花が咲かない世界に光と愛を

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3輪 「薔薇」

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 「この世界は花がとても綺麗に咲いていた美しいところだった。
そのため、住人たちは皆、花の名前を持っている。

王である「クフェア」は王妃の「コロニラ」王女の「クローバー」の3人で世界を守っているんだ。

住人たちは朝になると家から飛び出しお日さまの光を浴びて歌をうたう。
それは今日も美しい世界で生きている喜びの歌。

毎日が晴れているわけでもなく雨が降る日もあるんだよ。
花も草木も水がなければ生きていけないからね。

お日さまの光を浴びて、必要な水分もとって、この世界は本当に美しい場所だった。

あの日までは、、、。」

そこまで話すとアサガオは下を向いてしまい、拳を握りしめプルプルと震えてしまった。
伝わってくる。怒っているんだと。

「ここからは私が話しますわ。」

今度は向日葵が口を開いた。そして続きを話してくれた。

「平和だった世界に終わりを告げるように大きな雷が鳴ったの。
そう、ちょうど1ヶ月前です。

みんな驚いて外に出ましたら、大量の棘が降ってきて、、、。
棘っていうのはこれなんですけれど、、、」

向日葵が私に〝棘〟を見せてくれた。
見たことがある。

「これ、薔薇の棘よね?」

すると向日葵は頷き話を続けた。

「そう、薔薇の棘です。
ローズ姫の呪いだと住人たちは騒いでおります。」

「ローズ姫?ここの王はクフェアで妃はコロニラ、王女クローバーよね?あ、他の国のお姫様?」

「いいえ。ローズ姫はかつてこの世界の中心人物だったお姫様です。ですがもう100年前に亡くなられてます。」

さらに頭がごちゃごちゃになった。次から次へと出てくる花の名前に困惑しているのに昔のお姫様の話もでてきて理解が追いつかない。

100年も前に亡くなったローズ姫がなぜ今頃この世界に?

私が頭を抱えて悩んでいると、アサガオが口を開いた。

「ローズ姫は住人の手によって消されたんだ。
その昔、ここはとある貴族の支配下にあったらしくてね。両親を早くに亡くしたお姫様が1人でこの世界を築いていたらしい。
そのお姫様がローズ姫なんだ。」

「ローズ姫はどうして消されたの?」

「僕も聞いた話だから詳しいことはわからないんだけど棘が原因らしいんだ。」 

薔薇に棘があるのは私の住んでる世界では当たり前。それも含めて綺麗な花なのに、、、。
100年前に何があったんだろう。

「それで、今この世界では何がどうなっちゃってるの??」

すると向日葵が窓の方に指をさして
「外を見てください。」
と一言だけ放った。

言われるがまま外を見て私は絶望した。
花や草木が黒くなっている。
それだけじゃない。
空も真っ暗で月も星も太陽もなく、光そのものが見当たらないのだ。
住人たちの姿も見当たらない。
これはただ事じゃないとすぐにわかった。
それと同時に決心した。

「アサガオ、向日葵、私も花がいっぱい咲いてるこの世界が見てみたいよ。救おう、元の世界に戻そう。」

そう言うと向日葵は「ありがとう」と言いながら涙を流した。アサガオを見ると小さく頷いて微笑んでくれた。

大変なことが始まる予感はしているが、不思議と覚悟ができている。

ローズ姫とはどんな人物だったのか、100年前この世界で何があったのか、そしてどうして棘を降らせたのか。調べないといけないことは山ほどある、、、。

「冒険の始まりだね!」

そう言ったアサガオはどこか無邪気で子供っぽくとても可愛らしかった。




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