ひとりぼっちの僕が幼女神に癒され、エロ神様に溺愛される話

めろめろす

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第一章 家族

第二話

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「ただいまぁ。あ、お兄ちゃん!」
「おかえり、沙知。」
「お兄ちゃん!どうだったの?合格したの?」

ランドセルを背負ったまま、僕が座っているソファに飛び込んでくる沙知の体を受け止めてやる。

「実は…。」
「え!お、お兄ちゃん?」

わざと悲しい表情をしてやると、顔がさっと青くなる。

「あ、お、お兄ちゃん…。」
「うっそ!ちゃんと合格してるよ!今日は父さんがごちそう作るって!」
「もう!!お兄ちゃんの馬鹿!でもおめでとう!」

沙知が頬を膨らませた後、にっこりと笑って抱きついてくる。ありがとうと返事をして、「おやつあるぞ」と言うと「やったー!」と歓声を上げた。

「手洗いうがいしてくる!」

ドタバタと音を立てながら、二階へと登っていく沙知を見送り、冷蔵庫から父さんが用意してくれていたパンケーキの元を取り出す。

「お兄ちゃん、今日のおやつなぁに?」
「パンケーキだよ。最近好きなんだろ?」
「わーーい!」

廊下へと続く扉から顔だけ出して尋ねてくる沙知に返事をすると、またもや大きな歓声を上げて洗面所へと消えていく。その間に温めておいたフライパンにパンケーキの元を2枚分流し入れた。

「お父さんのパンケーキ大好き!」
「はいはい、座ってろ。」

横に来てフライパンを覗き込む沙知をリビングに追いやって、パンケーキを焼いている間に生クリームをハンドミキサーで泡立てる。今日は気分もいいし、フルーツも添えてやろう。シンクの下から缶詰を取り出して、ボウルに開ける。フライパンの蓋を開けて、ふつふつと気泡が出てきたところで、ひっくり返し、あと数分火を通す。沙知お気に入りの花柄のお皿と自分の分を用意して、ナイフとフォームも取り出しておいた。

「よし、完成。」

フライパンの中のパンケーキは予想通りふっくらと焼きあがっている。それをさらに移し替えて、もったりとした生クリームを上にたっぷり乗せて、イチゴとみかん、桃で飾り立てた。

「はい、朝穂特製パンケーキスペシャル!」
「わーー!すごい!お兄ちゃん、すごい!!」
「父さんのレシピなんだからおいしいに決まってるさ。」

リビングの大きなテーブルを前に行儀よく座っている沙知の前にお皿とナイフとフォークを置いてやると、目を輝かせてくれた。自分の分もその横に置く。

「召し上がれ。」
「いただきます!」

沙知が大きめに切り分けたパンケーキを口いっぱいに頬張る。

「んーー!おいひぃ!」
「ははっ。」

この蕩けるような笑顔だ。父さんが一番好きな表情は。料理が大好きでお店まで初めてしまった父さんが教えてくれた。

「俺は俺の料理を食べて幸せそうな顔をしてくれる人が幸せなんだ。料理はな、人を幸せにするんだ。」

父さんの言葉を思い出しながら、僕もパンケーキを頬張る。

「くぅ!おいしい!」

きっと僕も今、沙知と全く同じ顔をしているだろう。父さんの料理は最高だ。小さい頃から美味しいものを食べさせてくれたおかげで、僕は食事が大好きになってしまった。父さんからは「朝穂にはきっと料理の才能もある」と言われたが僕にはまだ分からない。たまにこうやって父さんに変わって沙知にお菓子を作るぐらい。それに、父さんが作った方が確実においしいのは分かってる。今日はそんな父さんが僕のためにごちそうを作ってくれるのだろう。思わず口角が緩む自分を自覚しながら、沙知の食事を眺めていた。


