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そもそも聖女とは

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「わ、私が聖女でございますか!?」

聖女とはこの世界に安寧と豊穣をもたらす尊い存在であり、女神様の神託によって代々選ばれる神聖な女性達のことを指す。

「うむ、先日隣国の聖女様が亡くなられたのは知っているな?」

「はい、天寿を全うされたとか…」

「そこで教会が次の聖女を決める為に選定の儀式を行ったのだが、女神の神託によると『魔王国のヴィッチ侯爵家の娘を次の聖女にせよ』とのことであったそうだ」

ヴィッチ侯爵家は両親と兄と私の4人家族であり、娘は私一人しかいない。つまり神託により選ばれた次の聖女は私ということになる。

「魔族から聖女が選ばれるなど今までにないことである為、我が国では聖女に関する資料も人材も揃っておらんのだ。そこでこれまで代々聖女を輩出してきた隣国で聖女の修行をすることで、いち早く其方には一人前の聖女になってもらいたいのだ」

あまりにも突然の出来事に俄には信じられなかった。

「恐れながら申し上げますが、何かの間違いでは?私はただの淫魔です」

それも未だに処女という落ちこぼれ淫魔だ。

「聖女に選ばれた者の瞳には十字の聖印が現れるという」

魔王様の側で控えていた宰相が私に手鏡を渡してきた。

前髪を掻き上げて恐る恐る鏡を覗く。
するとそこには十字の印が。

(い、いつの間に!?)

身だしなみに無頓着なあまり鏡を見る機会もなく、前髪も伸ばしっぱなしだったことから、自分の変化に全く気付かなかった。

どうやら私が次の聖女という話は確定のようだ。

「突然の話で困惑するのも無理はない。しかしこのまま聖女としての力を十全に発揮できねば、世界は混沌に呑み込まれるであろう。何よりこのまま魔王国だけで聖女を独占するということは、他国を敵に回しかねない。一国の王として、その事態はどうしても避けたいのだ」


何も私とて世界の破滅を招きたいわけではない。
それに聖女を輩出した家となれば格が上がるだろう。そうなれば今まで迷惑ばかりをかけてきた家族に恩返しが出来るかもしれない。
きっと私はこのまま独り身として生涯を過ごすだろうし、ヴィッチ家の発展の為にも聖女として活躍することこそが、落ちこぼれの私にできる唯一の恩返しの手段ではないだろうか。

そして何より、このまま俯いてばかりのどうしようもない毎日から抜け出したかった。
別にちやほやされたいわけではないが、聖女となれば自分の居場所や存在価値を手に入れられるのではないかと思ったのだ。


だから私は……


「かしこまりました。私…」




「聖女になります!」
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