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本編
本当にあるんですね、こんなこと。
しおりを挟む「...さま 」
「お...さま」
ん、何?
誰かの声が聞こえてくる。
とても悲しいような切ない声。
早く起きないといけない。なぜかそう思い、ゆっくりと目を開き焦点を合わせる。
「うっ...」
頭が痛いけど私は事故にでもあったのだろうか。
それならばここは病室?にしては豪華な天井。特別室か何かだろうか。
そんなことをぼんやりと考えていた時だった。
「お母さま!!」
「え?」
声のする方を見ると、そこには見たことも無い綺麗な金髪碧眼の男の子が泣きながら立っていた。
「お母さま...ひっく...うぇぇん」
男の子はベッドに上がって私に必死に抱きついてきた。
急な事態に状況を飲み込めないが、3歳の妹の彩と同じくらいのその男の子をそっと抱きしめた。
私を見上げるその宝石のような碧色の瞳からポロポロと溢れてくる涙に胸が苦しくなり、優しく頭を撫で背中をさすった。
「よしよし大丈夫だよ」
しばらく続けていると、男の子は泣き疲れたのか寝息が聞こえてきた。そっと自分の隣に寝かしてその子を観察すると、不思議なことに気がついた。
「えっケモ耳ついてるんですけど」
なぜ気づかなかったのだろうか。
ファンタジー系の話でよくあるケモ耳は、獣人と呼ばれる事が多いが、私の住む地球にそのような種族は存在しない。
ちょっと待て、冷静になって考えろ私。
周りを見渡すと、病室ではないようだし、我が実家ではあるまじき煌びやかな家具が揃っている。
そして広々としたベッドに天蓋まで...
さて問題です。ここはどこでしょうか。そして私は誰でしょう。
正解は
「異世界?」
目の前には獣人の子ども。そしてやけにサラサラすぎる綺麗なプラチナブロンドの髪の毛が私の視界に入ってくる。
私は純日本人だったはず。父も母もそうだから、染めていない限りこんな髪の色な訳がない。それに獣人なんてファンタジーの中の生き物だ。
目を擦りもう一度見ても、やはり目の前の景色は変わらない。
「もしかしてこれは流行りのトラ転なのか?」
トラックに轢かれて目が覚めたらそこは異世界でした。なんてことは、ファンタジーだからこそ面白い話であって、現実に起きうる可能性がないから皆こぞって創作して楽しんでいる。
私も読む専門だったが、本当に自分の身に起こっている今、私の思考はショートしました。
.........
「ん...」
「あっ奥様!気がつかれましたか?」
目が覚めたらそこには、メイド服を着たピンクの髪の可愛らしい女の子がいた。
コスプレ?いや違う。メイド服の着こなしにどこかしっくり感がある。
それに頭に着いているそれ
そうケモ耳
それもうさぎ!
これはやばい
「...ここは天国か」
「えっ?」
「あっごめんなさい...つい心の声が...」
すごい怪しそうな表情で見られるけどもさ、その表情も可愛いってなんだろうか。
「あの...奥様お加減はいかがですか?」
奥様ってなんだ?私か?
「えっと私のことですか?」
「えっ?奥様のことですが...あっ申し訳ございません私などが話しかけてしまい。今退出いたしますので」
ペコと頭を下げ出ていきそうになるから慌てて止める。
「ちょっと待ってください!」
「ひゃっ!」
うるうると涙目のうさぎさん良い!
じゃなくて
「ごめんなさい。驚かせるつもりはないの。あなたの名前なんでしたっけ?」
「あっ....あのララと申しますっ...お医者様お呼びしてきます!」
そう言って部屋を脱皮の如く出ていってしまったララさん。
逃げられたのか?
お医者さん呼んでくるとか言ってたよね。じゃあまた後で会えるか。
そういえばふと思ったけど、私はどんな顔してるんだろうか。わかっていることといえば、この腰あたりまで伸びているプラチナブロンドの綺麗な髪の毛、出るところは出て引っ込むとこは引っ込んでる不二子ちゃん並みのボディ。これで顔がブスでもやっていける自信あるわ。でも念のためとゆっくりベッドから降りて立てかけてある装飾が豪華な大きな鏡の前に立つ。
「あれ...これが私?でもこの顔知ってる」
だってこの顔って...
私の好きなゲームのキャラクターで悪役令嬢ユーリア・モントニアじゃない!
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