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第参章 ハジマリを創り出す者
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チャイムが鳴る。
学校での一日の終わりを告げる鐘。
「起立、礼」
静かで、それでいて凛とした声に生徒が従い帰路に着く。そんな中、真衣は今日も一人空を見上げていた。まるで吸い込まれるように。
「真衣」
そんな彼女の意識を教室へ引き戻したのは他でもない藍であった。
「私、今日は用事があるから先、帰るね。」
いそいそと帰り支度をする彼女に視線を向け、辺りを見回し、真衣は放課後になったことを理解した。そして、未だぼんやりとした頭で、彼女の発した言葉を反芻させ、漸く意識がはっきりした頃、「ああ」と声を漏らした。
「ん、分かった。また明日ね。」
そう言って微笑む真衣を見て溜息を着く藍は肩から落ちかけていた鞄を持ち直し口も開く。
「うん。また明日」
真衣に手を振り教室を出ていこうとした藍が立ち止まる。
「真衣」
「ん?」
振り返らず、背を向けたまま自分を呼ぶ親友の声音に違和感を覚え、首を傾げる。その声が、ゆっくりと振り返った彼女の瞳が堅く、真剣な趣で真衣を捉える。
「気をつけて、ね」
それだけ言うと真衣の返事を待たずに早足に教室を出ていった。
「……うん」
遅れて出た返事は誰に届くでもなく何処かへ消えた。
学校での一日の終わりを告げる鐘。
「起立、礼」
静かで、それでいて凛とした声に生徒が従い帰路に着く。そんな中、真衣は今日も一人空を見上げていた。まるで吸い込まれるように。
「真衣」
そんな彼女の意識を教室へ引き戻したのは他でもない藍であった。
「私、今日は用事があるから先、帰るね。」
いそいそと帰り支度をする彼女に視線を向け、辺りを見回し、真衣は放課後になったことを理解した。そして、未だぼんやりとした頭で、彼女の発した言葉を反芻させ、漸く意識がはっきりした頃、「ああ」と声を漏らした。
「ん、分かった。また明日ね。」
そう言って微笑む真衣を見て溜息を着く藍は肩から落ちかけていた鞄を持ち直し口も開く。
「うん。また明日」
真衣に手を振り教室を出ていこうとした藍が立ち止まる。
「真衣」
「ん?」
振り返らず、背を向けたまま自分を呼ぶ親友の声音に違和感を覚え、首を傾げる。その声が、ゆっくりと振り返った彼女の瞳が堅く、真剣な趣で真衣を捉える。
「気をつけて、ね」
それだけ言うと真衣の返事を待たずに早足に教室を出ていった。
「……うん」
遅れて出た返事は誰に届くでもなく何処かへ消えた。
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