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第三章 幼女とイケメン

第四話

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「そなた、本当にそんなものを食べるのか?」
「そうだよ。……そんな気持ち悪そうな顔してこっちみないでよ。」

 少女がお腹減ったとうるさいので、とりあえず一緒に母屋に行くことにした。お祖父ちゃんの言う通り、お祖母ちゃんも出掛けているみたいで、冷蔵庫にメモ書きがあり「好きなものを食べてね」と書いてあった。

 冷蔵庫を開けてみると、中には色んなものが入っていたが、どうせ僕には食べられないものがほとんどだ。牛乳だけを取り出してコップに注ぎ、食器棚の横にある籠の中からクッキーのような携帯食料を取り出して、椅子に腰かける。僕が包み紙を開けていると、彼女が椅子の上にたって、僕が食べているものを覗きこんできた後、顔を盛大に歪めて、自分の鼻を摘まんだ。

「臭い、臭すぎるぞ!どうしてわざわざそんなものを食べるんだ?何か作ればいいだろう?それとも作れないのか?」

「僕はこれでいいんだよ……。」

 最初から説明するのはめんどくさいし、こんな小さな子に理解してもらおうとも思わない。適当にあしらって、牛乳とともに、携帯食料を流し込む。

「ふぅ……。それで君は何を食べるの?」

 僕はお腹さえ膨れれば問題ない。自分の食事を早々に終わらせて、僕は女の子の方を振り返った。

「我か?もしや吾に何か作るつもりなのか?」
「いっ、いや!大したものとかは作れないよ。お腹減ってるっていうから、そんなに言うんだったら何か作ろうと!」

 女の子が、目をキラキラさせて身を乗り出してくる。なんだかものすごく期待されているような気がするが、僕はまともなものなんか作れない。

「よい!実によい心がけだぞ!いいだろう、我のために食物を作ることを許可しよう!さぁ、我のために美味なる料理を作るがいい!!」
「だから僕は!」
「ふふふ!楽しみじゃ!まともな食事なんて何百年、いや、何千年ぶりだ?どんなものを作るのか見ものじゃのお!」

(もういいや……。)

 こちらが気にしても彼女は全くといっていいほど、反応してくれない。それなら気にするだけ無駄だ。

(小さい子だし、甘いもののほうがいいのかな?)

 冷蔵庫から牛乳と卵を取り出す。棚の中から食パンを一枚用意する。ボウルを一個、シンク台の下から取り出して、牛乳を適当に注ぎ込む。あとは卵を割りいれて、砂糖も少し多目に入れておく。卵液を箸でといて、深めの皿に流し込む。そのなかに切れ目を入れた食パンを入れておく。

「なぁ、それはいったい何を食べるの作っておるのじゃ?それは何なのじゃ?うまいのか?」
「それは自分で食べてみたら分かるよ。さぁ、大人しく座ってて。」

 台所でうろうろされてしまうと危ない。女の子をテーブルに促して、半ば無理やり椅子に座らせた。そして、また冷蔵庫に向かい、中からバターを取り出す。フライパンも準備金して、さぁ焼こうとした時。


ピンポーン

「ん?なんだ?なんの音だ?」


 玄関のチャイムが鳴った。

(こんな時間にいったい誰だろう?)

 お祖父ちゃんもお祖母ちゃんもいなしい、応対できるのは自分しかいない。しょうがないので、驚いているオンナノコヲ落ち着かせて玄関へと向かう。

「開いてると思うので中に入っていいすよ。」

 
「へぇ、そりゃありがたいな?」
「へっ?」

 扉の向こうから低い艶のある声が聞こえてくる。しかも何だか聞き覚えのある声だ。


「よぉ、昨日ぶりだな?」
「なっ、なんで!」

 玄関の扉をゆっくり開けて中に入ってきたのは、速さんだった。

「いゃあ、店にいたらお前の爺ちゃんが来てなぁ。孫が一人で家にいるから時間があるなら一緒にいてやってくれってな。」

(お祖父ちゃんのバカ!)

 お祖父ちゃんのことは好きだが、この時ばかりは恨んでしまった。

「孫思いいい爺ちゃんじゃねーか。大事にしろよ?」
「は、はぁ。」
「さーて、それじゃお前のお祖父ちゃんかお祖母ちゃんが帰ってくるまで、俺がお前の傍にいてやるとするか。」

 速さんが家に上がろうとするので、慌ててそれを止める。

「あ、あの!僕は一人で大丈夫ですから!もう子供じゃないので留守番ぐらいひとりでできます!」
「あぁ?お前なんか俺に比べたらまだまだ子供だ。」
「本当に大丈夫ですから!お祖父ちゃんにも言っときます!」
「ダメだ。……それに俺もお前に用事がある。」
「えっ?っ!うわぁ!」
「ほーら、黙って捕まってろよ?」
「なっ!なっ!!」

 (なんで僕が男にお姫様抱っこなんかされないといけないんだ!!)

「はっ、離せよ!やめろ!」
「ほらほら、暴れるな。落ちるぞ?」
「こんなの落ちた方がマシだよ!!」

 「こら、小僧!何を騒いでおる!それに我の飯は……、ぎゃーーー!」

 僕がうるさくしていたのが気にさわったのか、女の子が廊下へと飛び出してきた。そして、お姫様抱っこされる僕と速さんを見て、顔を真っ青にしたかと思うと、台所へと引っ込んでしまった。

「やっぱりいたな?」

 速さんはぺろりと唇を舐めていた。
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