きっと好き、じゃない。から、きっとそう

りん

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まだ会いたい

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「将也先輩、お疲れ様でした。」

陣地に戻ってきた後、しばらくして先輩は1人スタンドに行き競技の様子を眺めていた。

  「ん。ありがと」

そう言って笑う先輩の表情はいつもと変わらないように見える。……でも、決勝に進めなくて落ち込んだりしてないのかな?それともそういう気はなかったのかな?

  「…………今日の結果、どうでした?PBベスト出ました?」

  「ん~、一応ね。出たよ」

そう返す先輩の視線は競技から離れる事はなく、私には向けられない。

   「……やっぱり、悔しかった……です、よね?」

   「え?」

恐る恐る聞いてみたところ、驚かれてしまった。やっと視線、あったな。

先輩はあごに手を当てて少し考え込むように瞳だけで上を見たあと、

  「うん。悔しくはないかな。」

  「あれ?」

なんで!?

   「いや、なんかさ。確かに決勝には出れてないから満足では無いよ。本当は走りたかった。でも、出し切れたから。3年間頑張って、最後それが出せたんだ。」

負け惜しみに聞こえるかもだけどね~と笑う先輩はやっぱりつかみどころがない。

ホントによく分からん人だな~。なんて考えてたら、でも、と先輩の視線がこちらにまた向いた。

    「心配ではある、かな。俺らがもう面倒みれないし。2年生達あいつら頼りないし。」

これからも頑張りなよ。と言う先輩に胸が締め付けられた気がした。

   「じゃあ!」

気付いたら口を開いていた。咄嗟にでた言葉は思ったより大きくて、先輩が驚いたように目を見開いている。

   「じゃあ、これで終わりにしないでください!また、部活に来てください。私、まだ先輩と走ってたいです。」

迷惑かな?面倒かな?
でも、これっきりなんて嫌だし……。

先輩、今何考えてるの?
目を見開いたままの先輩の目を真っ直ぐ見れない。

   「ん。いいよ。行ってあげる」

   「へ?」

   「だから、ちゃんと顔出すよ。」

まぁ勉強あるからしょっちゅうは無理だけど~なんて言う先輩。

     「ありがとうございます……。」

     「でもその分頑張ってね~」

嬉しくて視界が滲む。

     「はい!頑張ります。これからもよろしくお願いします!!」
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