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ポッコチーヌ様のお世話係
団長は可愛い②
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「街に出るのは久しぶりだ」
手に嵌めた白い手袋を指を動かして馴染ませながら、マクシミリアンは呟いた。多少顔が強ばってはいるが、外出の準備をする様子はテキパキと澱みない。
「散歩に行くわけじゃねぇぞ、巡回だ 」
「知っている。お前と一緒にするな」
「団長、中央広場のカフェで飯食いましょう、奢って下さい」
「何だお前は、図々しい」
叱られた団員は嬉しそうにエヘヘと笑う。
「だって、嬉しいんっすよ。久しぶりに団長と巡回出来るんですから。当番で良かったー!俺ラッキー!」
「何がそんなに嬉しいのだ」
マクシミリアンは浮き立つ部下を怪訝そうに見ている。
「そりゃあ、お前が街を歩けば皆注目するからな。若い娘がこぞってきゃあきゃあ騒ぐ」
「注目されるのは俺でお前じゃないだろう。それに、俺は騒がれたくなんかない。街の治安を守るための仕事だぞ。こっちが観察しなきゃならんのに」
「まあまあ、万年むさ苦しい男共に囲まれている可哀想な部下にお零れくらいくれてやれよ」
男たちがくだらない会話に興じる様子を、ゲルダは生温かい目で見つめていた。マクシミリアンの調子は良さそうだし、このまま和気あいあいとした雰囲気で巡回を終えられたら良いと願う。
「ゲルダ、行くぞ。お前は俺の隣に来い」
「はい」
ゲルダはマクシミリアンの元へ走り寄る。騎士団本部の門を抜け、堀に掛かった橋を渡れば、そこはもう城下町だ。荷馬車や人が行き交い、通りには小端積み壁の商店が建ち並ぶ。王都に来て以来、じっくり観光する暇もなかったゲルダは、キョロキョロと辺りを見回した。
「物珍しそうだなぁ、ゲルダ。街にはあまり来ないのか」
背後から団員に問われ、ゲルダは答える。
「実はそうなんですよ。なかなか見回る機会が無くて」
宿舎は城下町とは城を挟んで真逆の方向にある。日が暮れてから一人で足を運ぶのは面倒だったし、誰か誘おうにも途中採用で研修生扱いのゲルダには親しい者はいなかった。休日に王立図書館や公園へ足を伸ばすことはあったが、洗練された街の中となれば、粗末で地味な私服では悪目立ちしてしまう気がして怖気付いてしまった。
「今度飲みにでも連れてってやるさ」
「私は酒を飲まないのですが」
「飯も美味いぞ。歌や芝居を楽しむ店もある」
「へぇ!」
「ゲルダ、無駄口を叩くな」
背後を振り返り会話するゲルダの腕をマクシミリアンが掴む。
「すいません」
「街なら俺が連れていってやる」
ゲルダはマクシミリアンの横顔をまじまじと見つめた。
「大丈夫なんですか?」
「多分」
「そんなんじゃ安心出来ませんよ」
手に嵌めた白い手袋を指を動かして馴染ませながら、マクシミリアンは呟いた。多少顔が強ばってはいるが、外出の準備をする様子はテキパキと澱みない。
「散歩に行くわけじゃねぇぞ、巡回だ 」
「知っている。お前と一緒にするな」
「団長、中央広場のカフェで飯食いましょう、奢って下さい」
「何だお前は、図々しい」
叱られた団員は嬉しそうにエヘヘと笑う。
「だって、嬉しいんっすよ。久しぶりに団長と巡回出来るんですから。当番で良かったー!俺ラッキー!」
「何がそんなに嬉しいのだ」
マクシミリアンは浮き立つ部下を怪訝そうに見ている。
「そりゃあ、お前が街を歩けば皆注目するからな。若い娘がこぞってきゃあきゃあ騒ぐ」
「注目されるのは俺でお前じゃないだろう。それに、俺は騒がれたくなんかない。街の治安を守るための仕事だぞ。こっちが観察しなきゃならんのに」
「まあまあ、万年むさ苦しい男共に囲まれている可哀想な部下にお零れくらいくれてやれよ」
男たちがくだらない会話に興じる様子を、ゲルダは生温かい目で見つめていた。マクシミリアンの調子は良さそうだし、このまま和気あいあいとした雰囲気で巡回を終えられたら良いと願う。
「ゲルダ、行くぞ。お前は俺の隣に来い」
「はい」
ゲルダはマクシミリアンの元へ走り寄る。騎士団本部の門を抜け、堀に掛かった橋を渡れば、そこはもう城下町だ。荷馬車や人が行き交い、通りには小端積み壁の商店が建ち並ぶ。王都に来て以来、じっくり観光する暇もなかったゲルダは、キョロキョロと辺りを見回した。
「物珍しそうだなぁ、ゲルダ。街にはあまり来ないのか」
背後から団員に問われ、ゲルダは答える。
「実はそうなんですよ。なかなか見回る機会が無くて」
宿舎は城下町とは城を挟んで真逆の方向にある。日が暮れてから一人で足を運ぶのは面倒だったし、誰か誘おうにも途中採用で研修生扱いのゲルダには親しい者はいなかった。休日に王立図書館や公園へ足を伸ばすことはあったが、洗練された街の中となれば、粗末で地味な私服では悪目立ちしてしまう気がして怖気付いてしまった。
「今度飲みにでも連れてってやるさ」
「私は酒を飲まないのですが」
「飯も美味いぞ。歌や芝居を楽しむ店もある」
「へぇ!」
「ゲルダ、無駄口を叩くな」
背後を振り返り会話するゲルダの腕をマクシミリアンが掴む。
「すいません」
「街なら俺が連れていってやる」
ゲルダはマクシミリアンの横顔をまじまじと見つめた。
「大丈夫なんですか?」
「多分」
「そんなんじゃ安心出来ませんよ」
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