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お疲れ様

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あー疲れたぁ。
部活が終わり、制服に着替えながらほうけていると、先輩たちの会話が聞こえる。

   「疲れたねー。この疲れも後ちょっとかぁ。」
   「そうだね。もう最後の大会だもんね。」
   「何か感慨深いわ…」

 あと2週間で、3年生の先輩たちの引退試合がある。その大会の後も残って練習に参加する予定の先輩も居るけど、ほとんどの先輩はその試合でもう部活には来なくなる。今話せてる先輩は3年生の人ばっかりだから、先輩たちが居なくなるのは正直ちょっと不安。

  でも、そんなこと言ってられないし、頑張るしかないよね。

   「お疲れ様でした。」
   「お疲れー」

着替えをすませて、挨拶をして部室から出る。まだ5月だと言うのに、じっとりとした空気が肌にまとわりつく。梅雨が来て、それがすぎた頃にはもう先輩たちとは走れなくなる。過ごした時間なんて少ししかないのに、それがすごく寂しく感じた。

   「なんか、寂しいね。」
  
私が思ってたことを口に出したのは、一緒に帰ることになったみりちゃんこと、美梨花だった。みりちゃんは、中学校が同じで、そこからずっと仲良くしてる。私にとってお姉ちゃんみたいな友達。


   「うん。そうだね、寂しい。……し、不安。」

2人とも同じタイミングでため息をこぼす。その事がなんだかおかしくて、笑いが込み上げてきた。

2人でくすくす笑っていたら、さっきまでの暗かった気分も少しスッキリした気がする。

悪いことばっかじゃない。

そう、きっと今不安に思ってることだってきっと、いいことにつながっているんだろうから。

 今はまだ、先輩たちの走りには着いていけてないし、話だって上手にはできていないけれど、少しずつでも進んで行けるはずだから。

そう考えながらみりちゃんと駐車場まで歩いていると


   「うわ、冷た!何するんすか先輩!」

2年の………確か、馬渕先輩?の声がした。
馬渕先輩が先輩って言うとしたら、3年生の先輩だよね?でも、3年生の男子の先輩は、将也先輩だけ……って事は、そこには将也先輩もいるってことだよね?何でだろ、なんかちょっとドキドキする。話したことある先輩だからかな?

いずれにしろ、先輩たちの声がするのは駐車場の方からなので、やっぱり顔を合わせる結果ととなった。

  「あ、1年生の……浜野さんと、えっと」

馬渕先輩がこちらに気づいたみたい。お疲れ様って言おうとしてるんだろうけどみりちゃん(みりちゃんの名字は浜野)の名前しか分からないみたいで。口がもごもごしてる。

   「麻倉さんだよ。麻倉美香ちゃん。」

 将也先輩が馬渕先輩に私の名前を教えると、馬渕先輩がはっとしたように私を見る。

   「え、名前一緒なんだ!全然わかんなかった。ごめんね。まだ名前覚えれてなくてさ。」

馬渕先輩はきっと人付き合いが上手なんだろうな。すごいフレンドリーな感じがするもん。私も名前が一緒な事は、穂乃美先輩から聞いていたけど、こうして話すのは初めなんだよね。ちょっと近寄り難いイメージを持ってたからなんか親近感を覚えた。

   「いっ、いえ。大丈夫です。」

まぁ、名前が一緒っていうのも、私は“美香”で、馬渕先輩のは“帝夏”なんだけどね。


それにぶっちゃけ、馬渕先輩は謝ってくれたけど、私もまだ全然名前覚えれてないんだよね。
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