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第三章 建国の女神様

(42)王家の指揮

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カーライル、アルマ、そしてフィオラが分断されたその同時刻──
第三王子シオンの私室

シオンは赤く輝く盤面の前に立ち、王都全域の情勢を鋭い目で見据えていた。部屋を包む静寂は彼の集中を妨げるどころか、冷徹な思考を際立たせていた。漂う微かなマナの流れが空間を引き締め、盤面を囲む空気には張り詰めた緊張感が満ちている。

盤面には、銀色の点が整然と並び、シオンの指揮下にある魔道騎兵の布陣を示していた。その傍らには、聖天の騎士団を象徴する金色の点が輝いている。一方、無数の黒い点がじわじわと広がり、王都全域を蝕む脅威を描き出していた。盤面上で繰り広げられる戦況は刻一刻と変化し、その動きがシオンをさらに深い思索へと誘う。

「魔法学院、聖堂、ギルド、魔法研究所──」
シオンは静かに呟きながら、盤面に目を凝らした。

南部の魔法学院では、熟練の魔法使いたちが連携し、防衛線を構築している光景が浮かぶ。東部の聖堂では、聖職者たちが神聖な光を駆使し、闇を払い続けている姿が想像される。西部のギルドでは、冒険者たちが懸命に地域を守り抜き、北部の魔法研究所は堅固な防壁で侵攻を阻んでいる。

それらは、シオンが見ているわけではなく、あくまで頭の中に描かれる仮想の光景だった。しかし、それは次の一手を導く手がかりとなる、極めて重要なビジョンだった。

「となれば…中央の噴水広場を防衛の要とするべきだ。」
彼は静かに決断を下し、冷たい声で指示を告げる。

「剣士部隊、噴水広場へ急行せよ。グールの群れが迫っている。隊列を組み、即座に迎撃せよ。」

シオンの命令が瞬時に伝達され、盤面上の銀色の点が素早く動き始めた。魔道騎兵たちは鮮やかな連携で噴水広場に展開し、押し寄せるグールの群れを次々と討ち倒していく。その光景は盤面に刻まれ、赤い輝きの中で戦場が一時の静けさを取り戻していくのが見て取れた。

だが、盤面にはなおも黒い点が浮かび続けている。特に北門周辺には新たな死霊の群れが湧き出し、スケルトンやゴーストが果てしなく押し寄せていた。それは、王都を包囲する果てしない潮流のように見えた。

「北門も危険だな…」
シオンは眉ひとつ動かさず、さらなる命令を下す。「魔法部隊、氷の魔法でスケルトンの軍勢を粉砕せよ。」

盤面上の銀色の点が再び動き、北門に展開した魔道騎兵たちが冷気の波を放つ。その冷たい力がスケルトンを粉々に砕き、黒い点は次々と盤面から消えていった。しかし、北門の外縁にはさらに濃密な闇が漂い、新たな脅威がその姿を現そうとしていた。

「弓兵部隊、城壁へ急行せよ。そして光の矢で敵を迎撃せよ。魔法部隊は光の防壁を展開し、ゴーストの侵入を阻止。」

彼の厳然たる命令に応じて、盤面上の点が動く。放たれた光の矢が闇を切り裂き、神聖なる輝きが死霊を粉砕する。一方で、光の防壁がゴーストたちを遮り、霧散させていく様子が映し出された。

シオンの眉がわずかに動く。盤面上には依然として黒い点が浮かび続け、闇の波はなおも湧き上がっている。それでも、彼の瞳に迷いはなかった。

王都を守り抜くという不動の決意が、彼の鋭い視線の奥に宿っている。その目は盤面を超え、戦場全体を逃すことなく見据えていた。金色の点が黒い点を消し去り、銀色の点もまた着実に敵を減らしているが、シオンの冷徹な判断は次なる一手を導き出すために止まることを知らない。

「アルマ殿…どうかご無事で…。」
その祈りを胸に秘めながらも、シオンは感情を押し殺し、冷静な判断を続けていた。盤面の赤い輝きが彼の決意を照らし出し、王都の行く末を守る者としての使命が、彼の中で強く燃え続けていた。
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