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第二章 うけもち様との出会い
第二話
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「いやぁ、てげ久しぶりやねぇか?朝穂、だいぶ大きくなったっちゃないとか?」
「そんなに変わらないよ。」
お祖父ちゃんとお婆ちゃんは方言が強くて、たまに何を言っているか分からなくなる時があるけど、僕はその温かい言葉の響きが好きだ。愛用している軽トラックで小学校まで迎えに来てくれたお祖父ちゃんは、前会った時より、少しだけ年を取っているように気がした。白い髪は年齢の割にふさふさで、年季の入った野球帽の中に押し込まれている。「仕事に行くときに楽やっちゃが」とお婆ちゃんに怒られるのも気にせず作業服ばかり着ている。父さんに似た顔には、にっこり笑うとたくさんの笑い皺が現れる。
「婆ちゃんもなぁ、朝穂に会うのてげ楽しみにしとったとよ。何もねぇところやっちゃけど、朝穂がいたいと思う時までいてくれていいちゃからね。」
「うん…、ありがとう。」
「いいとよ。」
こちらを見てにっこり笑ってくれるお祖父ちゃん。その顔が父さんにそっくりで、僕は少しだけ微笑んだ。
「うわわわ!お祖父ちゃん、ちょっと、大丈夫?」
「ははは!大丈夫やが!こんな道、この村やったら珍しくないが!」
「う、嘘でしょ!?」
祖父ちゃんが軽トラで進んでいく道は、車一つ分しか通れない、でこぼこの山道だった。左側を見ると切り立った崖になっていて、昔は父さんの車で通ったんだろうけど、体が大きくなるとより恐ろしさが増してしまう。
「祖父ちゃんは慣れてるから大丈夫よ、ほら!」
「お、お祖父ちゃん、前見てよ!」
お祖父ちゃんがケラケラと笑いながら僕の顔を覗き込んでくる。前を見ていないことが怖すぎて、大きな悲鳴を上げてしまった。そのな僕を見て、お祖父ちゃんは大爆笑していたのだった。
「朝穂ぉ、悪かったて。何でも好きなもん、買ってやるから。」
「…僕のこと子供扱いしないでくれない?」
帽子の上からぼりぼりと頭を掻きながら、情けない顔を見せるお祖父ちゃんを軽く睨み付ける。お祖父ちゃんはでこぼこ道をものすごい速さで走って、僕のお尻が何回も浮き上がっては椅子に打ち付けられた。僕が悲鳴を上げるのを見て、お祖父ちゃんはずっと笑い続けていたのだ。山道を進んでいくと、家屋が何戸かある開けた集落に着いて、そのひとつが小さなお店になっていた。店の前に無造作い車を止めたお祖父ちゃんが、拗ねた僕のご機嫌取りをし始めた。
「ほら、何がいい?なんでも買ってやるから。」
「っぷ!」
僕の顔を覗き込むお祖父ちゃんの眉がハの字になっていて、思わず吹き出してしまった。
「ここはな!ソフトクリームがうまいんじゃぁ、買ってやる。おーーい、速(はやみ)!おるかぁ?」
僕の機嫌が治ったことにホッとしたのか、お祖父ちゃんが大声を出して、店の奥の方へ声をかける。しかし、返事は返ってこない。
「おかしいな。この時間やったら、速が奥で寝てるはずやっちゃけど。」
おーいと声を出しながら、お祖父ちゃんが勝手に奥の方へと入って行ってしまう。僕には勝手に人のうちに入る勇気がないので、店のものを見回すことにした。木造の古い建物の入り口横にはショーケース型の冷凍庫に市販のアイスクリームがたっぷり入っている。中に入ると、地面は土間で、右側の壁は大きな棚になっていて、正方形型の棚に昔ながらの駄菓子が入っている。地面に置かれたテーブルには南瓜や薩摩芋、椎茸に長葱、人参など季節の野菜がこれでもかと盛られている。左側には生活用品や調味料が陳列されていて、衣料品もちらほら売られているようだ。店と居住スペースが一緒になっている建物らしく、ふすま一枚隔てた向こう側は畳の部屋になっているようだ。
「なんか田舎の店って感じ…。」
「あぁ?なんだお前?」
「え?」
お祖父ちゃんが帰ってくるのを、畳の部屋の前に置いてある椅子に座りながら待っていると、入口から人が入ってきた。黒のパーマがかかった長髪に、シルバーのピアスを耳に付け、ダメージジーンズにブーツ、筋肉の盛り上がりが分かる黒のTシャツにタバコをふかした男。店には全く似つかわしくない人が僕のことを睨み付けていた。
