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僕の望む“終わり”

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「こうなったら運命だと思うしかないんじゃない?」
 司教が去った後、バーノンは途端に砕けた口調ではしゃぐと、僕に身を寄せた。僕は彼を押しのけ後退る。
「あんたに神力があるなんて本当なのか? インチキをしたんじゃないのか」
 『石の者』は教団に管理されていると聞いている。バーノンの祖先にそう言った人物がいたとしたら、彼も監視対象になるはずだ。
 バーノンは腰に手を当て、頬を膨らませた。
「失礼だなあ、ズルなんてしてないさ。貴族の子供は端から勇者選考対象から外されている。勇者は庶民から選ばれるものと決まっているんだ。あのチクチクの実を見たのは正真正銘初めてさ」
「そうなのか?」
「魔王と戦うなんて危険なお役目を貴族が引き受けるわけがないだろう。教団は貴族から多額の寄付金を受け取っているんだ。遥か昔からズブズブの関係だ」
 バーノンは出窓に腰を預けると、両手を上げて肩を竦めた。
「魔王の討伐は百年に一度の一大イベントだ。勇者に関わることができれば驚異的な出世が叶う。教団の各派閥は躍起になって勇者を探す。あからさまな足の引っ張り合いが行われるらしいよ。死人が出ることもあるらしいね。君の時も凄かったってさ」
 魔国への恐れより、出世欲か。
 勇者以外は魔国に入れない。ゆえに、誰も魔王はおろか魔族も見たことがないはずだ。
 それなのに、さも見てきたようにその恐ろしさを語り、彼らの野望を明かす。国民の不安を煽り、神に祈れと脅す。
 ――決して叶わない魔王の野望。
 ――決して敗北しない勇者。
 そこから導き出される可能性を考えなかったわけではない。
 ただ、僕にはどうでもいいことだった。
 だから掘り下げることをしなかった。
 バーノンは身体を捩り、窓の外を眺めながら呟いた。
「魔王なんて本当にいるのかなぁ」
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