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『石の者』
④
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僕が視線を戻せば、彼女は開き直ったようにベッドに後ろ手をつき、足をパタパタと上下に振っていた。臙脂色の裾がそれに合わせてひらひらと踊る。
「仲間? 貴女と僕が? 遠い親戚か何かですか」
「『石の者』よ。魔力を通さない人間の俗称」
こうなったら全部白状しちゃうけど、と前置きし、彼女は語り始めた。
「教団は『石の者』を出来るだけ増やして管理したいの。でも、この性質って簡単に遺伝するものじゃないそうよ」
彼女の話によると、『石の者』を見つけるため、国中を旅している者がいるらしい。ビカの実を背負い、これと見定めた子供や若者に試しているのだという。
「だからって誰もが勇者になれるわけじゃない。魔聖対戦は百年に一度。その年にちょうど二十歳前後になっていること、健康な男子であることが勇者に選ばれる条件よ」
「その条件に漏れた『石の者』はどうなるんですか?」
「教団の保護下に置かれるわ。そして、任務を課せられるの」
僕は嫌な予感がしてそれ以上質問することを止めた。魔力が効かない人間をたくさん作りたいという教団が彼らに何を要求するのか、想像するのは容易である。
彼女はそんな僕の心中をわかっているのかいないのか、あっけらかんと明かした。
「国中を渡り歩き、出来るだけ種付をするよう命じられるのよ」
顔も知らない父親のことが僕の頭を過ぎる。
女を誑かす詐欺師、流浪の行商人。
「それで何年かに一度、教団に報告するわけ。何年の何月にどこどこの村で誰それという名の女と寝ました、ってね」
彼らは大きな報酬を得る。ある程度の人数と性交すれば辞任して構わないそうだが、味を占めた者は長く続けるという。
「まあ、そうは言っても適性はあるから当然拒否をする人間もいるみたいね。そういった場合、普通の暮らしは許されるけど、教団の用意した愛人と定期的に寝ることを課せられるの。それを幸運と捉えるかどうかも、その人次第ってことかしら」
女は肩を竦め、ブルネットの髪を引き寄せ指で梳く。
「これは男の場合。女の場合は身体の負担を考慮されるから、まだマシかな。そうはいっても好きでもない男に抱かれるんだから最悪よ。私はこれまで『石の者』と二回寝たわ。女としては若くもないし、もう呼び出しもないだろうと安心していたのに……」
「性教育は表向きで、僕と性交して子供を作れと……それがあなたの任務ですか?」
「そうよ。『石の者』同士なら能力が遺伝する確率が上がるだろうってわけ。だけど、生まれた子供を育てることは禁じられているの。出産後は直ぐに取り上げられて孤児院で保護される。その後、里子に出されるそうよ」
彼女は天井を見上げ、パチパチと瞬く。
「まるで家畜みたいでしょ? 」
「仲間? 貴女と僕が? 遠い親戚か何かですか」
「『石の者』よ。魔力を通さない人間の俗称」
こうなったら全部白状しちゃうけど、と前置きし、彼女は語り始めた。
「教団は『石の者』を出来るだけ増やして管理したいの。でも、この性質って簡単に遺伝するものじゃないそうよ」
彼女の話によると、『石の者』を見つけるため、国中を旅している者がいるらしい。ビカの実を背負い、これと見定めた子供や若者に試しているのだという。
「だからって誰もが勇者になれるわけじゃない。魔聖対戦は百年に一度。その年にちょうど二十歳前後になっていること、健康な男子であることが勇者に選ばれる条件よ」
「その条件に漏れた『石の者』はどうなるんですか?」
「教団の保護下に置かれるわ。そして、任務を課せられるの」
僕は嫌な予感がしてそれ以上質問することを止めた。魔力が効かない人間をたくさん作りたいという教団が彼らに何を要求するのか、想像するのは容易である。
彼女はそんな僕の心中をわかっているのかいないのか、あっけらかんと明かした。
「国中を渡り歩き、出来るだけ種付をするよう命じられるのよ」
顔も知らない父親のことが僕の頭を過ぎる。
女を誑かす詐欺師、流浪の行商人。
「それで何年かに一度、教団に報告するわけ。何年の何月にどこどこの村で誰それという名の女と寝ました、ってね」
彼らは大きな報酬を得る。ある程度の人数と性交すれば辞任して構わないそうだが、味を占めた者は長く続けるという。
「まあ、そうは言っても適性はあるから当然拒否をする人間もいるみたいね。そういった場合、普通の暮らしは許されるけど、教団の用意した愛人と定期的に寝ることを課せられるの。それを幸運と捉えるかどうかも、その人次第ってことかしら」
女は肩を竦め、ブルネットの髪を引き寄せ指で梳く。
「これは男の場合。女の場合は身体の負担を考慮されるから、まだマシかな。そうはいっても好きでもない男に抱かれるんだから最悪よ。私はこれまで『石の者』と二回寝たわ。女としては若くもないし、もう呼び出しもないだろうと安心していたのに……」
「性教育は表向きで、僕と性交して子供を作れと……それがあなたの任務ですか?」
「そうよ。『石の者』同士なら能力が遺伝する確率が上がるだろうってわけ。だけど、生まれた子供を育てることは禁じられているの。出産後は直ぐに取り上げられて孤児院で保護される。その後、里子に出されるそうよ」
彼女は天井を見上げ、パチパチと瞬く。
「まるで家畜みたいでしょ? 」
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