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第四章 神様たちは積極的
第五話
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「はっはっは!相変わらず速の話は面白い!ほら、もっと飲むぞ、コップを寄越さんか。」
「じいさん、あんま飲みすぎると明日に響くて。こんぐらいにしとけ。」
「そうよ!明日は農作業があるっちゃから、遅くまで起きちゃって寝不足になったら倒れるが!」
お祖母ちゃんがお祖父ちゃんの椅子の横に置いてあった焼酎を取り上げて、台所の方へと持って行ってしまった。お祖父ちゃんは「持ってくなぁー。」と情けない声でお祖母ちゃんに訴えているが、全く聞き入れてもらえていない。
午後6時頃、チャイムが鳴って速さんが家にやってきた。食事に呼んでもらったからと、新鮮な刺身と地鶏の炭火焼きを持ってきてくれたみたいで、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは笑顔で喜んでいた。廊下の隅でその様子を見ていると、速さんがすれ違い様に僕の首筋をサラリと撫でた。
「風呂入ったのか?…いい匂いだ。」
「っ!ちょっと、勝手に触らないでください!」
真っ赤になって焦る僕を見て、速さんはケラケラと笑って客間へと行ってしまった。そんな僕を見て、うーちゃんは「あのエロ神め!我の神使を勝手な誘惑しよってえー!朝穂!騙されるでないぞ!あやつは誰から構わず褥に引き込む節操なしじゃ!」
「いくらなんでもそんなことはしないでしょ…。」
うーちゃんは変なこと言うなぁと思いながら速さんの後を追う。後ろから「嘘ではない!神の言うことを聞かんか!!!」と声が聞こえてくるが、ハイハイと生返事をしておいた。
それから酒盛りが始まり、すでに時間は午後10時を回っている。
「速ちゃん、今日はもう止まっていけばいいっちゃが。明日はお店は休みやっちゃろ?」
するとお祖母ちゃんが速さんに宿泊を勧め始めた。確かにもう真っ暗だし、これから店のある場所まで帰るとなると危険かもしれない。それに速さんはお酒も飲んでるから歩いて帰らないといけなし、より危険だ。
「それがいいんじゃない?こんな真っ暗な中帰るの危ないし。」
僕も一応同意しておく。お祖父ちゃんと速さんが酒盛りをしているテーブルの隅で炭酸飲料を飲みながらテレビを見ていたが、そろそろ眠くなってきた。速さんはこの客間で寝ることになるんだろうし、そろそろ離れに引き上げよう。僕以外の人間には見えないことをいいことに、僕の膝の上でしげしげとテレビを見ていたうーちゃんも眠そうに目を擦っている。
うーちゃんはお祖母ちゃんが作った煮しめやだし巻き卵、冷汁などをチョイチョイと触っていた。どういう仕組みなのかは分からないが、うーちゃんが食べ物に触れるとそれが少しだけ光る。そしてその光の翼がうーちゃんの身体の中に吸い込まれていくのだ。
「それじゃあ、僕はそろそろ寝るね。速さんまたね。」
そう言ってテーブルの前から立ち上がった時。
「なぁ、じいさん。俺、朝穂の部屋で寝てもいいけ?若いもの同士、色々話したいことがあるっちゃわ。俺も前は都会に住んでたから話しも合うとよ。」
「おー、いいよ!良かったな、朝穂!速はいい奴やから、ここの暮らしとかも色々教えてもらえばいいが!ばあちゃん、離れに布団は2組あったがね?」
「置いてあるよ!速ちゃん、お風呂はどうする?」
「入らしてもらってもいいとけ?」
「湯船はもう冷たいからシャワーだけ浴びてきないよ。朝穂、悪いけど速ちゃんのお布団敷いといてくれん?ごめんね。」
「え?ぼ、僕の部屋?」
まさか僕の部屋に来るとは思ってなくて焦った声を出してしまう。しかしお酒に酔ったお祖父ちゃんは気付いていないみたいで「儂もそろそろ寝るかなぁ。」と大あくびをしている。お祖母ちゃんは速さんのお風呂の準備のために洗面所に行ってしまった。
「朝穂。俺、風呂入ってくるから布団で大人しく待っとけよ?」
「ひゃあ!!!」
誰も見ていない時に耳元で低く囁かれる。慌てて耳を手で塞いでガードする。そんな僕を見て、速さんは雄臭く笑った。
「そんな顔するな。生娘みたいで堪らなくなる。」
「っ、か、顔を近づけないでください!」
速さんが腰を曲げて僕の方へ顔を寄せてくる。
速さんを止めてくれる頼みの綱であるはずのうーちゃんは僕の腕の中ですでに船を漕いでいるので全く役に立たない。
「ホントに美味そうだなぁ、お前。ちょっと味見させてくれよ。」
「いやぁ!」
腰を引き寄せられて、その腕の中に囚われそうになる。誰か助けてくれとぎゅっと目をつぶる。
「速ちゃーん、シャワーの準備出来たから早く入らんね!」
