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ポッコチーヌ様のお世話係
断罪③
しおりを挟む「カトリーヌ!」
期待を込めて呟いたガルシア侯爵に、王妃であり娘である美しき人が顔を向ける。
そして、射るように鋭く、凍るほどに冷たい視線を投げつけた。
父は即座に息を呑み、顔を強ばらせる。
「御苦労でした。ゲルダ・シュモルケ」
透明感のある、しかし迫力のある声が、広間に響き渡る。
その場に膝を付き頭を下げるゲルダの前に立ち、王妃はぐるりと辺りを見回した。
「私には皆様方にお詫びしなければならないことがあります」
その場にいる全ての人々が王妃に注目し、息を潜めてその言葉に耳を傾ける。王妃は前を見据え、告白した。
「私はここにいる父、ガルシア侯爵が犯した罪を全て知っております。今回のことも然り、中には間接的に私が関与したものもある。その卑怯な所業は枚挙に遑がないほど。我が父は罪深き人物であり、この国の未来にとって間違いなく害悪となる存在です」
「カトリーヌ……何を……」
父は放心し、強ばっていた身体から力を抜いた。マクシミリアンは倒れ込まぬよう、腕を引く。
「しっかりとお聞き下さい。姉上は自らの進退を賭けて挑んでらっしゃる。貴方が母上を捨てた日から、ずっとこの日を待っておいでだったのです」
「何だと?!……馬鹿な」
父は信じられぬというように首を振る。そして、汗が滴る額に手を当てた。髪を乱し汗と脂に塗れた姿は、最早美しいと表現出来るものではなくなっていた。
「私は父を、ガルシア侯爵を糾弾する決断を致しました。ガルシア家の罪は私も贖うつもりです。そして、これまでガルシア家の暴挙を止めることが敵わなかった罪を、負う所存です」
カトリーヌは頭上にあるティアラへと手を伸ばし、固定していたピンを美しい所作で抜いていく。そして、取り外したそれを胸の前に掲げた。そのまま後ろを振り返り、大理石の床に両膝をつく。
「罪深き家の娘は、王妃には相応しくありません。私はこの王冠を返上致します」
頭上に高く掲げられたティアラ。嵌め込まれたクリスタルがキラキラと反射し、その光がまるで破片のように辺りに散らばる。
誰もが動きを封じられたように立ち尽くし、ことの成り行きを固唾を呑んで見守った。
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