクシミリアンだったが、やがて呼吸をするのもままならなくなったようで、ゲルダの腕をかなり強めにバンバンと叩き始めた。
ゲルダは漸く手を緩め、流れ落ちて生え際を濡らす涙を指で拭う。
「すいません、やり過ぎました」
マクシミリアンは胸を上下させ、はぁはぁと呼吸を落ち着けていたが、やがて、エメラルドの瞳を揺らしながら静かに告げた。
「今朝、父上に面会した」
「そうですか」
ゲルダは努めて冷静に応える。マクシミリアンは天井に視線を向けながらポツポツと語り始めた。
「父上は様変わりしていた。僅か十日で人はあのように老けるものなのだろうか」
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