こんな異世界望んでません!

アオネコさん

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第2章 世界の異変が大変編

即帰還する事が出来ませんでした

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 門から出て湖の方へ向かう俺達。
 やっぱりみんなの背が高くて周りが全然見えませんでした。
 なんなの?異世界人ってみんな背が高いの?羨ましい!

 ジェラシーに焼かれながら、俺は気配感知や魔力感知などで周りを確かめることにした。
 隊長!今のところ異常なしです!おお!そうかわかったぞ隊員!

 ……暇だ。


 湖までは一キロとか言ってたので、それまでは壁に囲まれて移動することになるけど、周りが見えないせいで何にもやることがない。つらい。

 そんな事を思っている時だった。

「ん?」

「……これは」

 俺とレイトさんが同時に声を出した。
 魔力感知により湖の方から大量の魔素が流れてきているのがわかったからだ。

「ここからは厳しくなるかもしれませんね」

 レイトさんの言葉にみんなが頷く。

 そして、そのまま進み続ける俺達だが、魔素の濃度は湖に近付くにつれてどんどん濃くなっていく。
 壁の隙間から周りを見てみると植物が枯れているのが見えた。
 ……え?これ本当に大丈夫なの?ここにいたら死ぬとかないよね?

 ビクビクしながら歩くこと数十分、ついに湖が――ってこれなんですか?

 カイルさん達の間を抜けて湖を見てみると驚く光景が広がっていた。

「ま、魔界やん……」

 魔界……そんな言葉がピッタリな光景が広がっていた。

「本来ならば底が見えるほどの美しい湖なのですが……」

 レイトさんが苦しそうにそう呟く。
 カイルさん達も言葉を失っていた。
 そりゃそうだよ、これもう底というかなにも見えませんよ?

 湖はもう生き物がいないだろうほど黒く染まっていた。
 これ元の世界のニュースで見た石油が海に流れてしまった光景そのまんまじゃん……。
 臭いはしないが、見ているだけで不快になるような光景ではある。

 周りの植物も枝だけになっている木や、捻じくれたり、まさに魔界の植物といわんばかりのものもある。
 ……やっぱ魔界ですねここ。

 な、なんか思ってたより状態が酷いんですけど。
 もっとこう……多少濁ってるレベルかと。
 全然違うじゃん……真っ黒じゃん……。

「我々は周りを警戒していますから、ユウト殿は湖の調査をお願いします。あと……あまり湖には触れないように注意してください」

「わかりました」

 レイトさんの言葉に頷き湖をまず鑑定する。
 鑑定さんお願いします!


 《ラジクロートの湖

 生息地 アルマデア大陸北部の森の奥

 備考 透き通るような美しい湖だが、魔力が含まれていることから森の魔物がよく来るのであまり冒険者は来ない。
 今現在は魔素汚染により毒の湖となり魔素を放出し続けている。

 称号からの追加補正
 無し》


 ふむふむ、つまり湖が今回の、周辺の魔素が濃くなった原因なのね……ていうか誰が見てもそう思いそうだけどね。

 でもこれ問題なのは、今回の魔素大量発生の原因はわかったけど重要な解決方法がわからないということ。
 魔素汚染の原因が何なのか突き止めないと。
 一応調査の一環として湖の液体(もう水と言えないし)を持っていきたいけど器が無い……あ、あるわ。

 俺は特殊空間からポーションを取り出した。
 つまりポーションの瓶に液体を入れるのだ!
 だがもちろん魔力ポーションとかじゃないよ?勿体ないしね?
 俺の特殊空間には使っても無くならないポーションがあるのです!その名も……!


 避妊ポーションです!!

 はい!お忘れかもしれませんが俺の特殊空間に入っている無駄なアイテムです!
 ……もっと前から使えばよかったかな?

 俺は避妊ポーションを特殊空間から取り出す。
 すると薄いピンク色のポーションが出てきた。
 それを俺は近くの土に中身を流す。
 え?環境汚染だって?もう魔界より悪くはならないでしょ!

 ちなみに媚薬ポーションにしなかったのは揮発性みたいなのがあると色々やばいと思ったからだ!

 ポーションの容器は細長いので手が液体に触れないように湖に入れる。
 容器が溶けることもなく液体は容器の中に入っていった。
 よし完了!

