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本編
そこはもふもふパラダイス。
しおりを挟むあれから2週間
ほとんど自室から出ずに過ごしていました。
そしてララに頼んで部屋の荷物をまとめていたのです。
なぜか
それは、別館から本館の本来なら私の部屋である所に移ることになったからです。女主人の部屋ですね。
因みにですが、このことを言い出したのは私ではなくて、まさかのレンリ様からなんです!
つい先日部屋でカイリ君とお話ししていた所にレンリ様が来られ、
「ユーリア...本館に移らないか」
「......はい?」
唐突にそれだけ言われてポカンとしていると、早く答えろと言わんばかりにじっと見つめられてます。
「....嫌か」
「移ります!」
「そうか.....」
そんな嬉しいこと言われたら即決するに決まってますよね!
「お母様こちらで過ごされるのですか!
やったー!」
私とレンリ様の周りをピョンピョン跳ね回って喜ぶ姿が可愛い過ぎる。
「私が移っても、他の方が嫌がらないかしら」
あんなに獣人と関わらないように徹底して遠ざけてきたのに、急に一緒に住んで仲良くしろなんて虫が良過ぎるよね。
「...心配ない。侍女長には現状を伝えてある。何かあるようなら俺に言うといい」
そして部屋から出て行ってしまった。
あの時のレンリ様とてもかっこよかったわ...
「奥様こちらはいかがしましょう」
「へっ...あぁそれは捨てましょう」
いけない。こないだのことを思い出してついつい意識が飛んでいたわ。
レンリ様かっこよくて、逞しくて、子煩悩な上に嫌っていた嫁も気にしてくれるなんて
「はぁ...私幸せなのかも」
「....奥様」
呆れている表情のララを見るのは何度目かしら。その表情も可愛いわ。
でも本館に行くとなると、人間はお義父様だけで、働いているのは皆獣人だ。
「これはもふもふパラダイスが期待できるのでは...ふふっ」
私の大好物がわんさかと待っているとしたら、ドキドキが止まらないわ!
まるで遠足の前日みたいね。
「なんて、そんな甘いことを思っていた時もあったわね」
本館に移った時の獣人からの視線が痛かった。
今までの行いが全て自分に返ってきているのだと思うと、しょうがないよね。
ユーリアの本心とは裏腹に、ユーリアのメイド達は好き勝手獣人を貶して嫌がらせをして蔑んでいたのだから。
目の前には様々な動物の耳や角、尻尾が生えた可愛い獣人メイドや執事がいるというのに、見るだけしかできない。
いや、むしろ私と目が合うことを恐れ皆離れていく。
こんなに触りたくてうずうずしてるのに悲しいかな。
「ララ...貴方だけね。こんな私についてくれる子は」
「奥様...申し訳ございません。同僚にも今の奥様の姿を伝えてはみてるのですが、誰も信じてくれなくて...」
うさ耳をペシャンと垂れさせている姿が可愛いとか思っている場合ではないわねこれは。
何とか獣人の皆さんとの心の距離を縮めてやるんだから絶対にね!
そして私のもふもふパラダイス計画を達成させるの!
そのためにまずは侍女長と仲良くなりたい。あわよくば抱きつきたい。
昨日会った時は、膨よかな体型で優しそうだったけど、その眼差しは初めてララを見た時と同じように怯えと、恐怖、嫌悪が感じられたわ。
羊の獣人みたいで羊のような耳と角が生えていて、それだけでも私にとっては愛でる対象だったわね。
これで名前がメリーだったら完璧だわとか思っていたけれど流石に違うみたい。
ちょっと期待しちゃってたわ。
侍女長であるメリーさんもとい、シャーリーさんはレンリ様を小さい頃から知っておられる。第二の母のような存在だと私は思うのだけれど。
「レンリ様の幼少期...絶対可愛いわ」
是非ともこれは聞き出さねばなりません。私の知らないレンリ様!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
コンコンコン
「失礼します奥様。私をお呼びとのことで参りましたが...」
昨日の今日でやはり怯えた様子が見られるわよね。よくみると耳もピクピク動いているし...なんだか悪いことした気がするわ。
「シャーリーさんお待ちしていましたわ。こちらにいらして。」
「...はい奥様」
私の対面の席についてもらったのはいいものの、どう話せばいいのかしら...
ララの方をチラリとみるが済ました表情でお茶の準備をしている。
どうしましょう
「むぅ...」
手をもじもじさせていると
「あの...奥様」
シャーリーさんから話しかけてくれた。
「はいシャーリーさん」
「あの私はなぜ呼ばれたのでしょうか....何か奥様の気に触るようなことをしましたでしょうか....それでしたら謝りますからどうか家族だけはっ」
「ちょっと待って下さい!」
「ひっ...」
「あぁごめんなさい!怖がらせてしまって。」
待て待て待て私極悪者感が強い気がするのは気のせいかしら?
でもここはきちんと誤解を解かないと永遠に私のもふもふパラダイスの未来は無い。
「シャーリーさん謝るのは私の方よ」
「え....奥様?」
「今まであなた方に心無い言葉や嫌がらせをして傷つけてしまって本当にごめんなさい。謝って済むような話ではないとわかっています。でもどうしても謝りたくて。」
私の誠意が伝わるようご令嬢ではあり得ないような深々としたお辞儀をする。
本当に今までユーリア自身では無いが、ユーリアの連れてきた侍女達によって傷つけてしまった事実については、全力で謝りたい。
「奥様....お顔をあげて下さい。ララ、あなたが言っていたことは本当だったのね。奥様がこんなにも誠実な方だったなんて....」
「シャーリー様、本当でしたでしょう?私は奥様のお気持ちを信じたいと思いお仕えしています。」
「えぇ...奥様...今までのことをすぐに水に流すことは難しいです。傷ついた子達は大勢いますので。ですが、奥様自身が何かされたところは1度も見たことがないのは確かです。ララから色々聞き半信半疑でしたが、今分かりました。奥様これから誠心誠意仕えさせていただきます。」
「シャーリーさん...」
「シャーリーでよろしいですよ奥様」
「はいっ..シャーリー」
「奥様よかったですね」
「ありがとうララ」
「奥様シャーリー様お茶が冷める前にいかがですか?それと、最近人気になっているお店のチョコレートケーキご用意しました」
「チョコレートケーキ!食べましょ!
ね!シャーリーも」
「わっ私もですか!しかし」
「いいんですのよ。誰かと一緒に食べるとより美味しく感じると言いますから。ララも座って一緒に食べましょ」
「ありがとうござます奥様」
「ララまで...分かりました。お言葉に甘えてご一緒いたします。」
シャーリーさんの表情が。少しは和らいだようで安心しました。他の獣人さん達の恐怖心もこれで和らいだらいいのだけれど。
でも何か忘れている気がするけど、きっと気のせいよね。
この世界のチョコレートケーキは想像以上に絶品でした。
美味ですわ。
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