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ポッコチーヌ様のお世話係

性欲と母性愛③

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「ちょっ、ちょいちょい、その辺にしといて下さい団長、擽ったい……」
「ここへの口付けは何を意味するのだゲルダ」
「いや、そこは意味なんてありません! あっ、こら!」

 マクシミリアンはゲルダの襟をぐいと掴み、引下げようとする。元々緩めの造りになっている寝巻きは、簡単にたわみ、胸の谷間が顕になる。

「だんちょ……」
「ゲルダ、胸の膨らみが……」

 動きを止めたマクシミリアンの目から隠すように、ゲルダはそこを掌で覆う。

「そりゃあ、ありますよ! 私だって女なんですから! でも、乳はダメです、乳は……」
「乳はだめなのか? 何故」

 ゲルダは暫し考える。何と説明すれば良いだろう。母性を欲するマクシミリアンが乳に執着するのは当然だとは言える。しかし、ゲルダは本当の母では無い。まだ未婚で出産経験もない以上、これは母乳を補給するものではなく……

「団長、私の乳に触っても母乳はでませんよ」
「そんな事はわかっておるぞ。馬鹿にするな」
「ならば、無闇矢鱈と触ってはなりません。そこは簡単には触ってはならぬところです。節度を保ちましょう、節度を」
「でも、無性に触りたいし、口付けたいのだが」
「我慢我慢」
「お前がそんなことを言うから、乳を吸いたくなってきた」

 ゲルダはその言葉に動転し、マクシミリアンの額を掴むと、引き剥がした。

「うぐっ、痛いぞ、ゲルダ」
「団長が変なことを言うからでしょう!」
「乳を吸いたいからそう言った。正直に言っただけなのにいけないのか? 何でも申せと言ったのに!」

 掌の下で瞼が動いてこそばゆい。マクシミリアンは視界を遮られながらもめげずに襟を引っ張る。ゲルダは阻止しようと身体を捻るが、ふと名案を思い付く。
 そしてゲルダは人差し指を可憐な唇に捩じ込んだ。

「ふんんんぐっ?!」

 いきなりの暴挙にバタつくマクシミリアンへ、ゲルダは告げる。

「なら、私の指をお吸い下さい」

 指を曲げて、舌をトントンと優しくノックすれば、マクシミリアンは途端に大人しくなった。おずおずと舌を動かし、指先を擦り始める。そのうち大胆に舌を絡め始めた。ゲルダはひとまず胸を撫で下ろし、身体の力を抜く。マクシミリアンを見下ろせば、ゲルダの手首を両手で掴み、チュウチュウと吸い付いている。その可愛らしい様に微笑み、額に当てていた手を外した。
 しかし、掌の下から現れたマクシミリアンの表情を目にした時、ゲルダは愕然とし、己の浅はかさを思い知ったのである。

 マクシミリアンはエメラルドの瞳にそれとわかる熱を宿し、潤ませていた。うっとりと虚ろに細め、睫毛がかかる目元を赤く染めている。吸い付く唇の隙間から漏れる息は早く熱い。
 ゲルダはその妖艶な様に呼吸を忘れた。

「だんちょ……」

 咄嗟に指を引き抜こうとするが、マクシミリアンはそれを許さない。両手で握り込み、赤い舌でチロチロと指の側面を辿り始めた。ゲルダの背中をぞくぞくとした痺れが駆け抜ける。それでも、ゲルダは懸命に平静を装い、指を引いた。

「も、良いでしょう、止めてください」

 マクシミリアンは荒い息の合間に拒否の言葉を口にする。

「いや……だ……」
「だ、団長、指がふやけてしまいます」
「じゃ、じゃあ、他の指を……」
「それは、また明日ということで。一日一本にしておきましょう」
「全部舐めたら、その次は……乳か?」
「ないです」
「乳……」

 名残り惜しそうに手を離すマクシミリアンを見ながら、ゲルダはおしゃぶりを用意することを考える。癖になっては困るが、どうしてもこの事態は回避しなくてはならない。
 マクシミリアンは、おそらく母性への欲求と性欲を混同している。先はともかく後者を与えることは出来ない。男性機能の復活はマクシミリアンの抱える課題のひとつではあるが、優先事項ではない。ゲルダで慣れたなら、徐々にほかの女性で試してみればよい。
 胸が針でチクチク刺されたように痛むが、今ならまだ大丈夫だ。元より叶う筈のない想いだ。きっと、忘れられる。いつか、マクシミリアンが伴侶を得ても祝福できるだろう。
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