44 / 47
【番外編】王家の秘密1
しおりを挟む
「絶対!!!! 認めません!!!!!」
第二王子の元婚約者であった私と第一王子であるキースさんとの結婚は、一部の貴族勢力からは歓迎されないことは分かっていたが、目の前の人物から反対されるとは思っていなかっただけに私は思わず言葉を失った。
それは私の隣にいたキースさんも同じだったらしく、口をパクパクとさせている。
「オースティンが国王に即位したことは喜ばしいことではございますが、グレイス嬢との結婚だけは認めません」
「し、しかし母上、彼女は伝説の『大聖女』で――」
「だ、大聖女!!!!」
キースさんの説得は、火に油を注ぐ形となったようだ。前王妃でキースさんの母であるシシリア様は顔を真っ赤にして全身で怒りを表していた。
「大聖女だからなんだっていうんです。そんなの伝説の話ではありませんか。オースティン、そなたの妻は私が見つけてまいります」
「お言葉を返すようですが、私が国王と認められましたのもグレイスのおかげなんです」
「ダメです。絶対ダメ!! 何と言ってもダメなものはダメです!!!!ゴドウィン公爵の娘なぞと結婚などさせられません!」
シシリア様ヒステリックに叫んだ。その隣にいる前国王陛下はそんなシシリア様の反応に慣れてしまっているのだろう。あまり興味がないといった様子でどこか遠くを見ている。確かに私もどこか遠くへ意識を飛ばしてしまいたかった。
久々に公爵邸の自室で紅茶を飲みながら大きくため息をついた。
「そんなに反対されたんですか?」
そう不思議そうに私を覗き込んだのは伯爵夫人となったエマだった。
「烈火のごとく反対されましたわ……」
「でも不思議よね?」
そう首を傾げたのはティアナだ。温泉宿で働くようになり、いつの間にかこうして私達のお茶会という名の作戦会議にも参加するようになっている。
「何がですの?」
「だって……グレイス様とオースティン様って、いとこ同士よね?別に見ず知らずの馬の骨を連れてきたわけじゃあるまいし、反対される理由が分からないんですけど」
私の父・ゴドウィン公爵は二代前の国王・カルロス様の弟で、その妻であるシシリア様は私の伯母にあたる。そしてキースさんは従兄という関係でもある。確かに親戚関係ではあるが、権力を分散させないために王家の婚姻ではよくあることだ。
「そうですよ!ティアナ様みたいな妃教育も受けていない男爵令嬢が、婚約者として現れたら反対したくなる気持ちは分からなくもないですけど……。でも……グレイス様ですよ?」
エマはどうやら男爵令嬢のティアナが伯爵夫人である自分に敬語を使わないことに密かに苛立ちを感じているのだろう。時々こうして嫌味をぶつけている。
「こういう時ってやっぱり梅干しが効果的なの?」
そんなエマの横やりを軽く無視して、ティアナはそう尋ねた。
「えっと……怒りを鎮めたい時には『百会《ひゃくえ》』のツボがお勧めですわ。眉の中心から頭のてっぺんを通る線と、両耳を挟んだ線が交わる頭頂部にありますの。息を吐きながら気持ち良いと感じる程度の強さで押すと、怒りがおさまるんですの……」
私がそう言って実践して見せると、二人も無言で私の真似をする。
「十回から二十回ぐらい押さえるといいですわ」
「あ――、ここ気持ちいですね」
エマは嬉しそうに頭頂部を押しながら感心するが、少ししてその手がピタリと止まる。
「グレイス様……。『怒りを鎮める』って……もしかしてお怒りになられていたんですか?」
思わぬ形で本音が露呈し、私は慌てて笑ってごまかす。
「イライラした時に効果があるんですのよ。間違えてしまいましたわ」
「でもまぁ、どこの家も嫁姑問題って、切って離せないものだとは思うよ?特にシシリア様は一度は王妃になったものの、新国王の誕生で離宮生活を強いられていたわけでしょ?しかも幼い時から息子とは引き離されてさ……」
確かにキースさんの身を守るためとはいえ、幼いころから母親とほとんど会えない生活を送ってきていた。その辛さは子供だけではなく、母親にもいえることだろう。
