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ポッコチーヌ様のお世話係

断罪②

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「さて、皆様。それでは事の詳細をお話致しましょう」

 会場の中央に進み出た長身の女騎士は、手を広げた。
 マクシミリアンは、その堂々たる姿に惚れ惚れとする。
 腰まで伸びた艶やかな黒髪を揺らし、真っ直ぐに前を見すえる美しい横顔。
 彼女を見つけられてしまったことは悔しいが、万人に誇りたい気持ちもある。

「私は見ての通り、この国の先住民族シャンピニでございます。十になるまで一家で住込みの奴隷を務めておりました」

 囁き合う人間はチラホラ見えるが、大抵が魅入られたようにゲルダに視線を向けていた。ゲルダは胸に手を当て、語る。

「その時の暮らしを敢えて語りはしません。シャンピニの大半がそうであるように、私は今を、未来を生きることに目を向けているからです。ただ、私共を鎖から解き放って下さった国王陛下には、この場を借りて心より感謝を述べさせて頂きます」

 完璧な角度で腰を折り数秒、ゲルダは再び背筋を伸ばし、後方に腕を伸ばす。

「捕らえられたこの者は、かつての雇用主であります。彼は私を陥れるために、あるお方によって引きずり出され、私を辱めることを強要されたと言っています」

 白騎士に両腕を掴まれたジェレミーは、青ざめながらも顔を上げていた。

「間違いはありませんか?」

 ジェレミーはコクンと頷き、声を震わせながらもはっきりと答えた。

「貴女の言う通りだ」

 未遂であってもゲルダに狼藉を働き、過去に虐待をしていた男である。マクシミリアンは腹底にグルグルと渦巻く怒りを意識した。後で鉄拳を食らわせ、汚い逸物をむしり取ってやろうかと妄想する。突然物騒な気を放ち始めた息子に気付き、ガルシア侯爵が身体を固くした。

「彼は自らの行いを反省し私に謝罪しております。幸いにも未然に防げたゆえ、私も処罰は望みません。しかし……」

 ゲルダはこちらに身体を向け、黄金の瞳をガルシア侯爵に向けた。

「唆した者はそれなりの刑罰を受ける必要があると存じます」

 侯爵は忌々しげに唇を歪め、見るのも穢らわしいと言うようにそっぽを向く。

「私には見当がついております。その方の罪は多岐に渡る。この一件が無くてもいずれ全て明るみになり、築き上げた砂の城は崩壊した事でしょう」

 ゲルダの言葉に周囲がざわめき、やがて、シンと静まり返った。
 前で惚けていた来賓らが、後ろを振り返り、慌てて左右に避けていく。
 そうして出来上がった、玉座から一直線に伸びる道。
 その道を、こちらへ向かって悠々と歩いてくる人物がある。
 その背後、二つ並ぶ玉座のひとつが空席となり、残された国王がじっとこちらを窺っているのが見えた。
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