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第四章 神様たちは積極的
第二話
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「確かに我は男神によって斬られた。女神に言われて見に来た男がいただろう?その男は我を見て事切れていると考えたらしいが、我はまだかろうじて生きていたのじゃ!」
「どこかの虫みたいにしぶといやつだな。」
「黙れい、須佐の!強靭な生命力と言ってほしいものじゃ!何せあの月読に斬られても生きておったのじゃからな!」
保食神様が大きく胸を張る。その様子を速さんが頬杖をついて、呆れ顔で眺めている。
「生きているんなら、どうして史実では死んでることになってるの?女神様に会いに行って、生きてますって伝えれば良かったのに!」
僕が話すと、保食神様は苦笑して首を横にふった。
「死ぬ寸前までいった我は、持っていた全ての力を使って自分の体を回復させたのじゃ。しかし、いくら我と言えども月読の刀傷を治すのは用意ではない。ほぼ全ての神としての力を使い果たしてしまったのじゃ。それに月読は女神に見放されたのは我のせいだと逆恨みをしていると聞いた。また殺される訳にもいかんと思い、我は姿を隠したのじゃ。力を無くした反動でこのように幼い姿へ変わってしまったこともあったからの。」
保食神様が椅子の上に立ってつま先立ちになると、くるりと優雅に一周する。
「我の本当の姿はこんなものではない。お前も見惚れてしまようにそれはそれは美しい女の姿なのだぞ?」
「そうだったかぁ?そこらへんの女と変わらん気がするがなぁ。」
「なにをぉ!」
速さんがいちいち茶々をいれるせいで、また喧嘩が始まろうとしていたので、慌てて間に割って入った。
「とっ、とりあえず保食神様の事情はわかりました。ただ、それって僕に関係あるの?」
「大有りじゃ!」
「ひいっ!」
保食神様がふわりも空中に浮かんで、僕の顔面ギリギリにまで寄ってくる。そのあまりの形相に悲鳴をあげてしまった。
「今言ったように、我は神としての力のほとんどを失っておる。我は血からを取り戻して、また神に戻りたいのだ!そのためにそなたの力が必要じゃ。」
「ぼ、僕はなにもできないよ?そんな神様の力を取り戻すための手伝いなんて、何をすればいいか検討もつかないよ!」
「さっきしてくれたではないか。」
「えっ……?」
さっきって何のことだ?僕が口をポカンと開けていると、保食神様がケラケラと笑い始めた。
「間抜けな顔をするでない。お前の手伝いとは料理を作ることじゃ。そなたもみたであろう?我が食事をするところを? 」
「え?あぁ、あのなんか本が出てくるやつ?」
「そうじゃ。我が力を取り戻すためには、神の力の欠片を持つ人間から力を分け与えてもらう必要がある。我は食べ物を司る神。それゆえに、人間に作ってもらった食べ物を食べることが、そなたの力をもらうためには効率のよいやり方なのじゃ!」
「えぇ……、そうなの?」
「そうじゃ!そして、力の伝達をより良くするためにはそなたが我の神使になるのが理想的じゃ。さぁ、話はわかったであろう?早く神使契約を……!」
「お前も勝手に話を進めるなよ?」
「ぎゃあ!」
突然、後ろから温かい腕が伸びてきて、抱き寄せられてしまう。後ろを振り向くと、ニヤリと笑った速さんが僕の体を覆うように抱き締めていた。
「まだこいつがお前のものになるとは決まってないだろ?俺にだってこいつをもらう権利がある。なんたって、俺が最初に目をつけたんだ。」
「嘘をつくな!こやつに力があることに、そなたは気づいてなかっただろう?」
「気づいてたさ。ただ、行動がお前よりも少し遅れたってだけだ。……しばらく黙っておれ、保食神の成れの果て。儂の話が済むまで、その騒がしい口を縫いつけとも良いのだぞ?」
「くっ!」
速さんの口調が古めかしいものに変わった。保食神様はそんな速さんを見て、「腐っても須佐か。」と悔しげに顔をしかめる。
「さぁ、次は俺の番かな?」