「それが国王になって戻ってきて、自分は王太后として返り咲けるわけでしょ?最初が肝心って思っちゃったんじゃない?エマ様のところはそういったことはないんですか?」
「うちはね――、姑は亡くなっているからそういう心配ないのよ」
ティアナの質問に笑顔で返すエマ。おそらく商人の娘との結婚を一番に反対するであろう姑がいない人物……に狙いを定めて最初から近づいたに違いない。
「大反対されている理由なんですが、ちょっと心当たりがあるんです」
エマはおもむろに持っていたティーカップをテーブルの上に置く。その表情は先ほどまでとは打って変わり神妙で、重大な事実を彼女が知っているかのようだった。
「これはお話ししていいかどうか分からないんですけど……」
エマはそう口ごもる。噂好きの彼女が積極的に話そうとしないのはおそらく私に配慮してのことなのだろう。私は形のよい笑顔を浮かべて、エマを安心させる。
「私のことでしたらお気になさらないで。ご存知のことがありましたら、教えていただけませんこと?」
「実は――シシリア様とゴドウィン公爵が恋人だった……って噂があるんです」
私とティアナは、そのとんでもない告白に思わず悲鳴のような叫び声をあげてしまった。
「ティアナ様、そうなんですの?!」
前世は日本で『どきどきプリンセスッ2』をプレイしていたティアナに勢いよく振り返る。彼女は私と違ってキースさんが登場するバージョンのゲームをプレイしている。もしかしたら何か知っているのではないかと思ったが、その顔には驚きの表情しか見られず、あまり有益な情報を持っていないことが伝わってきた。
「し、知らないわよ。そんなの」
案の定、驚きを隠せないといった様子のティアナから今度はエマへ振り返る。
「エマ、それは本当のことですの?」
「シシリア様はご結婚後、直ぐにお子様はできなかったんです。だからカルロス様は即妃様を何人か迎えられたわけなんですけど……、シシリア様とは全くそういう生活がなくなってしまわれて……。シシリア様は自由な交友関係を楽しまれていた――といわれています」
「自由な?」
それは本当の意味で『自由』ではないことは分かっていたが、思わず聞き返してしまう。
「王宮の庭に別邸を作って、そこに若い男を連れ込んでいたみたいなんです。ほら、香水屋のエルフのイケメン店長もシシリア様の寵愛を受けて、あの店を開くことができた……って専らの噂です」
遠い記憶の片隅で妙に艶っぽいエルフがいたことを思い出す。
「その愛人の中に父がいたということですの?」
「愛人かどうかは定かではないのですが、一定期間ゴドウィン公爵がシシリア様の別邸に通われていた――とは聞いております」
思わず意識が飛びかけ、椅子の背もたれに背中を預ける。
「で、では……キース様と私は異母兄弟という可能性も?」
「だからこそ、烈火のごとく反対されたのではないでしょうか……」
言われてみると父の結婚は一般的な婚姻適齢期が十八であるのに対して、二十七歳と比較的遅い。さらに私が生まれたのはその三年後となる……。
「もしかして……」
私は逆算しながら重大な事実に気付いた。
「キース様をシシリア様が妊娠されたから……父は結婚したのかしら」
「あぁ――。カモフラージュ的な?」
私の憶測に二人は大きく頷く。より異母兄弟説が濃厚になり、私は慌てて椅子から立ち上がった。これは私達の胸の内で抱えておくには大きすぎる秘密だ。
第二王子の元婚約者であった私と第一王子であるキースさんとの結婚は、一部の貴族勢力からは歓迎されないことは分かっていたが、目の前の人物から反対されるとは思っていなかっただけに私は思わず言葉を失った。
それは私の隣にいたキースさんも同じだったらしく、口をパクパクとさせている。
「オースティンが国王に即位したことは喜ばしいことではございますが、グレイス嬢との結婚だけは認めません」
「し、しかし母上、彼女は伝説の『大聖女』で――」
