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第四章 神様たちは積極的
第六話
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「うーちゃん、起きてよ!起きて!」
慌てて部屋に戻ってうーちゃんの身体を揺すってみるが、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てていてまったく起きる気配がない。夕方にうーちゃんに警告されたのに、適当に流した自分に後悔する。
「うー、大丈夫かなぁ。大丈夫だよね?」
とにかく自分を落ち着かせるために部屋の中をグルグルと歩き回る。速さんはカッコいい大人だし、僕に手を出すようなことはしないだろう。でも、万が一ということがある。変なことをされないように自衛策を講じておくべきかもしれない。
「早く寝てくれればそれが一番なんどけど…。そうだ!」
確かお祖母ちゃんが食器棚の中に入れておいてくれたものの中にあれが入っていたはずだ。ゴソゴソと棚の中を漁るとやはりあった。
「これこれ!よし、急ごう!」
取り出したのはココアの袋。小さな小鍋を取り出して、その中にココアをスプーンで3杯ほど入れた。コンロの火をつけて、少しだけココアを煎った後、冷蔵庫から取り出したミルクを少しずつ垂らす。そして、スプーンでココアをよーく練り込んだ。すると、少しずつココアに照りが出てくる。全体にとろみが出てきたところで、残りのミルクを一気に入れて少し加熱。熱くなりすぎないところで火を止めて、大きめのマグカップに注ぎ入れた。
「よーし、完成!」
「何作ってるんだ、朝穂?」
「ひゃあ!!!」
作り終わってほっと息を吐いていると、後ろからぎゅうっと抱きしめられ、耳元で囁かれた。
「ちょ、速さん!ちゃんと洋服着てくださいよ!」
「シャワー浴びたばっかりだから熱いんだよ。んでそれ何?」
僕を抱きしめてきたのはもちろん速さんだ。しかも上半身裸のままで、髪は高く結えてお団子にしてある。その髪型が可愛らしくて見えてクスッと笑ってしまった。
「んー?朝穂はこんは髪型が好きなのか?ならいつもこんなふうにしてやるよ。っよいしょっと。」
「わ!!!ちょっと、速さん!」
速さんが僕の膝裏に腕を通してお姫様抱っこで持ち上げてくる。これはやばい、絶対危ない。それに速さんもニヤニヤ笑ってるし、絶対にいかがわしいことをしようとしている。
「あ、あの、速さん!僕、速さんのためにココア淹れたんです!良かったら寝る前に飲んでくれませんか?」
「あー?ココア?」
布団の方へ歩き出そうとした速さんが、コンロの横に置いてあるマグカップに視線を移す。
「は、はい。一生懸命作りました!…飲みませんか?」
しょんぼりとした顔で尋ねてみると、速さんは小さくため息をついてキッチンの方へ戻り、僕の身体を下ろしてくれた。そして、テーブルの前にある椅子に座って、早くもってこいとでも言うように僕を手招きする。
「あ、はい!どうぞって、うわぁ!」
「んっ…、おぉ、なんかうめーじゃねーか。」
「あ、おろしてくださいよ!」
いそいそと速さんにマグカップを持っていく。手渡したらそのまま自分だけ布団に戻ろうかと思っていたが、片手で身体を持ち上げられた、そのまま速さんの膝の上に乗せられてしまった。そしてよしよしと頭を撫でられる。まるで幼子のような扱いをされたのが恥ずかしくて、降りようとするものの、速さんの力はとんでもなく強く自分の腹に回った腕はびくともしない。
「は、速さん!」
「飲み終わるまで大人しくしてろ。…それともここでおっぱじめていいのか?」
「んやぁ!」
パジャマとして着ているTシャツの裾から速さんが手を入れてくる。そして僕の腹をツーッと指で撫でた。そして、指の背で臍の辺りを弄ってくる。
「んんっ!!」
「いい声出すなぁ、お前。保食神の気配がしたから揶揄うついでに来てみたけど、いい拾い物したわ。…ほら、もっと声出せよ。お前の声が、すげー、下腹に来る。」
「や、は、速さん!ぼ、僕未成年で!」
「そんなもん、神が気にすると思うのか?
