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ポッコチーヌ様のお世話係
白騎士団長マクシミリアン・ガルシア①
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ここで、マクシミリアン・ガルシアについて語っておこう。
まず、ガルシア侯爵家は現王妃の生家、つまり、マクシミリアンは現王妃の弟にあたる。ガルシア家の血を引くものは皆、文武に優れ、類まれなる美貌を持つ。王妃を最も多く輩出する名家であり、ガルシア家との縁を得る為に国中の貴族が躍起になるという。
マクシミリアンはそのガルシア家の嫡男であり、白騎士団の団長である。一見儚げにも見える美貌を持ちながらも、剣技に於いては右に出るもの無し。独特の間合いで優雅に剣を振るい、無敗記録を未だ更新中であるらしい。要所に於いて的確な指示を与え、かつ余計な口出しはしない。その余裕のある佇まいは生まれながらの指導者と讃えられ、部下からの信頼も厚い。
正に非の打ち所のない男なのである。
そう、王都から遠く離れた地方勤務のゲルダでさえ、マクシミリアンの評判を聞き及んでいた。
であるからして、そんな男の欠点を見つけるなど、不可能に近いだろうと思っていたのだが……
「あ、あのう......団長」
「ああ、食事はそこのテーブルの上に置けば良い」
「は、はあ」
ゲルダはギクシャクとしながら部屋の中央に進み、テーブルの上にバスケットを置く。そして、目線を下に落としたまま、後退った。
「そ、それでは私は失礼致します」
「何を言っている。引き継ぎの騎士から聞いていないのか?お前はこのままここに留まるのだ」
「……いや、そうなりますと他の業務が滞……」
「これがお前の任務である。他の業務などせずとも良い」
有無を言わせぬ口調が降ってきて、ゲルダは縮こまる。
「貴様、俺を見ろ」
ゲルダはギュッと目を瞑り、唇を噛む。
「この俺を見るのだ!その眼を開き、焼き付けろ!」
いや、なんのために?
ゲルダは口に出せぬ疑問を胸の内で叫ぶ。
「貴様、この俺の言うことが聞けぬのか?!」
声に憤怒の色が混ざり始めたことに気付き、ゲルダは遂に観念した。目を開き恐る恐る目を開ける。
「そうだ!とくと見るがよい!このマクシミリアン・ガルシアの全てを!」
目の前に立つ男は満足気に手を広げ、逞しい胸を押し出した。
その姿を目に収め、決して見間違いではないことを再確認したゲルダは絶望する。
……やはり夢では無かったようだ。
まず、ガルシア侯爵家は現王妃の生家、つまり、マクシミリアンは現王妃の弟にあたる。ガルシア家の血を引くものは皆、文武に優れ、類まれなる美貌を持つ。王妃を最も多く輩出する名家であり、ガルシア家との縁を得る為に国中の貴族が躍起になるという。
マクシミリアンはそのガルシア家の嫡男であり、白騎士団の団長である。一見儚げにも見える美貌を持ちながらも、剣技に於いては右に出るもの無し。独特の間合いで優雅に剣を振るい、無敗記録を未だ更新中であるらしい。要所に於いて的確な指示を与え、かつ余計な口出しはしない。その余裕のある佇まいは生まれながらの指導者と讃えられ、部下からの信頼も厚い。
正に非の打ち所のない男なのである。
そう、王都から遠く離れた地方勤務のゲルダでさえ、マクシミリアンの評判を聞き及んでいた。
であるからして、そんな男の欠点を見つけるなど、不可能に近いだろうと思っていたのだが……
「あ、あのう......団長」
「ああ、食事はそこのテーブルの上に置けば良い」
「は、はあ」
ゲルダはギクシャクとしながら部屋の中央に進み、テーブルの上にバスケットを置く。そして、目線を下に落としたまま、後退った。
「そ、それでは私は失礼致します」
「何を言っている。引き継ぎの騎士から聞いていないのか?お前はこのままここに留まるのだ」
「……いや、そうなりますと他の業務が滞……」
「これがお前の任務である。他の業務などせずとも良い」
有無を言わせぬ口調が降ってきて、ゲルダは縮こまる。
「貴様、俺を見ろ」
ゲルダはギュッと目を瞑り、唇を噛む。
「この俺を見るのだ!その眼を開き、焼き付けろ!」
いや、なんのために?
ゲルダは口に出せぬ疑問を胸の内で叫ぶ。
「貴様、この俺の言うことが聞けぬのか?!」
声に憤怒の色が混ざり始めたことに気付き、ゲルダは遂に観念した。目を開き恐る恐る目を開ける。
「そうだ!とくと見るがよい!このマクシミリアン・ガルシアの全てを!」
目の前に立つ男は満足気に手を広げ、逞しい胸を押し出した。
その姿を目に収め、決して見間違いではないことを再確認したゲルダは絶望する。
……やはり夢では無かったようだ。
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