絶好のタイミングでお祖母ちゃんが戻ってきてくれた。速さんが身体を離してくれたので急いで距離を取った。そんな僕を見て、クスリと笑った後「すぐ戻ってくるから寝るんじゃねーぞ」と言って速さんは洗面所に向かった。
「じいさん、あんま飲みすぎると明日に響くて。こんぐらいにしとけ。」
「そうよ!明日は農作業があるっちゃから、遅くまで起きちゃって寝不足になったら倒れるが!」
お祖母ちゃんがお祖父ちゃんの椅子の横に置いてあった焼酎を取り上げて、台所の方へと持って行ってしまった。お祖父ちゃんは「持ってくなぁー。」と情けない声でお祖母ちゃんに訴えているが、全く聞き入れてもらえていない。
午後6時頃、チャイムが鳴って速さんが家にやってきた。食事に呼んでもらったからと、新鮮な刺身と地鶏の炭火焼きを持ってきてくれたみたいで、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは笑顔で喜んでいた。廊下の隅でその様子を見ていると、速さんがすれ違い様に僕の首筋をサラリと撫でた。
「風呂入ったのか?…いい匂いだ。」
「っ!ちょっと、勝手に触らないでください!」
真っ赤になって焦る僕を見て、速さんはケラケラと笑って客間へと行ってしまった。そんな僕を見て、うーちゃんは「あのエロ神め!我の神使を勝手な誘惑しよってえー!朝穂!騙されるでないぞ!あやつは誰から構わず褥に引き込む節操なしじゃ!」
「いくらなんでもそんなことはしないでしょ…。」
うーちゃんは変なこと言うなぁと思いながら速さんの後を追う。後ろから「嘘ではない!神の言うことを聞かんか!!!」と声が聞こえてくるが、ハイハイと生返事をしておいた。
それから酒盛りが始まり、すでに時間は午後10時を回っている。
「速ちゃん、今日はもう止まっていけばいいっちゃが。明日はお店は休みやっちゃろ?」
するとお祖母ちゃんが速さんに宿泊を勧め始めた。確かにもう真っ暗だし、これから店のある場所まで帰るとなると危険かもしれない。それに速さんはお酒も飲んでるから歩いて帰らないといけなし、より危険だ。
「それがいいんじゃない?こんな真っ暗な中帰るの危ないし。」
僕も一応同意しておく。お祖父ちゃんと速さんが酒盛りをしているテーブルの隅で炭酸飲料を飲みながらテレビを見ていたが、そろそろ眠くなってきた。速さんはこの客間で寝ることになるんだろうし、そろそろ離れに引き上げよう。僕以外の人間には見えないことをいいことに、僕の膝の上でしげしげとテレビを見ていたうーちゃんも眠そうに目を擦っている。
うーちゃんはお祖母ちゃんが作った煮しめやだし巻き卵、冷汁などをチョイチョイと触っていた。どういう仕組みなのかは分からないが、うーちゃんが食べ物に触れるとそれが少しだけ光る。そしてその光の翼がうーちゃんの身体の中に吸い込まれていくのだ。
「それじゃあ、僕はそろそろ寝るね。速さんまたね。」
そう言ってテーブルの前から立ち上がった時。
「なぁ、じいさん。俺、朝穂の部屋で寝てもいいけ?若いもの同士、色々話したいことがあるっちゃわ。俺も前は都会に住んでたから話しも合うとよ。」
「おー、いいよ!良かったな、朝穂!速はいい奴やから、ここの暮らしとかも色々教えてもらえばいいが!ばあちゃん、離れに布団は2組あったがね?」
「置いてあるよ!速ちゃん、お風呂はどうする?」
「入らしてもらってもいいとけ?」
「湯船はもう冷たいからシャワーだけ浴びてきないよ。朝穂、悪いけど速ちゃんのお布団敷いといてくれん?ごめんね。」
「え?ぼ、僕の部屋?」
まさか僕の部屋に来るとは思ってなくて焦った声を出してしまう。しかしお酒に酔ったお祖父ちゃんは気付いていないみたいで「儂もそろそろ寝るかなぁ。」と大あくびをしている。お祖母ちゃんは速さんのお風呂の準備のために洗面所に行ってしまった。
「朝穂。俺、風呂入ってくるから布団で大人しく待っとけよ?」
「ひゃあ!!!」
誰も見ていない時に耳元で低く囁かれる。慌てて耳を手で塞いでガードする。そんな僕を見て、速さんは雄臭く笑った。
「そんな顔するな。生娘みたいで堪らなくなる。」
「っ、か、顔を近づけないでください!」
速さんが腰を曲げて僕の方へ顔を寄せてくる。
速さんを止めてくれる頼みの綱であるはずのうーちゃんは僕の腕の中ですでに船を漕いでいるので全く役に立たない。
「ホントに美味そうだなぁ、お前。ちょっと味見させてくれよ。」
「いやぁ!」
腰を引き寄せられて、その腕の中に囚われそうになる。誰か助けてくれとぎゅっと目をつぶる。
「速ちゃーん、シャワーの準備出来たから早く入らんね!」
絶好のタイミングでお祖母ちゃんが戻ってきてくれた。速さんが身体を離してくれたので急いで距離を取った。そんな僕を見て、クスリと笑った後「すぐ戻ってくるから寝るんじゃねーぞ」と言って速さんは洗面所に向かった。
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