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第2章 世界の異変が大変編

第1獣人発見

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 各々が自己紹介を始め、最後は俺の番になった。

「えーと、俺の名前はユウトって言います。湖の調査で同行しますが、少しは戦えますのでよろしくお願いします!」

 そう言ってペコッと頭を下げる。

「原因がわかれば解決することも出来るだろうし、俺達でユウトを守ってやろうぜ!」

 一人の冒険者がそう言うと、周りでそうだな!そうだよね!など同意の声があがる。
 え?ちょっと恥ずかしいんですけど!
 やめて!守られるより守りたいんだよ!女の子限定で!
 っていないやん!

「あ、ありがとうございます……?」

 一応お礼を言っていると隣のカイルさんが「俺がユウト君を守るよ」と言いながら距離を詰めてきた。
 ちょっ……狭いっ!

「わはは!ユウトはモテモテだな!」

 カールよ、それは勘違いだ。
 そして男にモテても全く嬉しくないから!
 というか、そんなことより大事なことがある。

 そ!れ!は!

「なぁ今回の討伐はこのメンバーで戦わないか?」

 そういうのはファイという名の冒険者で、薄茶色のような髪に黒目の男。
 だが重要なのはそこではない!
 重要なのは頭の上のものだ!!
 髪の色と同じ色で丸みを帯びたそれは!

 耳!!そうケモミミだ!

 キターー!!!男っていうのが残念だけど!!それでもケモミミ!
 俺はケモナーじゃないけどこれは興奮するぞ!!
 初めて見た!犬かな?柴犬系?というか柴犬ってこの世界にいるのかね?

 俺が不躾にも頭の上にピョコンと立つ耳を凝視しているのに気付いたのかファイがこちらを見る。

「ん?なんだ?」

 そう言ってニコッと笑うファイさんの口には長く尖った犬歯がある。
 おおぅ獣人だ……知ってるけども。
 これが女の子ならよかったのに……ちくしょう!

「い、いえなんでもありません」

 視線をずらしなんとか誤魔化そうとする……が、ファイさんは少し悩んだ素振りをすると疑問を投げかけてきた。

「……もしかして獣人を見たことないのか?」

 ……ええそうですとも。
 元の世界に獣人なんていなかったからね!
 返事に困りながらも正直に俺が答えようとするとカイルさんが、

「ユウト君は記憶喪失でね、出来ればユウト君に色々教えてあげてほしい」

 と言ってくれた。
 なんかどんどん記憶喪失って設定が広がっていってるような。
 まぁデメリットは俺の罪悪感が多くなるだけだからいいんだけどね……。
 いやよくないか。

「そうだったのか……記憶が戻るといいな!」

 と口々に言ってくるみんなに俺の罪悪感は増してゆく。
 うぅ……ごめんなさい!ひぃ!
 そんな顔で見ないでー!心が削れていくー!


 と、そんなこんなで色々とみんなで話をした結果、今回の集団討伐はこの十人でグループを作ることになった。
 多分他の馬車でも同じことをやっているらしい。

 作戦としては、戦いながら湖の近くに行き、俺が湖やその周りの調査をするというシンプルな感じになった。
 え?それって俺が中心の作戦なんじゃ……え?本当に?
 俺プレッシャーで潰れるよ?ペシャンコだよ?

「ユウト君は俺の自慢なんだよ。だからみんなも信じてやってほしい」

 ぎゃー!カイルさんまた自慢とか言ってるけど一体誰目線なの!!
 そしてそんな事言われたらもう失敗出来ないじゃん!もうやめて!俺のライフは0よ!

 その後、色々大丈夫だよとか守ってあげるよとか言われながら、俺は早く目的地についてほしいと切に願った。

 そしてしばらく進むと前の馬車が止まった。
 カールさんが言うには一時的にここで休憩するみたいだ。
 え?早くね?と思ったら夕食を食べたらまた進むみたい。
 それは俺としては助かる。
 なぜなら昼食を食べてないからお腹が空いているのだ。
 俺達の馬車も止まったので降りると他の馬車からも既に人が降りていて既に周りの警戒をしている。
 さすが冒険者。

 空を見てみるとすでに暗くなっていて、元の世界に比べて少し大きくて青っぽい三日月が浮いている。
 この世界に来てから月なんて初めて見たかも。
 まぁ、あれを月というのかわからんし、あの形の星なのかもわからないけどね。
 というか夜はいつも寝てたからこの時間に起きているのなんて元の世界以来かも。