神には性別も年齢も関係ねーよ。ただ気にいるか気に入らないかだ…。うん、美味かったぞ。ごちそーさん。」
「あ、お粗末さまでした。」
速さんがにかっと笑って褒めてくれたので、律儀に言葉を返してしまった。
「いつものココアと違ってなんかコクがあると言うかなんというか。まぁ、あれ料理とかしないから分かんねーけど、お前、料理上手だな。」
「べ、別にただのココアで!」
「ココアでも分かるぞ?俺のために、俺のことを考えて淹れてくれたんだろ?俺がよく眠れるようにって。相手のことを思って作る料理ってのが一番美味しいに決まったんだよ。」
「あっ…。」
父さんの言葉を思い出す。料理は相手を思ってするものだって。どんなに高級な食材を使ったとしても、相手のことを思った料理じゃなければ美味しいものはできない。本当の料理人じゃないって。
「うっ、うう、父さん、父さん!!!」
ボロボロと涙が溢れる。うちでは我慢していた。僕が泣いたら母さんが悲しむから。涙目だけは見せないようにって我慢してたんだ。でも辛かった。たった1人の父さん。たった1人の血縁者がいなくなってしまったのだ。僕はこの世界で一人ぼっちになった。
「父さん!嫌だよ、戻ってきてよ!僕1人は嫌だ!そばにいてよ!嫌だよおおー!」
「…。」
目の前の速さんの身体に縋ってしまう。何か言われるかと思ったけれど、速さんは何も言わずに僕のしたいようにさせてくれた。だから調子に乗ってその胸に頬を寄せさらに激しく泣いてしまう。
「1人は嫌だ、嫌だよ速さん…。」
「なんだよ、プロポーズか?考えといてやるよ、だから泣くな。」
速さんは、僕が落ち着くまで優しく抱きしめ続けてくれた。
慌てて部屋に戻ってうーちゃんの身体を揺すってみるが、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てていてまったく起きる気配がない。夕方にうーちゃんに警告されたのに、適当に流した自分に後悔する。
「うー、大丈夫かなぁ。大丈夫だよね?」
とにかく自分を落ち着かせるために部屋の中をグルグルと歩き回る。速さんはカッコいい大人だし、僕に手を出すようなことはしないだろう。でも、万が一ということがある。変なことをされないように自衛策を講じておくべきかもしれない。
「早く寝てくれればそれが一番なんどけど…。そうだ!」
確かお祖母ちゃんが食器棚の中に入れておいてくれたものの中にあれが入っていたはずだ。ゴソゴソと棚の中を漁るとやはりあった。
「これこれ!よし、急ごう!」
取り出したのはココアの袋。小さな小鍋を取り出して、その中にココアをスプーンで3杯ほど入れた。コンロの火をつけて、少しだけココアを煎った後、冷蔵庫から取り出したミルクを少しずつ垂らす。そして、スプーンでココアをよーく練り込んだ。すると、少しずつココアに照りが出てくる。全体にとろみが出てきたところで、残りのミルクを一気に入れて少し加熱。熱くなりすぎないところで火を止めて、大きめのマグカップに注ぎ入れた。
「よーし、完成!」
「何作ってるんだ、朝穂?」
「ひゃあ!!!」
作り終わってほっと息を吐いていると、後ろからぎゅうっと抱きしめられ、耳元で囁かれた。
「ちょ、速さん!ちゃんと洋服着てくださいよ!」
「シャワー浴びたばっかりだから熱いんだよ。んでそれ何?」
僕を抱きしめてきたのはもちろん速さんだ。しかも上半身裸のままで、髪は高く結えてお団子にしてある。その髪型が可愛らしくて見えてクスッと笑ってしまった。
「んー?朝穂はこんは髪型が好きなのか?ならいつもこんなふうにしてやるよ。っよいしょっと。」
「わ!!!ちょっと、速さん!」
