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勇者
①
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ぼくときみは ともだちだ
このさき みちをわかつとも
ぼくは きみを わすれない
きみがとなりにいてくれたことを けっしてわすれない
僕は勇者だ。
あれは僕が十歳の誕生日を迎える二日前のこと。村に国の偉い人が何人もやって来て、村の子供を全員広場に集めたんだ。
豪華な刺繍の入った白い服を着た大司教様が現れて、手に抱えた赤い布を解いたらば、中から大きな水晶が現れた。
偉い人は、それに触れと言った。
僕は嫌だな、と思った。
なぜなら、水晶には透明な鋭い突起がいくつもついていて、そう、まるで毬栗みたいだったからだ。
あんなものにどうやって触れと言うんだろう。指から血が出てしまう。
他の子供たちも同じだったようで、みんなしんと黙り込んで一斉に手を後ろに隠していた。
けれど、偉い人に睨まれた村長さんが、子供の腕をひとりひとり引っ張って無理やり水晶に近づけたんだ。
みんな泣いていた。
指の痛みより周りを取り囲む大人たちの雰囲気が怖かったのだと思う。
いたずらをしても滅多に怒らない優しい村長さんが、険しい顔をして手首を掴む。
有無を言わせぬ強い力で。
背後に並ぶ大人たちは一言も発さず俯いていた。
すすり泣き嫌だと泣き叫ぶ子供たちの様子をみているうちに、僕も泣きたくなった。
でも、僕の目はあいかわらず乾いていた。
だって、泣く方法なんて、ずいぶん前に忘れてしまっていたんだ。
このさき みちをわかつとも
ぼくは きみを わすれない
きみがとなりにいてくれたことを けっしてわすれない
僕は勇者だ。
あれは僕が十歳の誕生日を迎える二日前のこと。村に国の偉い人が何人もやって来て、村の子供を全員広場に集めたんだ。
豪華な刺繍の入った白い服を着た大司教様が現れて、手に抱えた赤い布を解いたらば、中から大きな水晶が現れた。
偉い人は、それに触れと言った。
僕は嫌だな、と思った。
なぜなら、水晶には透明な鋭い突起がいくつもついていて、そう、まるで毬栗みたいだったからだ。
あんなものにどうやって触れと言うんだろう。指から血が出てしまう。
他の子供たちも同じだったようで、みんなしんと黙り込んで一斉に手を後ろに隠していた。
けれど、偉い人に睨まれた村長さんが、子供の腕をひとりひとり引っ張って無理やり水晶に近づけたんだ。
みんな泣いていた。
指の痛みより周りを取り囲む大人たちの雰囲気が怖かったのだと思う。
いたずらをしても滅多に怒らない優しい村長さんが、険しい顔をして手首を掴む。
有無を言わせぬ強い力で。
背後に並ぶ大人たちは一言も発さず俯いていた。
すすり泣き嫌だと泣き叫ぶ子供たちの様子をみているうちに、僕も泣きたくなった。
でも、僕の目はあいかわらず乾いていた。
だって、泣く方法なんて、ずいぶん前に忘れてしまっていたんだ。
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