「朝穂!高校合格したんだってね!おめでとう!」
「ありがとう、母さん。」

午後6時ごろ、僕の合格を知った母さんが仕事を早めに切り上げて帰ってきてくれた。

「俺と同じ高校か。売店の焼きそばパンうまいぞ。」

高校2年生の満晴兄さんも陸上部の部活を休んで帰ってきてくれている。それにしても料理を作ってくれるはずの肝心の父さんが帰ってこない。

「ねぇ朝穂。お父さん、お昼過ぎに出て行ったのよね?」
スーツを脱ぎながら、母さんが聞いてくる。
「そうだよ。なんか店に忘れ物とってくるって言ってたから、すぐに帰ってくると思ってたんだけど…。」
「食材、買い込みまくってるんじゃないの?」

兄さんがテレビを見ながら話に入ってくる。
「確かにそうかも。朝穂の高校合格を祝おうとって張り切ってたから。」
「あはは!」

みんなで笑っていた時、固定電話が鳴った。
「あら、誰かしら。」
母さんが受話器を取る。
「もしもし?…えぇ、はぁ…。…えっ…?」
母さんの手から受話器が滑り落ち、ガシャンと不快な音を立てる。

「母さん?」
「嘘…、そんなはず。」

受話器からは男性が母さんを呼ぶ声がずっと響いていた。

「んっ…。」

ゆっくりと目を開けて、布団から出る。もう外は真っ暗だ。はめていたイヤホンもどこかにいってしまっている。いつの間にか眠ってしまっていた。もそもそとベッドから降りて、自分の部屋を出る。ゆっくりと階段を下りて、リビングに入った。

「あ、朝穂。寝てたの?もう、ご飯よ?」
「…。」

エプロンをつけた母さんがキッチンに立っている。返事はせずに、冷蔵庫の横に置いている棚から携帯食を取り出した。

「朝穂、そんなものじゃダメっていつも言ってるでしょ?今日は朝穂が好きなものを…。」
「いらないっていつも言ってるでしょ。」

料理の手を止めてこちらに寄ってくる母さんを制止する。母さんは僕の冷たい声音に固まってしまった。

「作ってもらったって僕は食べないよ。いつも言ってるのに、母さんが勝手に。」
「おい、いい加減にしろよ!」

リビングのソファに座ってテレビを見ていた兄さんが立ち上がって詰め寄ってくる。
「お前さ、母さんがどんな気持ちで料理してるのかわかんねーのかよ!法事にも顔出さねーし!餓鬼みたいなことしてんじゃねーよ!」
「っ!うるさいな!兄さんに関係ないだろ!」
「はぁ!お前がいつまでもそんなシケた顔してるからだろ!もう1年経つんだ、少しぐらい大人になって…。」

「うるさい!!もう1年?まだ1年なんだよ!あんたらに!お前らに何が分かるんだよ!そっか、所詮他人だもんな?あんたらに僕の気持ちなんか!」
「お前!!」

「やめて!!!」

僕の言葉を聞いて顔を真っ赤にした兄さんが殴りかかってくる。母さんが真っ青な表情で僕たちの間に入ってくる。

「お前、そんなこと本気で言ってんのかよ!」
「…そうだよ。母さんも、兄さんも、沙知も、所詮は血のつながってない他人だからね。」
「そんな風に思ってたの…?」

母さんが茫然とつぶやくが、僕は何も返せない。

「もうやめてよ、みんなぁ。」

リビングに入ってきた沙知がボロボロと涙をこぼしていた。

「っ!!」

僕はリビングを飛び出して、階段を駆け上がる。

「朝穂!」

母さんが僕を呼ぶ声が聞こえたが、聞こえないふりをして自分の部屋へと戻り、また布団の中へと潜り込んだ。

「この家の他人は…僕の方じゃないか。」

僕は2人の子持ちだった母さんと再婚した父さんの子供だ。2年前に結婚した父さんと母さん、義理の兄妹になった僕と兄さんと沙知。1年かけて少しずつ家族になろうとしていた矢先だった。父さんが店から帰る途中に交通事故にあった。信号無視をしてきた2トントラックに正面衝突された父さんの軽自動車は原型が分からないほど、ぐちゃぐちゃになっていた。事故現場には、大量の食材が散らばっていた。

父さんの葬式をした1年前から、僕は前に進めていない。いつまでもあの日に囚われている。そして、あの日から僕は、手料理を受け付けなくなってしまっていた。

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