 俺は特殊空間にコソッと容器を入れる。

「何かわかりましたか?」

 レイトさんが話かけてきたので俺は説明をした。

「湖が魔素汚染って状態になっているみたいなんです。それで魔素が湖からあふれ出てるみたいです」

 それを聞いたみんなは深刻そうに考え込む。

「魔素汚染……なんで……」

 ファイさんがポツリとそう呟く。
 え?魔素汚染ってあまり起こらないの?

「そうなった原因はわかりましたか?」

 レイトさんにそう言われたが、わからないので首を振る。

「そうですか……。でも湖が原因なら、魔素の放出を抑える方法くらいあります」

 レイトさんがそう言うが、きっとそれは一時的なものなのだろう。
 原因が何とかならない限り、ずっと対策し続けるのは難しいと思う。
 なんとか出来ないかな……?魔素なんだから、この間の回復魔法とか?やってみよう。

 俺がウイルス魔法―もうこの名前でいいか―を使うと俺の周囲が眩しいくらいに光った。
 うわっ!!え!?眩しッ!!

「これは……!」

「うわっ……!」

 他のみんなも急な出来事にビックリしている。
 な、なんかすみません!!

 光は数秒光り続け、そして消えていった。
 見てみると俺の周囲だけ魔素が無くなったように思えた。
 ……おお?これはいけますか?

 だがしかし、すぐに魔素濃度が戻ってしまう。
 これはだめだ、魔素が多すぎる。
 爽やかヤテ君が言った通りだよ……。

 俺はみんなに謝りつつ湖を見たが、変わった様子はなかった。
 無傷だと!?こやつやりおる……!

 俺がそんなことを考えている時だった。

「……ッ!」

 ゾワッと背筋が凍るような感覚が走った。
 な……なに……?

 俺がそう思っていると気配感知と魔力感知に同時に反応があった。

「これは……!」

 レイトさんも気付いたらしく目を見開いている。

 そりゃそうだ。
 反応があったのは湖の向こう側で、数は二百以上。
 そしてその先頭の生き物の反応が、気配魔力共に俺が今まで感じたどの魔物よりも大きいからだ。

 これやばくね?こっちに気付いている感じだし……、もしかしてさっきの感覚は危険察知によるものかもしれない。

「ユウト様!魔石に魔力を!」

 レイトさんが慌てて俺に言ってくるので、俺も急いでクロードさんから受け取った石を取り出して魔力をこめる。
 すると石は少し光って黒くなってしまった。

「これですぐに応援が来るでしょうが……」

 そうレイトさんが言ったがその顔は暗く、まるで絶望に染まっているようだった。

「やべぇぞ、この気配は白狼だ……」

 俺はファイさんが呟いた言葉を聞き逃さなかった。
 白狼?それってこの間言ってた魔物のこと?え?
 じゃあ、あの先頭の気配は白狼ってこと?こっち来てるよね?確実に襲来してるよね?

 ……。

 ……おいぃぃぃ!!カール!!お前のせいだろ!!
 フラグ立てやがって!あの時口塞いでいればよかったわ!!

「ユウト君は俺が守るからね」

 カイルさんが俺に近付いてきて言ってくる。
 カイルさん俺も戦えますよ?過保護はいいですって。

「私は結界を張ります」

 レイトさんはそういうと手を前に出して、何か複雑な術式のようなものを構築していく。
 他のみんなも戦闘態勢になり顔は真剣そのものだ。

「防魔結界!」

 レイトさんがそう叫ぶと俺達の前方に薄い膜のようなものが出現した。
 これが結界?
 その薄い膜は大きくて全長は100メートル以上ある。
 凄いと思うけど、すぐに破られそうな気がする……。
 なんか失礼だけども。
 凄いとは思うんですよ?でも薄いし……。

「これで多少は時間が稼げるでしょう」

 レイトさんが少し息を切らしながら俺達に言ってくる。
 魔力ポーション飲みます?

「……見えたぞ」

 ファイさんが前を見ながらそう言ったので、俺達はすぐにその視線の先を追う。
 湖の左右のほとりから黒い影のようなものが近付いてくる。
 いや影ではない、あれは――。

「ウルフだ」

 そう、黒い波のように見えるのは大量の狼。
 ひぃぃ!!もう波じゃん!一匹一匹が見分けられないよ!?

 この数で対処出来るのか。そう思った時、気配感知に反応があった。
 しかも後方から。

 バッと後ろを向くと大勢の人がこちらに向かってくるのが見える。
 そしてその先頭は。

「クロードさん!」


 そして今、大規模な戦闘が始まる……。



 かもしれない。




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