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ポッコチーヌ様のお世話係
ニコライの事情②
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マクシミリアンは唇を噛み、グッと手を握りしめた。
「相も変わらず卑怯な人だ」
「それで侯爵は何を要求しているんですか」
ニコライは鼻に指を突っ込む。ゲルダは咎めようかと思ったが、我慢した。彼にとっては鼻をいじくることが精神を安定させる行為なのかもしれない。
「ゲルダの解任とマクシミリアンが自宅へ戻ること。……それと、マクシミリアンのチッコポリンヌを使えるようにすることだ」
「俺のポッコチーヌはゲルダのものだ! 他の女になんぞに触らせるものか!」
「……侯爵は、ゲルダを上手く使えと。マクシミリアンが不能で無くなった事を確認したら引き剥がせってさ。後のことは任せろとも言っていた」
ゲルダは肩をすくめ、苦笑いをした。
「なるほど。下の世話は奴隷に任せろ、得意分野だろうと、そういう訳ですか。それで、用が済めば証拠隠滅の為に私を消すおつもりなのですね」
「そんな事はさせない!!」
マクシミリアンは、ゲルダを抱き寄せる。ニコライは焦ったように手を振る。
「いやいや、いくらなんでもそこまではしないだろ? 悪いようにはしないって言ってたぞ、シャンピニだがガルシア家にとっては恩人に変わりないから、働き口を斡旋すると……」
「王妃様はありえない話ではないと仰せでした」
ニコライは愕然とし、背もたれに寄りかかる。そして、鼻をほじった指で忙しなく前髪を掻き混ぜ始めた。
「冗談じゃねぇよ。俺ぁ嫌だ。そんなおっそろしい企みに加担してたまるかよ」
「ちなみにポッコチーヌ様は完全勃起と射精を習得されました。ご報告されますか?」
ボサボサの前髪から覗く瞳が充血している。流石の副団長も、予想外の事態に平常心を無くしているようだ。
「お前ら、ヤッたの?」
「まだだ。自慰行為をもう少し練習した方が良いとゲルダが言うので……」
「おっぱい触らせてもらったの?」
「まだだ。ゲルダが想像で補えと言うので……」
ニコライは目を細めてゲルダを見る。ゲルダは居心地が悪くなり、身動ぎした。
「マクシミリアンが可哀想だろ。おっぱいぐらい触らせてやれよ」
ゲルダはマクシミリアンに聞き取られぬよう、ニコライに小声で告げる。
「いやいや……それこそ軽率な真似は出来ないでしょう。諸々の事情を除いても、私と団長は上司と部下でありますし」
「全部とっぱらっちまえば、ただの男と女だろ」
「また乱暴な……とりあえず厄介事を片付けないと安心出来ません」
「生真面目な奴だな」
「あんたが適当すぎるんです。とりあえず、団長への性教育は順調だと報告して下さい。侯爵の思い通りに事は進んでいると。せいぜい油断させておきましょう」
マクシミリアンはニコライに向かい、頭を下げた。
「ニコライ、すまない。お前を巻き込んでしまった。でも、力を貸してほしい。もちろん、お前の事は守る。今度は俺が全力で」
ニコライは激しく瞬きをすると、ゲルダを見る。ゲルダは黙って頷いた。
「俺を守るって本気かよ。大丈夫なの? こいつ」
「団長は闘うご覚悟です」
「正直言えば、あの人の事はまだ怖い。けど、これだけ長く会っていないせいか多少恐怖も薄れた気がするのだ。そして何より、俺はもう自分を偽りたくない。そして、ゲルダを失いたくない」
「そんなにゲルダが好きか」
マクシミリアンはゲルダをうっとりと見つめ、頷く。
「ゲルダのように強く美しい人はいない」
「そんな事ねぇぞ、いっぱいいるぞ。お前は今まで目を閉じていたのと同じようなもんなんだから。そう、いわば、最初に見た物を親と勘違いする雛鳥だ」
ゲルダはその喩えに感心する。確かにそうかもしれない。マクシミリアンは閉じていた心の扉を開きつつある。澄んだエメラルドの瞳には、これから見るものすべてが新鮮に映ることだろう。一時は失われた少年期の好奇心を惜しむことなく発動し、その柔らかな心に幾つもの景色を染み込ませるのだ。
そして、新たに生まれ変わる。自分なりの美の基準を確立していくのだ。
「お前だってゲルダに求愛していたではないか」
「そうだけど……」
言い淀むニコライを見かねてゲルダは口を挟んだ。
「例え雛鳥だとしても、今現在目にするものを信じるしかありません。それは私たちも同じではありませんか? その時々で正しいと思える道を選んで進むしかない」
ニコライはゲルダに視線を合わせる。その瞳には何か言いたげな色が浮かんでいたが、結局、口に出すのは諦めたようだ。
「確かにそうだな。俺はガルシア侯爵を正しいとは思えねぇ。家族を犠牲にしても、お前らを売り渡しても、どっちにしたって間違いなく後悔するだろう。だったら、抗うさ」
ニコライは椅子から勢い良く立ち上がると、テーブルに両手をバンッとつく。
「そうと決まればやるぞ! 持てるツテと知識を全部使って勝利を掴もうぜ!」
マクシミリアンとゲルダも立ち上がった。マクシミリアンが中央へと伸ばした手にニコライとゲルダが掌を重ねる。