速さんが僕の膝裏に腕を通してお姫様抱っこで持ち上げてくる。これはやばい、絶対危ない。それに速さんもニヤニヤ笑ってるし、絶対にいかがわしいことをしようとしている。
「あ、あの、速さん!僕、速さんのためにココア淹れたんです!良かったら寝る前に飲んでくれませんか?」
「あー?ココア?」
布団の方へ歩き出そうとした速さんが、コンロの横に置いてあるマグカップに視線を移す。
「は、はい。一生懸命作りました!…飲みませんか?」
しょんぼりとした顔で尋ねてみると、速さんは小さくため息をついてキッチンの方へ戻り、僕の身体を下ろしてくれた。そして、テーブルの前にある椅子に座って、早くもってこいとでも言うように僕を手招きする。
「あ、はい!どうぞって、うわぁ!」
「んっ…、おぉ、なんかうめーじゃねーか。」
「あ、おろしてくださいよ!」
いそいそと速さんにマグカップを持っていく。手渡したらそのまま自分だけ布団に戻ろうかと思っていたが、片手で身体を持ち上げられた、そのまま速さんの膝の上に乗せられてしまった。そしてよしよしと頭を撫でられる。まるで幼子のような扱いをされたのが恥ずかしくて、降りようとするものの、速さんの力はとんでもなく強く自分の腹に回った腕はびくともしない。
「は、速さん!」
「飲み終わるまで大人しくしてろ。…それともここでおっぱじめていいのか?」
「んやぁ!」
パジャマとして着ているTシャツの裾から速さんが手を入れてくる。そして僕の腹をツーッと指で撫でた。そして、指の背で臍の辺りを弄ってくる。
「んんっ!!」
「いい声出すなぁ、お前。保食神の気配がしたから揶揄うついでに来てみたけど、いい拾い物したわ。…ほら、もっと声出せよ。お前の声が、すげー、下腹に来る。」
「や、は、速さん!ぼ、僕未成年で!」
「そんなもん、神が気にすると思うのか?
神には性別も年齢も関係ねーよ。ただ気にいるか気に入らないかだ…。うん、美味かったぞ。ごちそーさん。」
「あ、お粗末さまでした。」
速さんがにかっと笑って褒めてくれたので、律儀に言葉を返してしまった。
「いつものココアと違ってなんかコクがあると言うかなんというか。まぁ、あれ料理とかしないから分かんねーけど、お前、料理上手だな。」
「べ、別にただのココアで!」
「ココアでも分かるぞ?俺のために、俺のことを考えて淹れてくれたんだろ?俺がよく眠れるようにって。相手のことを思って作る料理ってのが一番美味しいに決まったんだよ。」
「あっ…。」
父さんの言葉を思い出す。料理は相手を思ってするものだって。どんなに高級な食材を使ったとしても、相手のことを思った料理じゃなければ美味しいものはできない。本当の料理人じゃないって。
「うっ、うう、父さん、父さん!!!」
ボロボロと涙が溢れる。うちでは我慢していた。僕が泣いたら母さんが悲しむから。涙目だけは見せないようにって我慢してたんだ。でも辛かった。たった1人の父さん。たった1人の血縁者がいなくなってしまったのだ。僕はこの世界で一人ぼっちになった。
「父さん!嫌だよ、戻ってきてよ!僕1人は嫌だ!そばにいてよ!嫌だよおおー!」
「…。」
目の前の速さんの身体に縋ってしまう。何か言われるかと思ったけれど、速さんは何も言わずに僕のしたいようにさせてくれた。だから調子に乗ってその胸に頬を寄せさらに激しく泣いてしまう。
「1人は嫌だ、嫌だよ速さん…。」
「なんだよ、プロポーズか?考えといてやるよ、だから泣くな。」
速さんは、僕が落ち着くまで優しく抱きしめ続けてくれた。
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