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第四章 神様たちは積極的

第三話

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「俺がなんだか分かる?」
「速さんですよね?」

 当たり前のことを聞かれたので、速さんの名前を返すとクスクスと笑われてしまった。

「そうそう。俺は速だね。佐野速だ。でもそれは本当の名前じゃあないんだよな。俺もあいつと同じ。神様だったんだよ。」
「速さんが神様?」

 保食神様を指差す速さんに聞き返すと、ゆっくりと頷いた。

「さっきからその餓鬼んちょが俺の名前をちょいちょい呼んでるな。須佐之男命って分かるか?」
「えっと……。確か悪いことをいっぱいして、天照大神に怒られた神様ですよね?」
「その通り!よく知ってるなぁ。偉いぞ。」
「うわぁ!」
 
 速さんが、僕の頭をグシャグシャと撫でてくる。優しさは感じるものの、あまりの力の強さに目が回ってしまう。頭がフラフラしてしまい、速さんの胸のなかにくたりと倒れてしまう。すると、ギュウッと強く抱き締められる。

「いろいろやり過ぎてしまってなぁ。天照がだーいぶ怒っちまってなぁ。「二度と帰ってくるな」って言われてなぁ。高天ヶ原を追い出されたんだよ。それで、出雲の国に降りて、八岐大蛇を退治した。んで、お嫁さんもらって今に至るって訳だ。」
「えっ!?速さんって結婚してるんですか?」

 驚いて聞いてみたが、確かにこんなに格好いいならお嫁さんがいても何もおかしくない。

「俺みたいな色男を女たちが放っておく訳がないだろう?結婚もしてるしら子供もいるさ。」

「ええっー!」

 速さんの子供なんて考えられない。すごく若く見えるけど、神様なら年齢なんて関係ないのだろう。

「んで面白おかしくやってたんだけどなぁ。そろそろ高天ヶ原に戻りたくなっきたんだよ。ただ、追放されたときに、神としての力を天照に取り上げられてしまっててなぁ。高天ヶ原に戻るための扉を開けることができん。神としての力を取り戻すために、お前の中に眠る力をもらう必要があるって訳だ。」
「それなら、保食神様みたいに速さんにご飯を作ってあげればいいってことですか?」

 それならまぁ問題ない。保食神様と速さんの二人ぶんの食事を作るのは少し大変かもしれないが、三食全てを作る訳じゃないだろうし。

 それぐらいなら構わないですと返そうとした時、速さんが僕の顎を手で持ち上げる。

「俺が食事なんかで満足度する訳がないだろう?高天ヶ原で悪行の限りを尽くした神だぞ?俺がお前から力をもらうための方法は食事なんてあまっちょろいもんじゃぁない。」
「じゃあ、一体……?」

「そんなのまぐわいに決まっておろう?」
「まぐわい?」

 聞いたこともない単語を出されて首をかしげる。速さんはなぜだがニヤニヤと笑っている。

「ほぉ。まぐわいが分からんか。うぶでよろしいことだ。大丈夫、俺が全てを教え込んでやろう。天にも昇る快感を知れば、もう俺からは離れられぬ。」

「だから破廉恥な真似はやめろといってるだろう、このエロ神が!」

 保食神様がしゃもじで速さんの頭をぶっ叩く。その反動で速さんの腕の力が弱まったので、急いで逃げ出した。まぐわいという言葉の意味は分からないが、保食神様の顔が真っ赤になってる以上、健全な行為ではないのだろう。今は速さんの側にいない方がいい気がしたのだ。

「ちっ。いいじゃねーかよぉ。とって食おうって訳じゃねーんだ。俺の神使になれば大事にしてやるぞ?体が蕩けるほど甘やかして、俺のことしか考えられなくなるようにしてやるぞ?」
「えっ、遠慮しておきます。」

 速さんの神使になったら大変なことになりそうだ。
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