この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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神父の襲来

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「何の音!?」
 バーノンが僕の手首を掴み、顔から引きはがす。
 僕は即座に膝をつき、バーノンの顔を胸に押し付けた。
 セルジュの姿を見られたくない、その一心での行動だった。
 羽音と共に床に降り立つ気配がする。彼は床を鳴らしながらゆっくりと近づいてきた。
「オリバー、そいつは誰だ?」
 いつもより一段と低い声が僕に問う。
「だ、誰?! 誰が来たの?!」
 さすがに異常さを感じ取ったらしいバーノンが、身体を硬直させて僕に縋る。
「オリバー答えろ。ソイツと何をしていたんだ?」
 僕は混乱していた。さらに複雑になった状況に為す術がみつからない。
「オリバー!」
「勇者様っ!」
 交互に呼ばれ、僕は観念した。
「コイツは僕の従者だよ。どうしようもない淫乱な奴で、僕に夜這いを仕掛けたんだ」
「なんだと。お前、襲われていたのか。だけどコイツ……男だぞ」
「君には話してなかったけど、教会堂は男色が蔓延しているんだ。ほら、ここは男しかいないからさ」
「男色……」
「男同士の恋愛だよ」
「……へえ」
「勇者様のお友達かい? ねえ、君、なんなら僕が教えようか? 実技を交えて三人で」
 調子を取り戻したらしいバーノンが、胸の中でぺらぺらと話し出す。
「男同士だって快楽は得ることができる。お互いの身体のことがわかるから、むしろ女よりいいくらいだよ」
「そうなのか」
「コイツの言うことをまともに聞いては駄目だ。悪いが、今夜のところは帰ってくれ。君のことは僕が口止するから……」
 背後に顔を向けて言えば、セルジュはムッと顔を顰めた。
「二人きりにしておけるか。またコイツに襲われるかもしれねぇぞ」
「僕がこんなひょろひょろな奴に負けるわけがないだろう?」
「だってお前、ズボンを脱がされてるじゃねぇか。つか、いつまでソイツと抱き合ってるつもりだ。離れろ」
「これは君を見られないようにするために……」
 僕らの会話に、いきなりバーノンが割り込んだ。
「黙っていてほしいなら、僕を抱いてくれればいい。口止め料としてね」
 セルジュと僕は言葉を失う。
 部屋は一転、水を打ったかのように静まり返った。
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