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ポッコチーヌ様のお世話係
目指せ!ポッコチーヌ②
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「団長、落ち着きましょう。団長が望まれるなら、私は添い寝係を続けますし、口付けも致します。副団長とは寝ませんし、部下以上の関係になるつもりもございません」
マクシミリアンは口を閉じ、ゲルダをおどおどと見上げる。
「そして、団長は、私を満足させることなどお考えにならなくても宜しい」
「でも、それでは、俺ばかり与えてもらうだけでは……」
「私の望みは申し上げました。それ以上のものは要りません」
ゲルダはハッキリと告げた。
それは、ついさっき自覚した恋心との決別を意味する。もしかしたら、ニコライはそれに気付き、回りくどい手を使ってゲルダに釘を刺したのかもしれない。
肌の色や育ち、肩書き、年齢、性別……
そんなものに縛られるべきでは無いと、ゲルダだとて主張したい。公平な価値観が当たり前になる世界が正しいのだと信じたい。けれど、それは一朝一夕では成し得ないこと。例え最高権力者であろうとも、人の中に染み込んでしまった常識を拭い去ることは容易でない。
それならば、優先されることは決まっている。そう、マクシミリアンの自由には猶予がないとニコライは言った。現在、ゲルダの心を一手に掌握しているこの愛すべき人物、彼をとにもかくにも救うこと。
その為なら、淡い恋心など潔く捨ててしまおうではないか。とことん世話役に徹してやろう。
「団長、私は貴方の部下です。ですから、私を好きにお使い下さい。それで良いのです」
「駄目だ、そんな事は、だって、それではまるで……」
ゲルダはその後に続くであろう言葉を奪い取る。
「大丈夫です。私は、嫌なことは嫌だと申します。……もう奴隷に戻るつもりは無いのですから」
ニコライがすっと目を逸らしたのを、ゲルダは見逃さなかった。
一方、マクシミリアンはエメラルドの瞳を見開き、それをみるみる潤ませる。ゲルダは走り寄り足元に跪くと、それがこぼれ落ちる前に指で拭った。
「私と団長は深い親愛で結びついております。故に口付けすることも不自然ではありません。おおいにやりましょう!」
「おいおい……」
ニコライの声を無視し、ゲルダはマクシミリアンの手を握り、切に訴える。
「もちろん、適切な場所にするべきですし、色々邪推する輩もいますので人前ではやらぬ方が宜しいでしょう。口付けは二人っきりの時だけに限定しましょう」
「わかった」
マクシミリアンはゲルダと目を合わせ、素直にコクコクと頷いた。
「私と団長だけの秘密です」
「俺とゲルダだけの……」
頬を染めて繰り返すマクシミリアンに微笑むと、ゲルダはそのままニコライに顔を向け、舌を出す。
ニコライは盛大に顔を歪め鼻じらんだ。
ゲルダは顔を戻し、再びマクシミリアンに囁く。
「そう、私の事は、ポッコチーヌ様と同じように扱ってください」
「お、おいおい、ゲルダ」
流石に焦ったのだろう、背後でニコライが足を踏み出す気配がした。マクシミリアンもポカンと口を開いてゲルダを見ている。
「ずっと寄り添い、決して裏切らない、貴方の親友です。このゲルダ・シュモルケ、本日より団長のポッコチーヌを目指します!!」
ゲルダの宣言は、力強く部屋に響き渡った。
マクシミリアンは口を閉じ、ゲルダをおどおどと見上げる。
「そして、団長は、私を満足させることなどお考えにならなくても宜しい」
「でも、それでは、俺ばかり与えてもらうだけでは……」
「私の望みは申し上げました。それ以上のものは要りません」
ゲルダはハッキリと告げた。
それは、ついさっき自覚した恋心との決別を意味する。もしかしたら、ニコライはそれに気付き、回りくどい手を使ってゲルダに釘を刺したのかもしれない。
肌の色や育ち、肩書き、年齢、性別……
そんなものに縛られるべきでは無いと、ゲルダだとて主張したい。公平な価値観が当たり前になる世界が正しいのだと信じたい。けれど、それは一朝一夕では成し得ないこと。例え最高権力者であろうとも、人の中に染み込んでしまった常識を拭い去ることは容易でない。
それならば、優先されることは決まっている。そう、マクシミリアンの自由には猶予がないとニコライは言った。現在、ゲルダの心を一手に掌握しているこの愛すべき人物、彼をとにもかくにも救うこと。
その為なら、淡い恋心など潔く捨ててしまおうではないか。とことん世話役に徹してやろう。
「団長、私は貴方の部下です。ですから、私を好きにお使い下さい。それで良いのです」
「駄目だ、そんな事は、だって、それではまるで……」
ゲルダはその後に続くであろう言葉を奪い取る。
「大丈夫です。私は、嫌なことは嫌だと申します。……もう奴隷に戻るつもりは無いのですから」
ニコライがすっと目を逸らしたのを、ゲルダは見逃さなかった。
一方、マクシミリアンはエメラルドの瞳を見開き、それをみるみる潤ませる。ゲルダは走り寄り足元に跪くと、それがこぼれ落ちる前に指で拭った。
「私と団長は深い親愛で結びついております。故に口付けすることも不自然ではありません。おおいにやりましょう!」
「おいおい……」
ニコライの声を無視し、ゲルダはマクシミリアンの手を握り、切に訴える。
「もちろん、適切な場所にするべきですし、色々邪推する輩もいますので人前ではやらぬ方が宜しいでしょう。口付けは二人っきりの時だけに限定しましょう」
「わかった」
マクシミリアンはゲルダと目を合わせ、素直にコクコクと頷いた。
「私と団長だけの秘密です」
「俺とゲルダだけの……」
頬を染めて繰り返すマクシミリアンに微笑むと、ゲルダはそのままニコライに顔を向け、舌を出す。
ニコライは盛大に顔を歪め鼻じらんだ。
ゲルダは顔を戻し、再びマクシミリアンに囁く。
「そう、私の事は、ポッコチーヌ様と同じように扱ってください」
「お、おいおい、ゲルダ」
流石に焦ったのだろう、背後でニコライが足を踏み出す気配がした。マクシミリアンもポカンと口を開いてゲルダを見ている。
「ずっと寄り添い、決して裏切らない、貴方の親友です。このゲルダ・シュモルケ、本日より団長のポッコチーヌを目指します!!」
ゲルダの宣言は、力強く部屋に響き渡った。
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