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第3章 魔導帝国ハビリオン編

戦い終わって

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 皆さんおはようござい…。
いや、今は夕方かもしれない。
というかここどこよ?

 俺が目を覚ますと知らない天井が見えた。
周りはカーテンみたいなので仕切られてて、学校の保健室を思い出させる。
とりあえず起き上がろうとするが…。

「うッ…」

 ドサッと力無くベッドに倒れ込んでしまった。
か、体が…動かん。
というか物凄いダルいですはい。
肉体的にも精神的にも…。

 とりあえず目を覚ます前の事を思い出そうとする。
確か、アスキル達と一緒に強い男と戦って…それから龍脈に行って…。
賢者先生が頑張ってくれてアルバ達も頑張ってくれて…たのかわからないけど、とりあえず頑張ってくれて…そして…。

 そこまで考えて、恐怖で体が震えた。
そうだ…何かが龍脈の下にいたんだ。
思い出しただけで冷や汗が出て息が荒くなってしまう。
落ち着け!落ち着くんだ俺!
…ダメだ、体が震えてしまうぅ!

 気を逸らすために賢者先生に詳細報告を聞く事にする。
もちろんあの何か…については聞かないけど…。




 賢者先生の話を聞いていると部屋に誰かが入ってくる気配がする。
その誰かはカーテンをゆっくりと開けて俺と目を合わせた。
アスキルだった。

「…!ユウト…起きて…たのか」

 俺が起きていた事に驚いていたがそんなに驚く事なん?
そりゃカーテン開けたらいきなり目が合ったら怖いけどさ…。
というか何も声かけずに無言でカーテン開けるとかデリカシーの欠片も無いですわよ!
紳士としてありえないざます。

所持者マスターは3日間昏睡状態でした
アスキル・ジュザ・ハビリオンは毎日ここに所持者マスターの見舞いに来ていました》

 なぬ?見舞いとな?
というか3日間も寝てたの!?
どうりでダルいわけだ…いや、それだけが理由とは思えないけど。

「ユウト…!良かったッッ!」

「ぐほえっ」

 色々考えてるうちにアスキルに抱き着かれ自然にうめき声があがってしまう。
おい!俺は怪我人(多分)だぞ!丁寧に扱えよ!

「良かった…!本当に良かった…!」

 …泣くことないやん。
なんか無理に引き剥がせなくなったやん。
何も言えなくなったやん。
どうするん?これ…。



 しばらくしてから泣き止んだアスキルから色々話を聞いた。
俺が(正確には賢者先生が)龍脈を何とかしたと、ハティオさん達が理解して、その後、すぐに気絶した俺とアスキルそしてアスキル父…皇帝を抱えて部屋から脱出。
前もってウィアベルさんが保護していた高位の魔道士達を【静かなる海】の中から解放して準備していたらしい。
それから色々あってなんとか立て直す事に成功。
騒ぎもそこまで大きくならなかったそうだ。

 ただし、今回の戦いで糸目ニコニコ野郎もとい四天魔道士のレテスモスが裏切ったので自動的にその枠が空いてしまった。
さらにその戦いの中でウィアベルさんが重い怪我を負う事に。
今は療養中であり、もしかしたら復帰が難しいかもしれないとまで言われているらしい。
それを聞いた時は本当に驚いたよ…。
まさかあのウィアベルさんが…って。

 それにハビリオンを狙う者達がいるとわかった以上、無視は出来ないので色々な対策に皆が追われているらしい。
大規模結界の修繕もまだ完了していないのも問題みたい。
ただ、その事は混乱を招くとして国民には知らせておらず、色々誤魔化しているみたい。
大丈夫なのそれ…と、思わないでもないが気にしてもしょうがないので放置しておこう。


「もうずっと起きないかと思ってしんぱ…ごほっ!困ってたんだぞ!俺を助けといて寝ているなんて失礼なやつだ!」

 アスキルがなんか喚いていたので謝っておいた。
そりゃアスキルからしたら、いつの間にか戦いが終わってて、しかも俺が昏睡状態になっていたら混乱するだろうね…。
謝る必要は無いだろうけど、心配かけたみたいだし、一応謝ったのになぜかさらに喚かれる結果になった。
ツンデレか?ツンデレなのか?
ツンデレはいいんだけど、否定する度に叩かないで欲しいの。
体が叩かれる度に痛むんだ!
おい!誰か!このツンデレ暴力皇子を連れて行け!


