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誘惑
②
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白い肌も柔らかい感触も僕には不要なものだ。
僕が焦がれるのは、褐色の艶やかな肌。
逞しくてしなやかな身体を持つ、物騒で妖艶な魔族。
「良い声で鳴くし、奉仕もするよ。咥えて口の中で扱いてあげる。喉の奥まで突っ込んだっていい。ちょっと苦しいくらいが興奮するんだ」
「興味がありません」
肩に乗せられた手を払いのけ、僕は脱いだブーツを片手に裸足で廊下へと上がった。
「ヤリたいくせに。ひとりで処理するよりよっぽど気持ちいいよ。ねぇっ!」
呼びかける高い声を無視し、僕は裸足の足をペタペタと鳴らして歩く。訓練で上がった熱がタイルで冷やされて気持ちがいい。
遠ざかる悪態を聴きながら、僕は昨晩のセルジュを思い出していた。
初めて舌を絡めた日から、セルジュは毎回口付けをせがむようになっていた。
それは回数を重ねるごとに長くなり、濃厚になっていく。
僕の頭を両手で固定し、夢中で僕の口内を貪り、唾液を啜るセルジュ。
その姿が、この上なく淫靡な香りと音を伴って僕の脳裏に鮮明に再生される。
再び生まれた熱が腰から下に集まっていくのを感じ、僕は焼けた息を吐く。
部屋に戻ったら即座にこの滾りを極限まで高め、吐き出そう。
何度も何度も思い出し、幸せな妄想に酔いしれよう。
たとえ一生、生身の身体を貫けなくても構わない。
セルジュ以外の誰かの内側など入りたくもないし、入れたくもない。
僕は満ち足りていた。
傍から見たら滑稽で情けなくても、僕はこの恋から手を引くつもりはなかった。
もはや報われたいとも思わない。
ただ彼に溺れたまま終わりたいと、夢のように願っていた。
僕が焦がれるのは、褐色の艶やかな肌。
逞しくてしなやかな身体を持つ、物騒で妖艶な魔族。
「良い声で鳴くし、奉仕もするよ。咥えて口の中で扱いてあげる。喉の奥まで突っ込んだっていい。ちょっと苦しいくらいが興奮するんだ」
「興味がありません」
肩に乗せられた手を払いのけ、僕は脱いだブーツを片手に裸足で廊下へと上がった。
「ヤリたいくせに。ひとりで処理するよりよっぽど気持ちいいよ。ねぇっ!」
呼びかける高い声を無視し、僕は裸足の足をペタペタと鳴らして歩く。訓練で上がった熱がタイルで冷やされて気持ちがいい。
遠ざかる悪態を聴きながら、僕は昨晩のセルジュを思い出していた。
初めて舌を絡めた日から、セルジュは毎回口付けをせがむようになっていた。
それは回数を重ねるごとに長くなり、濃厚になっていく。
僕の頭を両手で固定し、夢中で僕の口内を貪り、唾液を啜るセルジュ。
その姿が、この上なく淫靡な香りと音を伴って僕の脳裏に鮮明に再生される。
再び生まれた熱が腰から下に集まっていくのを感じ、僕は焼けた息を吐く。
部屋に戻ったら即座にこの滾りを極限まで高め、吐き出そう。
何度も何度も思い出し、幸せな妄想に酔いしれよう。
たとえ一生、生身の身体を貫けなくても構わない。
セルジュ以外の誰かの内側など入りたくもないし、入れたくもない。
僕は満ち足りていた。
傍から見たら滑稽で情けなくても、僕はこの恋から手を引くつもりはなかった。
もはや報われたいとも思わない。
ただ彼に溺れたまま終わりたいと、夢のように願っていた。
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