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始まり①
しおりを挟む大好きで堪らない彼氏。たくさんデートして、自分のことを知ってもらって、お互いに好きになって。そしてイチャイチャして。
そうなるはずだったのに。
「もうたくさんだ。お前のわがままに付き合うのは。俺はサキラと共に行く。今まで世話になったな。もうお前はいらない。」
「御門君…。」
どうしてこんなことに。
高校1年藤野亜月。大好きな彼氏、小鳥遊御門君と下校の真っ最中だ。切長の目に薄い唇、綺麗な肌。意志の強そうな太めの眉。そして185センチという長身に冷たい印象を受けるほどに整ったその顔面。質実剛健、清廉潔白を地でいく御門君。亜月はそんな彼の彼女という座をゲットしたとてつもなくラッキーな女だった。
「ねえねえ!クリスマスデートして、初詣にもいこうね!あ、宿題も一緒にやろうよ!どこにしようか、うち?図書館のほうがいいかな!あ、うちの方がお菓子とか食べながらできるしうちにしようか!御門君は何か食べたいものある?」
「ない。」
「ないかー!そっかー!じゃあチョコレートにしよう!えへへー!御門君大好き!」
隣を歩きながらにっこりと微笑む。御門は無言で歩いている。
「クリスマスはどこに行く?イルミーションもいいよね?クリスマスプレゼントも贈るから楽しみにしててね!あ、夜ご飯まで一緒に食べようね!何が食べたい?」
「なんでもいい。」
「そっかー!じゃあハンバーグのお店予約しとくねって…ん?何これ?」
御門の隣をスキップで歩いていると、突然御門の足元に変な紋章が浮かび上がって光り出した。そして、御門の体がその光に飲み込まれようとしている。
「だめ!!!」
亜月は急いで強く御門の体を抱きしめる。そして、光がさらに強くなって何かに引っ張られる感覚がした。
気がついたら、真っ白な空間にふわふわと浮かんでいる。
「大丈夫!御門君、怪我はない?」
「ない。」
亜月は御門の腕にぎゅうっとしがみついてしまっていた。しかし、珍しく御門は何も言わない。嬉しくなった亜月はさらに強く御門に抱きついた。
「御門君!大好きーーーー!」
「…。」
ここぞとばかりに抱きついていると、「パンパカパーーーーン!」と大きな声が響き渡った。
「おめでとうございます!あなたは勇者に選ばれました!」
突然現れたのはそれはそれは綺麗な女の人だった。金髪の髪は足元まであってふわふわと緩いウェーブがかかっている。服は真っ白で、裾に向けて広がっている。瞳はピンク色でそれはそれは可愛らしい。でも言っていることは不穏だ。
「勇者って何?」
「分からん。」
なんだか不安でギュウギュウと御門に抱きついたままでいると、現れた女の人がズイズイと近付いてきた。
「小鳥遊御門君、君は私の世界の勇者に選ばれました!聖女とともに世界を支配しようとする魔王と戦って世界を救ってくださいね。ちなみに聖女はこの子ー!」
女の人が両手で空間を指差すと、水鏡のようにそこが歪んで、ある人物を映し出した。
「わぁ、可愛い…!」
亜月が感嘆する。映し出されたのは、目の前の女の人と同じぐらい可愛い女の子だった。亜月と同じくらいの歳に見える子で、髪の毛は肩まであるピンクで、瞳は薄い紫色。肌は真っ白で唇はりんごのように赤い。そして白いローブを見にまとい、綺麗な宝石がついた杖を持っていた。
「そう!この子が君と旅をするの!可愛いでしょ?そして、国を救った暁には願いをひとつだけ叶えるし、この子と結婚できちゃいまーーす!」
「っはぁ!!!ちょっと待ってよ!」
亜月は聞き捨てならないことを聞いた。結婚?御門君が自分以外の人と???
そんなこと。
「絶対駄目ーーーー!」
亜月はさらに強く御門君を抱きしめた。
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