 アスキルがハティオさん達に連絡を入れると出ていった後で再びスキル確認。
実は戦いの中で死の呪いにより一部の能力が制限されてしまったのだが、実は解除されている能力もあるのだ。
なぜかというと、スキルが進化して呪いが解除されたという単純な事。
新しい称号も手に入ったので後で確認してみよう。

 そう思いながらベッドから降りる。
さっきまでは意識しなかったけど、賢者先生が報告してくれたせいで自覚しちゃったんだよね…。
お腹が空いてることに。

 うん、めっちゃ空腹よ。
何か食べたくて仕方ない。
アスキルは何か食べ物でも持ってきてくれれば良かったのに!
見舞いって普通何か持ってくでしょ!
いやここ異世界だし、関係無いかもだけどさ…。


 体のダルさと空腹のダブルパンチでフラフラになりつつも歩き、何とか食堂に到着。
魔法使いと思われる親切な男の人が廊下をヨロヨロ歩いてた俺の事を発見して食堂に案内してくれなければ辿り着けなかったかもしれん。
感謝せねば。

 俺がいるのは城に近い場所に建っている建物の中らしい。
ウィアベルさんもここにいて療養中みたい。
というか、今もまだウィアベルさんが療養してるの信じられない。
あれだけのパワフルおじいちゃんが…と思ったら想像つかないもん。
あとで部屋に寄ってみようかな…。


 なんてそんな事を考えつつスープをちびちび飲んでいると周りがザワザワしだした。
何事かと思って顔を上げたらアスキルとハティオさんがこちらに歩いてきてた。
そりゃ皇子と四天魔道士が来たら驚くよね。

「勝手に部屋を出たら心配してしまうよ」

 アスキルが猫かぶりというかほぼ二重人格じみた事を言い始めた横でハティオさんはジッと俺を見ていて…。
そして一言。


「……良かった」


 なんか物凄い照れ臭くなったんだけど、なぜだ!
イケメンが照れながらそんな事言うのは卑怯やぞ!
男の俺でも照れてしまうやろ!
寡黙イケメンの感謝の言葉は危険度MAXなんやで!
色々精神的にやばいわ!
今の俺は精神的に弱ってるんだから!やめなさい!

「だからですね…って、聞いていますか?」
 
 ごめんアスキル。
全然聞いてなかった。





 俺は再び先程のベッドまで戻ってきた。
2人にまだ休む事が必要とか言われて。
まぁ自分でもそう思うから素直に従ったけども。

 ちなみに、フェル達には連絡を入れてくれてるみたいなので体調が良くなったら寮に行かないとなと思う。

 「…さて」


 俺は横になりながら賢者先生に問いかける。
龍脈にいた、得体の知れない何かの事を。
怖いけども、あれは知らないといけないとなぜか思う。
どうしてかはわからないけど知らなくちゃならない。
そんな気がする。

 それに個人的にも知っておかないといけないと思う。
天使の事や糸目ニコニコ野郎達の事と無関係じゃないと思う。
思い出すだけでも怖いけども知らなくちゃならない。

《詳細は不明です》

 しかし俺の望んだ結果は得られなかった。
賢者先生はあの時龍脈の調整に全力を注いでいたので解析までは出来なかったのだ。
それに、賢者先生によるとたとえ解析自体が可能だとしても解析は難しかっただろう…と。

《膨大なエネルギーを有している存在と考えます》


 結局、わかったことは少なかった。
でもこれから出来ることはある。

 まず封印を解除して、天使ラジエルを復活させる。
そこから色々情報を貰って作戦を立てていこう。
実はだけどラジエルの封印を解除出来る見込みが出来たのだ。
ラジエル様が龍脈の下の存在のことについて知ってるかどうかわからないけど、天使なのだから少しくらいは知ってるだろう。
まあその前にまだ色々やる事があるんだけどね…。

 今は休もうと俺はベッドに潜り込み目を閉じた。


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