この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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心に宿った光

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 僕は、どう返していいものかわからず黙り込む。
 セルジュだけが心を許せる存在だったが、すべてを晒しているわけじゃない。
 講師から受ける暴力や酷い蔑みの言葉、教団の思惑や魔聖対戦の内幕。そして、セルジュに抱く欲を伴った恋慕の気持ちも、僕は隠し通してきた。
「僕にだって明かせないことはある」
「そりゃそうだな。俺は魔王でオリバーは勇者だ。お互い身軽な立場じゃない。言えないことなら俺にだってある」
 セルジュは僕の頭を引き寄せ、髪に口付けた。
「だけど、俺たちは通じ合っている。そうだろう?」
「うん。セルジュほど親しい存在は他にはいない。君の傍にいると幸せな気持ちになるよ」
「俺もだ」
 僕たちは少し欠け始めた月を見上げながら、お互いの体温を分け合う。セルジュの温かい慈しみの感情が、僕の中に流れ込んでくるようだった。
「だからこそ心配だった。お前は随分元気になって逞しくもなったけど、時たま向こうが透けて見えるほど脆くなる時がある」
「……」
「お前は未来をあまり語ろうとはしなかった。まるでそんなものはないと思っているみたいに」
 僕は静かに唾を呑み込んだ。セルジュが僕の企みに気づいていたとは思えないが、何かを察していたとしたら……
「でも、さっきのお前は違った」
 セルジュは僕の胸の真ん中を指で突いた。
「この中に熱いものがある。身体の隅々まで走る命がある。輪郭を取り戻して発光している。ピカピカに」
 柔らかい唇が、頬に触れる。
「とても綺麗だ」
 囁かれた言葉に胸がキュウとなり、全身が痺れた。
「俺はそれがとても嬉しい」
 長い爪で傷つけないよう、セルジュが指の腹で僕の顎を掴む。僕はされるがままに顔を上げ、彼の美しい顔をうっとりと見つめた。
 甘く蕩けるような空気が満ちている。
 僕は近づいてくる彼の顔を確かめ、そっと瞼を閉じた。
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