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ポッコチーヌ様のお世話係

白騎士団長の側近②

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「久しぶりに顔を見せたなマクシミリアン」
「臥せっているのではないかと噂になっていたぞ。体調は良いのか?やたらと白いが……」

 各団の団長及び副団長らが声をかける中、マクシミリアンは言葉少なに応対している。ゲルダはそれを背後からじっと観察していた。彼らは早々とゲルダに気付き、先程からチラチラと視線を寄越している。何故、研修生スパイがここにいるのか判じかねているのだろう。ゲルダは顎を上げ、悠然と構えて見せた。

「それにしても、何故その研修生を連れてきた。会議の見学か?」

 遂に堪えきれなくなったらしい黒騎士団長が、長い顎髭を撫でながら訊ねる。残る二人の団長もマクシミリアンの返答を待っているようだ。

「シュモルケは正規雇用が決まり、我が白騎士団の所属になった。今後は側近として私の護衛と補助に務めることとなる」

 三人の騎士団長は目に見えて戸惑い、顔を見合せた。片目に眼帯をした青騎士団長がゴツイ身を屈め、マクシミリアンに囁く。

「それは些か早計ではないか?この者は騎士になってまだ日が浅い」
「支部では五年務めて伍長も経験している。戦闘能力も申し分ない。支部長からの推薦状にも目を通したが、評判は上々。側近として相応しいと判断した」
「しかし、女でその上シャンピニとなれば、ガルシア侯爵が……」

 ガルシアの名前が出たことに危機感を感じたのだろう、ニコライが足を踏み出す。
 しかし、マクシミリアンはそれを手で制した。そして、長い睫をわっさと伏せ、視線を流す。その後、ゆっくりと小首を傾げて肩にかかった髪をサラリと払った。
 
 その美しい仕草たるや!
 
 周囲の者たちが一斉に息を呑む音が聞こえる。きっとそれぞれが白騎士団長の背後に何かを妄想したに違いない。
それは可憐な花びらか、それとも真白な天使の羽根か。

 そうして要人らの注目を浴びる中、マクシミリアンは美しく通る声で毅然と言い切った。

「種族や性別による差別などあってはならない。この国に生きる者は全て平等な権利を有するべきというのが陛下の方針だ。貴殿はそれを否定するのか」

 先程口を挟んだ赤騎士団長が赤ら顔をさらに紅潮させ口篭る。他の二人も揃って黙り込んだ。

「変化することを恐れ古き考えに固執するなど、人の上に立つものなら尚更陥ってはならぬ思考だ。実にみっともない。精進されるが良い」

 ゲルダはそっと身体をずらし、マクシミリアンを窺う。年嵩の猛者に囲まれながらも、一切怯むことないその凛々しい横顔を確かめ、そっと口角を上げた。
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