この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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僕を導く光

僕を導く光

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 ぼくときみは ともだちだ
 このさき みちをわかつとも
 ぼくは きみを わすれない
 きみがとなりにいてくれたことを けっしてわすれない
 
 あれは、君と会ってまもなくに僕が帳面に綴った文だ。
 初めて友達ができたことに浮かれ、溢れる喜びをどうしていいのかわからず、気づけばペンを握っていた。

 君の存在は僕の心を照らし続けた。
 首輪を嵌められ綱で引かれるような日々。僕でないものになることを強いる人々。
 それでも、暮れていく空にうっすらと現れる天体を見つければ、心が弾んだ。
 僕をオリバーと呼んでくれる君。
 優しくて強い僕のともだち。
 そう、君はまるで、あの夜空で一等輝く月のよう。
 
 そして、僕は今、真っ暗闇の中をひとりで歩いていた。
 僕の身体は小さく、薄い胸には帳面を抱えている。
 心細くて寂しくて泣きそうになりながら、それでも必死に足を動かした。
 僕は上を見上げ、月を探す。
 いつだってピカピカ輝いて、僕を勇気づけてくれた唯一の光を探す。
 けれど、目の前に広がるのは、すべてを呑み込んでしまうような暗黒だ。
 しんと静まり返った世界には、僕の立てているはずの足音さえ聞こえない。

 ああ……これは、罰なのか。
 ともだちだなんて言いながら君に恋をしてしまった僕が悪いのか。
 いやらしい想像で君を穢すことを止められなかった僕を、意地悪な神様が閉じ込めてしまったのか。

 それとも救済だろうか。

 そう、だって、これは僕が望んだこと。
 僕は確かに、すべてを捨ててしまいたいと願ったのだ。

 ――けれど。

 僕は俯き、使い古した帳面を抱きしめる。

 それならなぜ、彼の記憶を残したのですか。
 これがある限り僕は望んでしまうのです。
 彼とともにあらんことを。
 たとえそばにいられなくても、彼のいる世界に居座りたい、そう願ってしまうのです。



 そのときどこからか、僕の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
 顔を上げれば、真っ黒な闇の遠くに小さな光の点が見える。
 僕はそれに向かって走り出す。
 光はどんどんと大きくなり、柔らかく僕を包み込む。
 僕は湧き上がる喜びのまま、そのあたたかな光の中に飛び込んだ。
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