この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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はじめてのともだち

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 僕たちは部屋を抜け出し、屋根に上った。

 僕の部屋は崖に面していて、その下には大きな森が広がっている。森に向かって傾斜する屋根の上なら誰にも見つからない。

「月も良く見えるしいい場所だ」と魔王は満足げに言う。

 月明かりを浴びた彼は人差し指を立てた。
 その先っぽに小さな光が宿る。
 それは徐々に大きくなり、チクチクした棘を持ち始めた。そう、いつか見たビカの実のような形だ。
 指先を凝視する僕を見て、魔王は面白そうに笑う。
 魔王が光の実にふっと息を吹きかければ、それは指の上でくるくると回転し始めた。

「それはなに? どうするの?」

 勢い込んで訊ねる僕。
 魔王は答える代わりに指を弾いた。
 光の実はゆっくりと回転しながら上昇し始める。僕はそれを目で追った。
 真上には大きな月。
 その周りを取り囲むように散らばる星たち。

「もしかして、星を作ったの?」

 小さな光のかけらは、どんどんと加速しながら空へと昇っていく。

「すげぇだろ」

 僕は勢い良く頷いた。

「すげぇ!」

 隣からイヒヒと笑う声がする。

「よし! もっといっぱい作ってやる」

 魔王は両手を掲げ、ううーんと力を込めた。五指の先に光の粒が現れ、一斉に空へと飛び立った。

「すごい! 流れ星はみたことがあるけど、上に飛ぶ星は初めて見た!」

 僕は湧き立つ心のまま、はしゃいだ。
 魔力に対して持っていた印象ががらりと変わり、その神秘さに魅了される。それを自在に操る魔王を尊敬した。
 恐れなど微塵も感じなかった。
 興奮する僕に気を良くしたのか、魔王はその後も次々と星を作り空に放った。
 僕はその幻想的な光景に圧倒され、ひたすら星を見送った。
 やがて僕の心を満たしはじめたのは、優越感だった。
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