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第一章
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「ちょっと、どいうことですか不破さん!」
隣に当たり前のように乗り込んできた不破さんに不満をぶつけるが、本人はいたって気にしていないような雰囲気で自分のスマートフォンをいじり始めた。
「すまん、千佳子。ちょっと仕事のメールが入ってしまった。すぐに返信するからちょっと待っててくれると助かる。」
「あっ、だ、大丈夫です。」
突然真顔になった不破さんの勢いに押されて無意識に頷いてしまっていた。自分で後悔するが、あんな整いすぎた顔面が近くにあれば、許してしまうのも仕方ないのではないだろうか。
とりあえず、不破さんの用事が終わるまでは静かにしていようと思い、ぼーっと外の風景を眺めることにした。最初はキラキラと輝くネオンを見ていただけだったのだが、どんどんと見覚えのない景色に変わってきて、タクシーが一体どこに向かっているのか不安になってきた。
「ちょっ、不破さん!このタクシー、どこに向かってるんですか!?私は家に帰りたくて。」
「すまない。どうしても今すぐ会社に戻らないと行けなくなった。悪いけどついてきてくれないか?用事はすぐに終わる。」
「そんなぁ。」
一刻も早く家に帰って、ベッドにダイブしたいところだが、仕事であればそちらの方が優先だろう。本当は怒ってもいいなかもしれないが、いかんせん社蓄根性が染み付いてしまっていて、仕事だと言われると強く出られなかったりする。
「早く終わらせてくださいね!」
視線をそらしながら言うと、不破さんは「ありがとう」とお礼を言ってくれた。
「こ、ここが会社なんですか?」
「そうだ。こじんまりしてるけどいい会社だぞ?」
(どこがこじんまりなのよ!!)
タクシーはビジネス街にあるビルの前で止まった。車を降りると、高層ビルとまではいかないものの、だいぶ高いガラス張りのビルが鎮座していた。
「さぁ、行こうか?」
「ひ、一人で歩けますから!」
上を向いてアホ面をさらしている私の腰に不破さんが手を回し、先を促そうとするのを慌てて止める。不破さんの体から距離をとり、先に言ってもらうように頼むと、小さくため息をついた後、「分かった。」と了承してくれた。
「あの、私は外で待ってますから。」
他の社員と鉢合わせしてしまうと若干気まずいからだ。不破さんの恋人とかだと勘違いされるのはたまったものじゃない。それにこんなオシャレな会社の中に入って、今の自分の状況と比較してしまうのもつらくなる。
しかし、不破さんは「さすがにこの時間だと誰もいないだろうから、気にしなくていい。」と言って譲らない。それに「ここに一人でいさせる方が怖い。」と私の手を取った。
「大丈夫。変なことはしないと約束するから。もし、千佳子がいやがるようなことをしたら、遠慮なく警察につきだしても構わない。」
不破さんの顔をじっと見る。しかし、その瞳に嘘は感じられなかった。まぁ何かあらば警備員たちが駆けつけてくるだらう。ここは乗ってみよう。正直に言うと、このオシャレな建物を 見て回りたい気もする。私が無言のままでコクリと頷くと、不破さんはにっこりと笑ってくれたのだった。
隣に当たり前のように乗り込んできた不破さんに不満をぶつけるが、本人はいたって気にしていないような雰囲気で自分のスマートフォンをいじり始めた。
「すまん、千佳子。ちょっと仕事のメールが入ってしまった。すぐに返信するからちょっと待っててくれると助かる。」
「あっ、だ、大丈夫です。」
突然真顔になった不破さんの勢いに押されて無意識に頷いてしまっていた。自分で後悔するが、あんな整いすぎた顔面が近くにあれば、許してしまうのも仕方ないのではないだろうか。
とりあえず、不破さんの用事が終わるまでは静かにしていようと思い、ぼーっと外の風景を眺めることにした。最初はキラキラと輝くネオンを見ていただけだったのだが、どんどんと見覚えのない景色に変わってきて、タクシーが一体どこに向かっているのか不安になってきた。
「ちょっ、不破さん!このタクシー、どこに向かってるんですか!?私は家に帰りたくて。」
「すまない。どうしても今すぐ会社に戻らないと行けなくなった。悪いけどついてきてくれないか?用事はすぐに終わる。」
「そんなぁ。」
一刻も早く家に帰って、ベッドにダイブしたいところだが、仕事であればそちらの方が優先だろう。本当は怒ってもいいなかもしれないが、いかんせん社蓄根性が染み付いてしまっていて、仕事だと言われると強く出られなかったりする。
「早く終わらせてくださいね!」
視線をそらしながら言うと、不破さんは「ありがとう」とお礼を言ってくれた。
「こ、ここが会社なんですか?」
「そうだ。こじんまりしてるけどいい会社だぞ?」
(どこがこじんまりなのよ!!)
タクシーはビジネス街にあるビルの前で止まった。車を降りると、高層ビルとまではいかないものの、だいぶ高いガラス張りのビルが鎮座していた。
「さぁ、行こうか?」
「ひ、一人で歩けますから!」
上を向いてアホ面をさらしている私の腰に不破さんが手を回し、先を促そうとするのを慌てて止める。不破さんの体から距離をとり、先に言ってもらうように頼むと、小さくため息をついた後、「分かった。」と了承してくれた。
「あの、私は外で待ってますから。」
他の社員と鉢合わせしてしまうと若干気まずいからだ。不破さんの恋人とかだと勘違いされるのはたまったものじゃない。それにこんなオシャレな会社の中に入って、今の自分の状況と比較してしまうのもつらくなる。
しかし、不破さんは「さすがにこの時間だと誰もいないだろうから、気にしなくていい。」と言って譲らない。それに「ここに一人でいさせる方が怖い。」と私の手を取った。
「大丈夫。変なことはしないと約束するから。もし、千佳子がいやがるようなことをしたら、遠慮なく警察につきだしても構わない。」
不破さんの顔をじっと見る。しかし、その瞳に嘘は感じられなかった。まぁ何かあらば警備員たちが駆けつけてくるだらう。ここは乗ってみよう。正直に言うと、このオシャレな建物を 見て回りたい気もする。私が無言のままでコクリと頷くと、不破さんはにっこりと笑ってくれたのだった。
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ちかちゃん、ファイト〜!
続き、楽しみです。
一気に読んでしまいました。押せ押せ不破さん、最高です。この、落ちるのは時間の問題だけど、何とか流されるまいと踏ん張るちかちゃんが可愛くて堪らんです。彼女にメロメロな不破さん視点、出逢った時に何を思ったのかとかいつか読んでみたいです。
夢中で読んでしまいました❗️
とても続きが気になります(≧▽≦)