「そんなに変わらないよ。」
お祖父ちゃんとお婆ちゃんは方言が強くて、たまに何を言っているか分からなくなる時があるけど、僕はその温かい言葉の響きが好きだ。愛用している軽トラックで小学校まで迎えに来てくれたお祖父ちゃんは、前会った時より、少しだけ年を取っているように気がした。白い髪は年齢の割にふさふさで、年季の入った野球帽の中に押し込まれている。「仕事に行くときに楽やっちゃが」とお婆ちゃんに怒られるのも気にせず作業服ばかり着ている。父さんに似た顔には、にっこり笑うとたくさんの笑い皺が現れる。
「婆ちゃんもなぁ、朝穂に会うのてげ楽しみにしとったとよ。何もねぇところやっちゃけど、朝穂がいたいと思う時までいてくれていいちゃからね。」
「うん…、ありがとう。」
「いいとよ。」
こちらを見てにっこり笑ってくれるお祖父ちゃん。その顔が父さんにそっくりで、僕は少しだけ微笑んだ。
「うわわわ!お祖父ちゃん、ちょっと、大丈夫?」
「ははは!大丈夫やが!こんな道、この村やったら珍しくないが!」
「う、嘘でしょ!?」
祖父ちゃんが軽トラで進んでいく道は、車一つ分しか通れない、でこぼこの山道だった。左側を見ると切り立った崖になっていて、昔は父さんの車で通ったんだろうけど、体が大きくなるとより恐ろしさが増してしまう。
「祖父ちゃんは慣れてるから大丈夫よ、ほら!」
「お、お祖父ちゃん、前見てよ!」
お祖父ちゃんがケラケラと笑いながら僕の顔を覗き込んでくる。前を見ていないことが怖すぎて、大きな悲鳴を上げてしまった。そのな僕を見て、お祖父ちゃんは大爆笑していたのだった。
「朝穂ぉ、悪かったて。何でも好きなもん、買ってやるから。」
「…僕のこと子供扱いしないでくれない?」
帽子の上からぼりぼりと頭を掻きながら、情けない顔を見せるお祖父ちゃんを軽く睨み付ける。お祖父ちゃんはでこぼこ道をものすごい速さで走って、僕のお尻が何回も浮き上がっては椅子に打ち付けられた。僕が悲鳴を上げるのを見て、お祖父ちゃんはずっと笑い続けていたのだ。山道を進んでいくと、家屋が何戸かある開けた集落に着いて、そのひとつが小さなお店になっていた。店の前に無造作い車を止めたお祖父ちゃんが、拗ねた僕のご機嫌取りをし始めた。
「ほら、何がいい?なんでも買ってやるから。」
「っぷ!」
僕の顔を覗き込むお祖父ちゃんの眉がハの字になっていて、思わず吹き出してしまった。
「ここはな!ソフトクリームがうまいんじゃぁ、買ってやる。おーーい、速(はやみ)!おるかぁ?」
僕の機嫌が治ったことにホッとしたのか、お祖父ちゃんが大声を出して、店の奥の方へ声をかける。しかし、返事は返ってこない。
「おかしいな。この時間やったら、速が奥で寝てるはずやっちゃけど。」
おーいと声を出しながら、お祖父ちゃんが勝手に奥の方へと入って行ってしまう。僕には勝手に人のうちに入る勇気がないので、店のものを見回すことにした。木造の古い建物の入り口横にはショーケース型の冷凍庫に市販のアイスクリームがたっぷり入っている。中に入ると、地面は土間で、右側の壁は大きな棚になっていて、正方形型の棚に昔ながらの駄菓子が入っている。地面に置かれたテーブルには南瓜や薩摩芋、椎茸に長葱、人参など季節の野菜がこれでもかと盛られている。左側には生活用品や調味料が陳列されていて、衣料品もちらほら売られているようだ。店と居住スペースが一緒になっている建物らしく、ふすま一枚隔てた向こう側は畳の部屋になっているようだ。
「なんか田舎の店って感じ…。」
「あぁ?なんだお前?」
「え?」
お祖父ちゃんが帰ってくるのを、畳の部屋の前に置いてある椅子に座りながら待っていると、入口から人が入ってきた。黒のパーマがかかった長髪に、シルバーのピアスを耳に付け、ダメージジーンズにブーツ、筋肉の盛り上がりが分かる黒のTシャツにタバコをふかした男。店には全く似つかわしくない人が僕のことを睨み付けていた。
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