この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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僕の望む“終わり”

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 ――ああ、楽しい。楽しいな。
 
 僕は澄んだ夜の空気を胸いっぱい吸い込んだ。
 僕はセルジュに会うまで、怒ることも笑うことも忘れていた。
 お腹が痛くなるまで笑い転げたり、文句を言い合ったり、照れたり、焦がれたり。
 失いかけていた感情が、セルジュによって蘇った。
 僕はようやく生きることができたのだ。
 彼こそ僕の生きる糧。命の源。
 一方で、気づいてもいた。
 僕のセルジュへの想いは甚だ身勝手なものだ。
 なぜなら、セルジュの幸せをとりたてて望んでいるわけではないからだ。
 我が身を犠牲にしても尽くすという気持ちはなく、自分勝手に執着しているだけだ。
 セルジュの一番近くでセルジュの愛情を一身に受ける。その相手が僕じゃないのなら、失った方がマシだと思う。
 
 だから、僕は決めた。
 セルジュに僕が望む結末を押し付けることを。
 それは、彼がこれまで注いでくれた好意を全部無にする行為なのかもしれない。
 まさに、恩を仇で返すような。
 
 ああ、僕の中身はあまりに奇怪だ。魔王の君よりずっと禍々しい。
 実際のところセルジュにだって理解できないだろう。
 だから、僕は嘘をつく。
 だって、僕の本体はあまりに醜い。
 僕の中の化け物を見たら、君は即座に僕を嫌いになるだろう。
 今はまだ、君の親友でいたいんだ。
「なあ、セルジュ、たとえ敵同士でも僕は君に会えて良かったよ。あの夜、会いに来てくれてありがとう」
「改まってどうした。やめろよ、調子が狂う」
 セルジュが僕の頭をくしゃくしゃと撫でまわす。爪の先が頭皮をかすめてむず痒い。
 
 僕の企みを知り、セルジュは怒るだろうか。それとも悲しむだろうか。
 けれど、それを確かめる術はない。
 魂が抜けた屍はただの物質に成り下がる。
 他でもない、セルジュがそう言ったのだから。
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