銭湯エルフと恋の夏

（５１）エルフと天使

砂浜の眩しい日差しの下、二人の水着姿が目の前に現れた瞬間、時間が少し止まったように感じた。

まず目を奪ったのは夏菜の姿だ。太陽の光を受けて輝く茶色の髪が、まるで夏そのものの象徴のようにきらきらと光を反射している。青い海が瞳の中で踊り、無邪気で元気な彼女らしいエネルギーが溢れ出していた。身につけているのは鮮やかなオレンジ色のビキニ。その色は、彼女の天真爛漫な性格をそのまま映し出しているようで、見ているだけで心が弾む。「夏といえば夏菜」という言葉が自然と胸に浮かび、彼女の姿は海辺に咲くひまわりのように輝いていた。その無防備な笑顔に、一瞬目を逸らせなくなってしまった自分がいる。

次に視界に入ったのはフィリアだった。淡い水色のワンピースタイプの水着に白いフリルがふわりとあしらわれ、彼女の透き通るような肌と銀髪に驚くほど馴染んでいる。その銀髪は陽の光を受け、まるで宝石のように煌めいていた。彼女の姿はまるで夏の風景に咲く一輪の可憐な花。控えめで、それでいてひときわ目を引く存在感があった。白いサンダルが彼女の可愛らしさをさらに引き立て、どこか儚げな雰囲気が周囲の景色をも柔らかく包み込んでいるように思えた。その姿をただ見つめるだけで、心の中にふっと温かい感情が広がった。

まるで二人の天使が夏の砂浜に舞い降りたような錯覚を覚える。

「ちょ、ちょっと、なにジロジロ見てんのよ！」夏菜が俺の視線に気づき、顔を赤くしながら口を尖らせる。その表情に一瞬たじろぐ。

「ユウトに見せるために着てるんじゃないんだから！」その言葉にドキリとして、慌てて視線を逸らす。

「そ、そうだな。水遊びのためだもんな…」と、口の中で言い訳のように呟いた。

「アタシたち女子は日焼け止めを塗るから、ユウトはさっさとそのボール膨らませなさい！それと、こっちの浮き輪もね！ジロジロ見た罰！」

夏菜が命令口調でそう言い放つと、フィリアに向き直り、優しくクリームの使い方を教え始めた。フィリアはそれを真剣に聞きながら恐る恐る手を動かし、白い肌に丁寧にクリームを塗り広げていく。

「白いのに、塗ると透明になるんですね…」彼女が不思議そうに呟く声が耳に届く。その穏やかで好奇心に満ちた様子を横目で見ていると、思わず口元が緩んでしまった。

「ほら、しっかり塗らないと焼けちゃうから！」夏菜が軽快な口調で注意を飛ばしながらも、楽しそうにフィリアの手を取り、クリームを広げる手伝いをしている。俺はそんな二人を眺めながら、ひたすらボールと浮き輪を膨らませ続けた。肺が痛み始めた頃、ようやく膨らみきったそれらを手に取り、息を整える。

「ふぅ、これで…準備完了だな。」俺がそう呟くと、夏菜が元気よく「よーし、準備万端！」と声を上げる。その笑顔の眩しさに釣られて、俺も自然と笑みがこぼれる。

そして、ついに。全ての準備を終えた俺たちは、待ちに待った海へと足を踏み出した。夏の砂浜が熱を帯び、波の音が心地よく耳に響く。その瞬間が、この夏一番のスタートラインだと、俺はなんとなく感じていた。