この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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不埒な修道士

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 翌日、井戸近くの洗い場で洗濯していると、またもや例のビッチ修道士が現れた。
「下着を汚しちゃったの? 溜まっているなら僕が飲んであげようか」
 筒の形にした手を口に当て、揉むように指を動かして見せる。
「いい加減にしてくださいよ。人の顔見りゃ破廉恥な言葉を吐いて、なんなんですか、あんた」
「君のためを思って誘ってあげてるのに」
「恩着せがましい。必要ありませんから」
 僕は下着を桶に突っ込み、ゴシゴシと擦った。
「今日は暑いから桶の水が温まっているだろう。熱いお湯で洗ったら精液は落ちにくいよ」
「余計なお世話です。それほど熱くありません」
 そう返しながらも、僕は井戸で汲んだ水を柄杓ですくい桶の中に足す。
 お湯で洗ったら落ちにくいのか……
 そういった知識は誰も授けてくれなかったので、僕はその方面には無知な方なのだと思う。教会堂には図書室も設けられているが、下に関して扱った書物は当然のごとく置いていない。自分が正しい方法で自慰をしているのかさえわからなかった。
 性交の方法は修道士たちの痴態を目にしてなんとなくわかっていた。男女の営みでは性器を出し入れしている場所が変わるのだろう。女性の陰部には肛門以外に穴があるのだ。多分。
 僕にとってはどうでもいいことだが。
「腕に走る筋が色っぽいね。ゾクゾクする」
「気が散るので黙ってもらえますか」
「力強い腰だなぁ、その体勢でちっともよろめかないんだから身体の軸がしっかりしているんだね。安定しているから騎乗位でも上手にイかせてくれそう」
 なんのことを言っているのかわからないが、きっと卑猥なことに違いない。
 僕は、はあとわざと大きなため息をついた。
「しつこいです。付きまとわれていることをあんたの上司に報告してもいいですか」
 修道士は悪びれもせずに言い返す。
「しつこいのは僕のテクニックのひとつだから。なんたって落とす相手は神職だからね。ほとんどが僕とは違い敬虔な教徒なんだ。まあ、一回堕ちたら後は簡単だけどね。それこそ沼にハマるがごとく。本能には逆らえないってやつさ。信仰なんて脆いもんだよ。実体のないものがリアルな肉欲に敵うわけがない」
 清廉とした純白の制服に身を包みながら修道士は神を皮肉る。
 僕の中で彼に対する印象に少し変化が起きていた。
 彼は色情狂だが正直だ。
 うすら寒い講釈を垂れたり、経典を都合の良いように捻じ曲げて暴力を正当化する神父より、よほど共感できた。
「あんたは面白いことを言う。魅力はまったく感じないけど」
 彼はあざとく頬を膨らませ、拗ねてみせる。
「ひとこと余計だよ。だけど興味を持ってくれたんなら一歩前進だね。俺は諦めないよ。君のことがすごく気に入っちゃったんだもの。抱いてくれるまで付きまとうよ」
「無駄ですよ。僕は勇者としてお役目を果たすまで誰ともそういった関係になるつもりはないんです。それに、あんたのことは絶対好きにならない」
 僕の中にはセルジュ以外の存在が入る余地はない。
 そして、今の立ち位置を崩す気もない。勇者の自分を固持し続ける。
 どんなに彼を激しく欲していても。
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