「だ、大聖女!!!!」
キースさんの説得は、火に油を注ぐ形となったようだ。前王妃でキースさんの母であるシシリア様は顔を真っ赤にして全身で怒りを表していた。
「大聖女だからなんだっていうんです。そんなの伝説の話ではありませんか。オースティン、そなたの妻は私が見つけてまいります」
「お言葉を返すようですが、私が国王と認められましたのもグレイスのおかげなんです」
「ダメです。絶対ダメ!! 何と言ってもダメなものはダメです!!!!ゴドウィン公爵の娘なぞと結婚などさせられません!」
シシリア様ヒステリックに叫んだ。その隣にいる前国王陛下はそんなシシリア様の反応に慣れてしまっているのだろう。あまり興味がないといった様子でどこか遠くを見ている。確かに私もどこか遠くへ意識を飛ばしてしまいたかった。
久々に公爵邸の自室で紅茶を飲みながら大きくため息をついた。
「そんなに反対されたんですか?」
そう不思議そうに私を覗き込んだのは伯爵夫人となったエマだった。
「烈火のごとく反対されましたわ……」
「でも不思議よね?」
そう首を傾げたのはティアナだ。温泉宿で働くようになり、いつの間にかこうして私達のお茶会という名の作戦会議にも参加するようになっている。
「何がですの?」
「だって……グレイス様とオースティン様って、いとこ同士よね?別に見ず知らずの馬の骨を連れてきたわけじゃあるまいし、反対される理由が分からないんですけど」
私の父・ゴドウィン公爵は二代前の国王・カルロス様の弟で、その妻であるシシリア様は私の伯母にあたる。そしてキースさんは従兄という関係でもある。確かに親戚関係ではあるが、権力を分散させないために王家の婚姻ではよくあることだ。
「そうですよ!ティアナ様みたいな妃教育も受けていない男爵令嬢が、婚約者として現れたら反対したくなる気持ちは分からなくもないですけど……。でも……グレイス様ですよ?」
エマはどうやら男爵令嬢のティアナが伯爵夫人である自分に敬語を使わないことに密かに苛立ちを感じているのだろう。時々こうして嫌味をぶつけている。
「こういう時ってやっぱり梅干しが効果的なの?」
そんなエマの横やりを軽く無視して、ティアナはそう尋ねた。
「えっと……怒りを鎮めたい時には『百会《ひゃくえ》』のツボがお勧めですわ。眉の中心から頭のてっぺんを通る線と、両耳を挟んだ線が交わる頭頂部にありますの。息を吐きながら気持ち良いと感じる程度の強さで押すと、怒りがおさまるんですの……」
私がそう言って実践して見せると、二人も無言で私の真似をする。
「十回から二十回ぐらい押さえるといいですわ」
「あ――、ここ気持ちいですね」
エマは嬉しそうに頭頂部を押しながら感心するが、少ししてその手がピタリと止まる。
「グレイス様……。『怒りを鎮める』って……もしかしてお怒りになられていたんですか?」
思わぬ形で本音が露呈し、私は慌てて笑ってごまかす。
「イライラした時に効果があるんですのよ。間違えてしまいましたわ」
「でもまぁ、どこの家も嫁姑問題って、切って離せないものだとは思うよ?特にシシリア様は一度は王妃になったものの、新国王の誕生で離宮生活を強いられていたわけでしょ?しかも幼い時から息子とは引き離されてさ……」
確かにキースさんの身を守るためとはいえ、幼いころから母親とほとんど会えない生活を送ってきていた。その辛さは子供だけではなく、母親にもいえることだろう。
「それが国王になって戻ってきて、自分は王太后として返り咲けるわけでしょ?最初が肝心って思っちゃったんじゃない?エマ様のところはそういったことはないんですか?」
「うちはね――、姑は亡くなっているからそういう心配ないのよ」
ティアナの質問に笑顔で返すエマ。おそらく商人の娘との結婚を一番に反対するであろう姑がいない人物……に狙いを定めて最初から近づいたに違いない。
「大反対されている理由なんですが、ちょっと心当たりがあるんです」
