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:第27話 「二時間:3」
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:第27話 「二時間:3」
ベイル軍曹が指定した二時間が過ぎ去るまで、後、三十分を切った。
しかし、アランは未だに、自らの去就(きょしゅう)を決めきれずにいる。
ここで残らず、後退する道を選んでも、なんら恥ずべきことはない。
そのことは度々、示されている。
すでに引き上げることを選んだ仲間もいる。
アランの率直な本音としては、ここに残りたくはなかった。
自分は、確かに軍服に身を包んでいる。
王国が突然に外国から侵略を受けているという状況で、この衣装に身を包んでいる以上は戦わなければならないのだ、ということも分かっている。
だが、残れば命はない。
絶対に。
それは、あまりにも恐ろしいことだった。
人だけではなく、生物はみな、終焉というものを恐れている。
その機能が無ければきっと、悠久の歴史の中で種をつないでくることなどできなかっただろう。
危険が迫ればそれを避け、そして、同じような目に遭わないように学習し、仲間にもそれを伝える。
その蓄積があったからこそ、種が存続できたのだ。
味方が戦線を立て直す時間を確保するため。
仲間が撤退する支援をするため。
そういった理由があろうとも、自らの戦死を前提とした任務に加わるというのは、生物が保有する生存本能には反した行為だ。
そう分かっているのに、———その本能に、従うことができない。
さほど長く付き合ったわけではないとはいえ、互いに仲間として、同じ食事をし、共に訓練をして、並んで眠り、一緒に実戦まで経験した仲間を見捨てて、自分だけが生き延びるのか。
逃げるのか。
そう思うと、心の中が罪悪感でいっぱいになる。
そして、自分もここで戦うべきなのではないかという気持ちが、膨れがある。
だが、すぐにまた、死への、終わりへの恐怖で塗りつぶされる。
その、くり返しだ。
時間は確実に過ぎ去りつつあった。
もうすぐ、どんな形であれ、自分の意思表示をしなければならなくなる。
「わたし……、志願しようと、思います」
膝を抱えてうずくまり、堂々巡りの思考を続けていたアランの耳に、か細い、それなのにはっきりとした声が届く。
G・Jだった。
咄嗟に顔をあげると、セルヴァン上等兵とまず目が合う。
彼も唐突な言葉に驚いているらしい。
そして二人してジンジャー・ジョーンズ一等兵の方を見ると、———彼女は視線をうつむけたまま、唇をぎゅっと引き結んでいた。
「G・J。無理、するなよ? 」
気づかうように言ったのは、セルヴァン上等兵だ。
「ベイル軍曹も、パガーニ伍長も、散々、これは強制じゃない、って言っているじゃないか。
それに、君は、女の子だろう? 」
「そんなの、関係……、ありません」
返って来るのは、頑なな言葉だ。
「ルッカ伍長だって、女性です。だけど、残って、戦うって」
少し配慮の足りない言い方だったな、と、セルヴァン上等兵はしかめっ面をして黙り込む。
「G・J……。君は……、怖くは、ないのかい? 」
代わってそう問いかけたのは、アランだった。
信じられなかった。
彼にとってのG・Jのイメージというのは、ごく普通の、都会の女の子、というものだったからだ。
農村暮らしならば誰でも知っているような常識を知らなくて、きれい好きでおしゃれで、か弱くて少し線が細く、困っているところを見かけると放っておけなくなってしまう。
いい意味では可憐(かれん)で、悪い意味では頼りない。
それなのに、こんなにもはっきりと、絶対に生きては戻れない任務に志願するという。
彼女のような年相応な少女は、たとえ運良く生き延びることができても、辛い運命が待っている。
捕虜となった時に、敵が、どんなことをするのか。
よほど幸運な巡り合わせでも得られない限り、想像もしたくない仕打ちを受けるのが、戦場の常なのだ。
そのことを、———G・Jは、よくわかっている。
理解した上で、決めた様子だった。
「わたしの、故郷。……ここから、百キロくらい東に行ったところにあるんです」
その声は相変わらずか細いものだったが、やはり、はっきりと届く。