「それじゃあ食べ物を馬車からおろすぞ!」

 カールがそう言って数人の冒険者と後ろの方の馬車に向かっていった。
 俺はそれを見ながらリョマ達を見に行った。
 リョマは馬よりも少し大きくらいでそこまで変わった……いや頭に角が生えてるわ。
 トナカイと馬を掛け合わせた感じになってる。

 俺が近付くとリョマはこちらをジッと見つめてきた。
 角が生えてる以外は茶色の体に黒い目で馬にそっくりなんだけどな……。
 そう考えていると、リョマは近付いてきて急にぺろっと頬を舐めてきた。

「うひ!?」

 俺が驚いている間にも二頭が俺の顔を舐めまわしていく。
 ぎゃぁぁ!ちょっ!生臭っ!ひぃ!ヨダレでべちゃべちゃになる!!

「ちょっ……まッ……ひぃ!」

 俺の静止の声も関係ないとばかりに舐め回される。
 な、なんかだんだん興奮してきてないですか?
 フゥフゥ言ってますよ?
 もしかして称号のせいですか!?このリョマも魔物だから効いちゃってるのか!?

 俺は逃げるようにその場から離れた。
 振り向いてみると二頭のリョマはまだこちらを向いて息を荒くしていた。
 ひぃ……恐ろしい……!
 もう魔物には無闇に近付かないようにしよう……。

「ユウト君夕食の準備が……って大丈夫か!?」

 ファイさんが俺を呼んできたのだが、俺の惨状(主に顔)に言葉が詰まったみたいだ。

「どっちかっていうと大丈夫じゃないです……」

 俺は夕食の前に顔を洗う羽目になった。
 夕食は冒険の定番っぽい干し肉と温かくて薄いスープだった。
 うぅ……硬いよ。
 ビーフジャーキーの方が美味しいよ……ってこの肉もブラウかい!

 冒険者全員がそれぞれ自分たちが乗っていた馬車の近くで食事をとってる。
 うわーまだ見られてるよ……。
 もっと離れて食べられないもんかね。
 なんて思いながら輪になって食事をとる。
 カールなぜお前が隣なんだ……。

「なぁ今回討伐する魔物ってウルフ系なんだろ?」

 みんなが食べ終わるのを見計らい、ふとファイさんが口を開いた。
 ウルフ系とは戦ったことはないけどやっぱり連携してきたり素早いんだろうか?そんなイメージあるけど。
 ファイさんの言葉に返したのはオレンジ色の髪と青色の目の……ジェスという冒険者だ。

「ウルフ系以外にもスライム系やゴブリン系などがいるな。だが一番厄介なのはヤツだよな……」

 ジェスさんのヤツという言葉に俺以外の全員がピクッと反応した。
 え?なに?なんなの?

「あの……ヤツって?」

 俺が聞くとジェスさんが説明してくれた。

「あの湖の周辺は白狼という魔物の縄張りでね……。本来なら手出しさえしなければ問題無いんだが、もしヤツが凶暴化なんてしてたら手がつけられないよ」

 ジェスさん曰く白狼はウルフ系の上位の魔物で、危険度はAランクになるという。
 ただ白狼は魔物ではあるが高い知性をもっていてテリトリーに侵入したからといって滅多に攻撃を仕掛けてこないそうだ。
 だが今回の魔物の凶暴化で白狼も影響受けていれば戦いは不利になるという。

「白狼という魔物は種族固有能力として【連携】というものを持っていて、連携している魔物の戦闘力が上がってしまう能力なんだよ」

 ふむ……つまり自分の配下全員のステータスを底上げ出来るわけね……はい強い!
 白狼自体も強いのに連携までされたらこっち完全不利じゃん!こっちはただの付け焼き刃の連携なのに!

「まぁ白狼ほどの魔物が凶暴化するなんて無いとは思うがな!」

 なんて言っているカールよ、それはフラグと言うものでは?少し黙ろうか?おん?

 俺が無言の殺気をカールに飛ばしていると他の冒険者達が馬車に乗り始めたので俺達も馬車に乗る。
 出来れば俺さっき座ってた……つまりリョマの近くには座りたくないんだけど……ああ……流れでどんどんと、あ……さっきと同じ場所ですかそうですか。

 リョマがこっちを向いていたので、前に集中してと言ったら素直に前を向いてくれたので良しとしよう。
 リョマが俺の言葉を素直に聞いたので周りのカイルさん達が驚いていたのも見なかったことにしよう。




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