速さんが椅子に座り、僕は速さんのたくましい膝の上に乗せられた。横抱きのような形が恥ずかしいが、速さんが下ろしてくれる気配はない。僕は諦めてこのままの姿勢で話を聞くことにした。
「どこかの虫みたいにしぶといやつだな。」
「黙れい、須佐の!強靭な生命力と言ってほしいものじゃ!何せあの月読に斬られても生きておったのじゃからな!」
保食神様が大きく胸を張る。その様子を速さんが頬杖をついて、呆れ顔で眺めている。
「生きているんなら、どうして史実では死んでることになってるの?女神様に会いに行って、生きてますって伝えれば良かったのに!」
僕が話すと、保食神様は苦笑して首を横にふった。
「死ぬ寸前までいった我は、持っていた全ての力を使って自分の体を回復させたのじゃ。しかし、いくら我と言えども月読の刀傷を治すのは用意ではない。ほぼ全ての神としての力を使い果たしてしまったのじゃ。それに月読は女神に見放されたのは我のせいだと逆恨みをしていると聞いた。また殺される訳にもいかんと思い、我は姿を隠したのじゃ。力を無くした反動でこのように幼い姿へ変わってしまったこともあったからの。」
保食神様が椅子の上に立ってつま先立ちになると、くるりと優雅に一周する。
「我の本当の姿はこんなものではない。お前も見惚れてしまようにそれはそれは美しい女の姿なのだぞ?」
「そうだったかぁ?そこらへんの女と変わらん気がするがなぁ。」
「なにをぉ!」
速さんがいちいち茶々をいれるせいで、また喧嘩が始まろうとしていたので、慌てて間に割って入った。
「とっ、とりあえず保食神様の事情はわかりました。ただ、それって僕に関係あるの?」
「大有りじゃ!」
「ひいっ!」
保食神様がふわりも空中に浮かんで、僕の顔面ギリギリにまで寄ってくる。そのあまりの形相に悲鳴をあげてしまった。
「今言ったように、我は神としての力のほとんどを失っておる。我は血からを取り戻して、また神に戻りたいのだ!そのためにそなたの力が必要じゃ。」
「ぼ、僕はなにもできないよ?そんな神様の力を取り戻すための手伝いなんて、何をすればいいか検討もつかないよ!」
「さっきしてくれたではないか。」
「えっ……?」
さっきって何のことだ?僕が口をポカンと開けていると、保食神様がケラケラと笑い始めた。
「間抜けな顔をするでない。お前の手伝いとは料理を作ることじゃ。そなたもみたであろう?我が食事をするところを? 」
「え?あぁ、あのなんか本が出てくるやつ?」
「そうじゃ。我が力を取り戻すためには、神の力の欠片を持つ人間から力を分け与えてもらう必要がある。我は食べ物を司る神。それゆえに、人間に作ってもらった食べ物を食べることが、そなたの力をもらうためには効率のよいやり方なのじゃ!」
「えぇ……、そうなの?」
「そうじゃ!そして、力の伝達をより良くするためにはそなたが我の神使になるのが理想的じゃ。さぁ、話はわかったであろう?早く神使契約を……!」
「お前も勝手に話を進めるなよ?」
「ぎゃあ!」
突然、後ろから温かい腕が伸びてきて、抱き寄せられてしまう。後ろを振り向くと、ニヤリと笑った速さんが僕の体を覆うように抱き締めていた。
「まだこいつがお前のものになるとは決まってないだろ?俺にだってこいつをもらう権利がある。なんたって、俺が最初に目をつけたんだ。」
「嘘をつくな!こやつに力があることに、そなたは気づいてなかっただろう?」
「気づいてたさ。ただ、行動がお前よりも少し遅れたってだけだ。……しばらく黙っておれ、保食神の成れの果て。儂の話が済むまで、その騒がしい口を縫いつけとも良いのだぞ?」
「くっ!」
速さんの口調が古めかしいものに変わった。保食神様はそんな速さんを見て、「腐っても須佐か。」と悔しげに顔をしかめる。
「さぁ、次は俺の番かな?」
速さんが椅子に座り、僕は速さんのたくましい膝の上に乗せられた。横抱きのような形が恥ずかしいが、速さんが下ろしてくれる気配はない。僕は諦めてこのままの姿勢で話を聞くことにした。
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