そしてここに、打倒ガルシア侯爵同盟が誕生したのである。
「相も変わらず卑怯な人だ」
「それで侯爵は何を要求しているんですか」
ニコライは鼻に指を突っ込む。ゲルダは咎めようかと思ったが、我慢した。彼にとっては鼻をいじくることが精神を安定させる行為なのかもしれない。
「ゲルダの解任とマクシミリアンが自宅へ戻ること。……それと、マクシミリアンのチッコポリンヌを使えるようにすることだ」
「俺のポッコチーヌはゲルダのものだ! 他の女になんぞに触らせるものか!」
「……侯爵は、ゲルダを上手く使えと。マクシミリアンが不能で無くなった事を確認したら引き剥がせってさ。後のことは任せろとも言っていた」
ゲルダは肩をすくめ、苦笑いをした。
「なるほど。下の世話は奴隷に任せろ、得意分野だろうと、そういう訳ですか。それで、用が済めば証拠隠滅の為に私を消すおつもりなのですね」
「そんな事はさせない!!」
マクシミリアンは、ゲルダを抱き寄せる。ニコライは焦ったように手を振る。
「いやいや、いくらなんでもそこまではしないだろ? 悪いようにはしないって言ってたぞ、シャンピニだがガルシア家にとっては恩人に変わりないから、働き口を斡旋すると……」
「王妃様はありえない話ではないと仰せでした」
ニコライは愕然とし、背もたれに寄りかかる。そして、鼻をほじった指で忙しなく前髪を掻き混ぜ始めた。
「冗談じゃねぇよ。俺ぁ嫌だ。そんなおっそろしい企みに加担してたまるかよ」
「ちなみにポッコチーヌ様は完全勃起と射精を習得されました。ご報告されますか?」
ボサボサの前髪から覗く瞳が充血している。流石の副団長も、予想外の事態に平常心を無くしているようだ。
「お前ら、ヤッたの?」
「まだだ。自慰行為をもう少し練習した方が良いとゲルダが言うので……」
「おっぱい触らせてもらったの?」
「まだだ。ゲルダが想像で補えと言うので……」
ニコライは目を細めてゲルダを見る。ゲルダは居心地が悪くなり、身動ぎした。
「マクシミリアンが可哀想だろ。おっぱいぐらい触らせてやれよ」
ゲルダはマクシミリアンに聞き取られぬよう、ニコライに小声で告げる。
「いやいや……それこそ軽率な真似は出来ないでしょう。諸々の事情を除いても、私と団長は上司と部下でありますし」
「全部とっぱらっちまえば、ただの男と女だろ」
「また乱暴な……とりあえず厄介事を片付けないと安心出来ません」
「生真面目な奴だな」
「あんたが適当すぎるんです。とりあえず、団長への性教育は順調だと報告して下さい。侯爵の思い通りに事は進んでいると。せいぜい油断させておきましょう」
マクシミリアンはニコライに向かい、頭を下げた。
「ニコライ、すまない。お前を巻き込んでしまった。でも、力を貸してほしい。もちろん、お前の事は守る。今度は俺が全力で」
ニコライは激しく瞬きをすると、ゲルダを見る。ゲルダは黙って頷いた。
「俺を守るって本気かよ。大丈夫なの? こいつ」
「団長は闘うご覚悟です」
「正直言えば、あの人の事はまだ怖い。けど、これだけ長く会っていないせいか多少恐怖も薄れた気がするのだ。そして何より、俺はもう自分を偽りたくない。そして、ゲルダを失いたくない」
「そんなにゲルダが好きか」
マクシミリアンはゲルダをうっとりと見つめ、頷く。
「ゲルダのように強く美しい人はいない」
「そんな事ねぇぞ、いっぱいいるぞ。お前は今まで目を閉じていたのと同じようなもんなんだから。そう、いわば、最初に見た物を親と勘違いする雛鳥だ」
ゲルダはその喩えに感心する。確かにそうかもしれない。マクシミリアンは閉じていた心の扉を開きつつある。澄んだエメラルドの瞳には、これから見るものすべてが新鮮に映ることだろう。一時は失われた少年期の好奇心を惜しむことなく発動し、その柔らかな心に幾つもの景色を染み込ませるのだ。
そして、新たに生まれ変わる。自分なりの美の基準を確立していくのだ。
「お前だってゲルダに求愛していたではないか」
「そうだけど……」
言い淀むニコライを見かねてゲルダは口を挟んだ。
「例え雛鳥だとしても、今現在目にするものを信じるしかありません。それは私たちも同じではありませんか? その時々で正しいと思える道を選んで進むしかない」
ニコライはゲルダに視線を合わせる。その瞳には何か言いたげな色が浮かんでいたが、結局、口に出すのは諦めたようだ。
「確かにそうだな。俺はガルシア侯爵を正しいとは思えねぇ。家族を犠牲にしても、お前らを売り渡しても、どっちにしたって間違いなく後悔するだろう。だったら、抗うさ」
ニコライは椅子から勢い良く立ち上がると、テーブルに両手をバンッとつく。
「そうと決まればやるぞ! 持てるツテと知識を全部使って勝利を掴もうぜ!」
マクシミリアンとゲルダも立ち上がった。マクシミリアンが中央へと伸ばした手にニコライとゲルダが掌を重ねる。
そしてここに、打倒ガルシア侯爵同盟が誕生したのである。
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