エマはおもむろに持っていたティーカップをテーブルの上に置く。その表情は先ほどまでとは打って変わり神妙で、重大な事実を彼女が知っているかのようだった。
「これはお話ししていいかどうか分からないんですけど……」
エマはそう口ごもる。噂好きの彼女が積極的に話そうとしないのはおそらく私に配慮してのことなのだろう。私は形のよい笑顔を浮かべて、エマを安心させる。
「私のことでしたらお気になさらないで。ご存知のことがありましたら、教えていただけませんこと?」
「実は――シシリア様とゴドウィン公爵が恋人だった……って噂があるんです」
私とティアナは、そのとんでもない告白に思わず悲鳴のような叫び声をあげてしまった。
「ティアナ様、そうなんですの?!」
前世は日本で『どきどきプリンセスッ2』をプレイしていたティアナに勢いよく振り返る。彼女は私と違ってキースさんが登場するバージョンのゲームをプレイしている。もしかしたら何か知っているのではないかと思ったが、その顔には驚きの表情しか見られず、あまり有益な情報を持っていないことが伝わってきた。
「し、知らないわよ。そんなの」
案の定、驚きを隠せないといった様子のティアナから今度はエマへ振り返る。
「エマ、それは本当のことですの?」
「シシリア様はご結婚後、直ぐにお子様はできなかったんです。だからカルロス様は即妃様を何人か迎えられたわけなんですけど……、シシリア様とは全くそういう生活がなくなってしまわれて……。シシリア様は自由な交友関係を楽しまれていた――といわれています」
「自由な?」
それは本当の意味で『自由』ではないことは分かっていたが、思わず聞き返してしまう。
「王宮の庭に別邸を作って、そこに若い男を連れ込んでいたみたいなんです。ほら、香水屋のエルフのイケメン店長もシシリア様の寵愛を受けて、あの店を開くことができた……って専らの噂です」
遠い記憶の片隅で妙に艶っぽいエルフがいたことを思い出す。
「その愛人の中に父がいたということですの?」
「愛人かどうかは定かではないのですが、一定期間ゴドウィン公爵がシシリア様の別邸に通われていた――とは聞いております」
思わず意識が飛びかけ、椅子の背もたれに背中を預ける。
「で、では……キース様と私は異母兄弟という可能性も?」
「だからこそ、烈火のごとく反対されたのではないでしょうか……」
言われてみると父の結婚は一般的な婚姻適齢期が十八であるのに対して、二十七歳と比較的遅い。さらに私が生まれたのはその三年後となる……。
「もしかして……」
私は逆算しながら重大な事実に気付いた。
「キース様をシシリア様が妊娠されたから……父は結婚したのかしら」
「あぁ――。カモフラージュ的な?」
私の憶測に二人は大きく頷く。より異母兄弟説が濃厚になり、私は慌てて椅子から立ち上がった。これは私達の胸の内で抱えておくには大きすぎる秘密だ。
0
お気に入りに追加
1,169
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

なりすまされた令嬢 〜健気に働く王室の寵姫〜
瀬乃アンナ
恋愛
国内随一の名門に生まれたセシル。しかし姉は選ばれし子に与えられる瞳を手に入れるために、赤ん坊のセシルを生贄として捨て、成り代わってしまう。順風満帆に人望を手に入れる姉とは別の場所で、奇しくも助けられたセシルは妖精も悪魔をも魅了する不思議な能力に助けられながら、平民として美しく成長する。
ひょんな事件をきっかけに皇族と接することになり、森と動物と育った世間知らずセシルは皇太子から名門貴族まで、素直関わる度に人の興味を惹いては何かと構われ始める。
何に対しても興味を持たなかった皇太子に慌てる周りと、無垢なセシルのお話
小説家になろう様でも掲載しております。
(更新は深夜か土日が多くなるかとおもいます!)
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる