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第三章 建国の女神様

(49)死神の猛攻

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デスサイズの漆黒の鎌が、不気味な軌道を描きながらゆっくりと動き始めた。その冷たい笑みが闇の中に浮かび上がり、死を予告するかのような冷酷な光を瞳に宿して三人を見下ろしている。背後に集まる黒いマナは意思を持つかのように蠢き、渦を巻きながら形を変え、瞬く間に無数の鎌へと姿を変えた。闇夜に煌めくその鋭利な刃は、まるで天から降り注ぐ死の雨だった。鎌の群れは無慈悲に、確実に三人を狙い始めていた。

「来るぞ!」

カーライルの叫びが戦場に響いた瞬間、彼は即座にアルマの前に立ち、双剣を抜き放った。迫り来る鎌の一撃一撃を見極め、次々と弾き飛ばしていく。黒紫のマナが霧散し、戦場に淡い光の粒が瞬きながら飛び散るも、次の刹那にはまた新たな鎌が空を裂いて押し寄せてくる。鎌の無限の奔流がカーライルを押し込み、その剣が疲れを知らずに光り続ける一方で、彼の体力と集中力は試され続けていた。

ロクスもまた、黙々と剣を振るい迫り来る鎌を斬り裂いていた。その一撃は正確無比であり、まるで時間の流れを見通すかのように的確だった。しかし、デスサイズの暗黒の力が増幅するにつれ、空気はますます重く淀み、蒼い炎を纏う巨体が放つ恐怖が戦場全体を包み込んでいく。

突如、デスサイズの巨体が闇に溶け込むように姿を消した。戦場を覆うのは、押しつぶされそうな静寂と息苦しいほどの重苦しさだけだった。ロクスは鋭い目で辺りを見渡すが、どこにもその姿は見えない。焦燥感が胸を支配し、彼は静かに歯を食いしばる。

「どこへ消えた…!」

ロクスが低く呟いた瞬間、背後に異様な気配が生まれる。音もなく、デスサイズが再び姿を現した。蒼い炎を纏った巨躯は、闇そのものが具現化したかのように圧倒的で、漆黒の鎌が空気を切り裂いて鋭く振り下ろされた。その刃が風を切る音は、死神の足音のように冷たく恐怖を煽る。

「くっ…!」

ロクスは咄嗟に剣を掲げ一撃を受け止めようとした。しかし、その衝撃は凄まじく、鎌が剣にぶつかった瞬間、雷鳴のような轟音と共に圧倒的な力が全身を貫いた。彼の体は抗う術もなく空中へ弾き飛ばされ、大地へ叩きつけられる。鋭い痛みが全身に走り、胸を締め付けるような苦しさが押し寄せた。視界はぼやけ、音は遠のき、意識さえも薄れ始める。

「大丈夫ですか!」

アルマの焦燥に満ちた声が耳に届くが、ロクスは応えることができない。全身はデスサイズの凄まじい一撃の衝撃に支配され、身体は重く動かず、彼はただ倒れたまま上空にそびえ立つデスサイズの巨大な影を見上げていた。蒼い炎に包まれた死神の姿は、絶望そのものの象徴としてそこに立ち、冷たい笑みがその口元に浮かんでいるように見えた。

デスサイズは無情に、漆黒の鎌を再び持ち上げた。その動きは儀式的で、終焉を告げる確固たる意思を感じさせる。鎌が振り下ろされるその刹那、アルマが杖を握りしめ、小さな唇を静かに動かし始めた。

「聖光癒《ルミナスヒール》!」

力強く放たれたその言葉と共に、杖から放たれた光が柔らかな波となり、ロクスの全身を包み込んだ。その光は、母なる大地が傷ついた命を癒すように優しく、そして力強かった。温かな光の流れが彼の傷をゆっくりと癒していくたび、ロクスは体の奥底から力が戻ってくるのを感じた。痛みは和らぎ、乱れていた呼吸も次第に落ち着きを取り戻していく。蘇る力に、ロクスは拳を強く握りしめ、再び立ち上がろうとした。

「ありがとう…助かった。」

ロクスの低い声には、静かな感謝と共に、再び戦いに挑む決意が込められていた。彼の鎧はデスサイズの一撃で砕かれ、血が滲んでいるものの、その佇まいには剛毅さが戻りつつあった。痛みを堪えながらも、瞳の奥には絶対に屈しないという強い意志が燃えていた。

しかし、その束の間の安堵は、再び激しさを増した蒼い炎によって断ち切られた。デスサイズの巨大な影が再び立ち上がり、闇の奥から冷酷な瞳が二人を睨みつけていた。その瞳は、不吉な光を湛え、次なる災厄が迫っていることを予感させた。

「厄介な奴だ…」

カーライルは歯を食いしばり、剣を握る手に力を込めた。デスサイズの瞳が輝き始めると、戦場全体に冷たい恐怖が広がり始めた。その光は、地獄の底から這い上がった悪夢そのもののように不気味で、ただその視線を向けられるだけで空気が押し潰されるような感覚を覚えさせた。

そして次の瞬間、大地が轟音を立てて砕け散り、デスサイズの視線が動くたびに巨大なクレーターが次々と生まれる。爆裂する大地、舞い上がる土煙──その混乱の中で、アルマが鋭く叫んだ。

「アイツの目よ!気をつけて!」

警告が響くや否や、ロクスは瞬時にその視線を避けるよう身を翻した。しかし、デスサイズの眼光はまるで意思を持つかのように追い続ける。その視線が触れた場所は次々に爆裂し、割れた大地が戦場を飲み込み始めた。瞬く間に戦場全体は混乱と破壊の渦へと変わり果て、ただ抗い続けるしか道はなかった。
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