ひとりぼっちの僕が幼女神に癒され、エロ神様に溺愛される話

めろめろす

文字の大きさ
上 下
1 / 22
第一章 家族

第一話

しおりを挟む
彼女に出会ったのは、僕が16歳。高校生の時だった。台所にある大きな食器棚。もう少しで天井に届くような高さにある一番上の引き戸から零れ落ちてきた古ぼけた飯櫃の中から飛び出してきた彼女。

「腹が…、減ったのじゃ。」
床に大の字になって暴れる彼女を見て固まってしまった僕は、これから彼女と永く永く付き合っていくことになるとは思ってもいなかったのだ。


僧侶の朗々とした念仏が家中に響いている。2階にいるにも関わらず聞こえてくるそれが耳障りで、ぎゅっと両手で耳を塞いで、布団の中へと潜り込んだ。あと数十分の辛抱だ。それだけ我慢すれば、この法事も終わる。枕元に置いていたスマートフォンを布団から手だけを出して、中へと引きこんだ。画面をタッチして、音楽アプリを立ち上げると、イヤホンをはめて、お気に入りの音楽に没頭する。

(早く終われよ。)

願うのはそれだけだ。


父親が交通事故で死んだのは丁度一年前。僕の第一志望だった高校の合格発表の日だった。午前中、「ネットで見られるから」と説明したのに、父さんが「こういうのは実際に身に行った方が楽しいだろ!」と言って無理やり連れ出された。多くの人が掲示板に群がっていて、その中に入るの嫌がっていた僕とは正反対に、「ほら、行くぞ!」と言ってグイグイ進んでいく父さん。

「あった!あったぞ、朝穂!やったー!」

僕の受験番号を見つけた時は、子供のように喜んでいて、まるで合格したのは父さんのようだった。

「今日の夜ご飯はごちそうだぞ。朝穂の大好物作るからな!」
「別にいいよ。お店って今日は定休日じゃないでしょ。」

父さんがやっている小料理店「穂まれ」は、周りを山に囲まれた盆地にある「都守町」(ともりちょう)の中心市街地の一角にある小さな店だ。従業員は雇わずに、1人で細々とやっているけれど、家庭料理のような心温まる料理に丁寧な接客、客からの要望にできるだけ応えるメニュー作りを売りに、そこそこ繁盛していた。
「おかげさまで休む日がないよ。」と笑う父さんが休みと決めているのは月曜日だけ。今日はかきいれ時の金曜日だ。

「何言ってるんだ!朝穂が高校に合格したんだぞ!お店なんか臨時休業だ!」
「大げさだなぁ…。」

元気に天に向かって拳を突き上げる父さんを見てクスクスと笑ってしまった。すると父さんが近寄ってきて、笑みを浮かべたまま、僕の頭を優しく撫でた。

「よく頑張ったな。毎日、夜遅くまで勉強してたしな。きっと楽しい高校生活になるぞ!可愛い彼女なんかもできるかもしれないな!っ、だめだ!まだ朝穂を嫁にやる気はないぞ!」
「誰が嫁だよ!」

父さんの手を振り払って、足音荒く、駐車場へと向かう。「待てよ~。」と情けない声を上げながら、父さんが僕の後を追いかけてきた。


「父さん、ちょっとお店に忘れ物したから取ってくるな。」

家に帰ると、父さんがバタバタと出かける準備をし始めた。

「あぁ、分かったよ。」
「1人で留守番できるのか?」
「何歳だと思ってんの…?」

もう高校生になる息子に言うことじゃないだろう。軽く睨み付けると「それもそうだな。」と苦笑いした。

「じゃあ行ってくる。もう少ししたら沙知が帰ってくるだろうから、おやつ出しといてくれ。」
「はいはい。行ってらっしゃい。」
「あぁ、行ってくる。」

玄関まで行って手を振ると、父さんがにっこり笑って手を振り返した。
まさか、それが父さんと話す最後の時だなんて思ってなかったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

処理中です...