「お父さんと、お母さん。それに、妹が、います。お爺さんと、お婆さんも。
……最近、お爺さんが病気になって、入院しているんです。
だからきっと、急に避難しなきゃ、ってなっても、逃げられません。
それに、わたしの家も、学校も、好きなお店も、みんな、壊されちゃう。
そんなの……、そんなの、絶対に、嫌、なんです」
だからここに残って、戦う。
そういうことであるらしい。
確かに、ここでできるだけ踏みとどまれば、彼女の家族が避難に使える時間をより多く稼ぐことはできるだろう。
それは確かだし、残る兵士が一人でも多ければ多いほど、効果は高くなるはずだ。
だが、その程度でどうなるというのか。
本来であれば、昼間の戦闘でアランたちは全滅しているはずであった。
あの鋼鉄の怪物たちに蹂躙(じゅうりん)され、踏みつぶされて。
生き残ったのは滅多にない幸運なのだ。
それも、工兵軍曹のように捨て身で敵戦車を破壊した者がいて、敵が一時的に後退するという判断を下してくれたから。
主体的に手にすることができた結果ではなかった。
次に戦って、いったいどれほどのことができるというのか。
せいぜい数時間、敵の進軍を遅らせるくらいが精一杯だろう。
それになんの意味があるというのか。
もしかしたら、その間に味方が戦線を立て直し、防衛態勢を整えることができるかもしれない。
もしかしたら、稼いだ時のおかげで、家族が無事に逃げることができるかもしれない。
もしかしたら、故郷が戦火に焼かれることも、防ぐことができるかもしれない。
そんなことは薄弱な願望だ。
実現する可能性よりも、叶わない可能性の方が遥かに大きい。
たかが、[かもしれない]という程度のことに、命を賭けることができるのか?
自分自身で結果を確かめることもできないことに?
(そうじゃ、ない……)
ふと、気づく。
G・Jは決して、そんなわずかな希望を無邪気に信じているわけではないのだ、と。
彼女にとっての故郷。
そして家族は、たったのひとつ。
かけがえのないものだ。
その大切なものが、危険にさらされている。
ここで戦わないという選択をすれば、確実に失われる。
守るためには。
微(かす)かな可能性であろうとも、信じるしかないのだ。
———仮に、自分が彼女と同じ立場に立ったら、どうするのか。
懐かしい家。
そこに今も暮らしているはずの両親と、弟や妹たち。
そして、いつも賑やかで楽しい、動物たち。
戦火にさらされれば、その暮らしは失われる。
そこにある幸福も、笑顔も、思い出も、みんな。
生き延びることができたとしても家族は住み慣れた土地を追われ、家畜たちもいなくなる。
可能性を云々(うんぬん)する必要など、そもそもなかったのだ。
守るべきものを、絶対に失いたくないものを保つために、唯一の手段を取る。
ただ、それだけなのだ。
成功する確率が低い?
それが、なんだというのか。
やらなければ、ゼロ。
やれば、ほんのわずかでも望みがつながるかもしれない。
無と、有。
そこには、比べようもないほどに大きな差がある。
そう理解できた時、———アランは、もう、迷うことはなかった。
ベイル軍曹が指定した二時間が過ぎ去るまで、後、三十分を切った。
しかし、アランは未だに、自らの去就(きょしゅう)を決めきれずにいる。
ここで残らず、後退する道を選んでも、なんら恥ずべきことはない。
そのことは度々、示されている。
すでに引き上げることを選んだ仲間もいる。
アランの率直な本音としては、ここに残りたくはなかった。
自分は、確かに軍服に身を包んでいる。
王国が突然に外国から侵略を受けているという状況で、この衣装に身を包んでいる以上は戦わなければならないのだ、ということも分かっている。
だが、残れば命はない。
絶対に。
それは、あまりにも恐ろしいことだった。
人だけではなく、生物はみな、終焉というものを恐れている。
その機能が無ければきっと、悠久の歴史の中で種をつないでくることなどできなかっただろう。
危険が迫ればそれを避け、そして、同じような目に遭わないように学習し、仲間にもそれを伝える。
その蓄積があったからこそ、種が存続できたのだ。
味方が戦線を立て直す時間を確保するため。
仲間が撤退する支援をするため。
そういった理由があろうとも、自らの戦死を前提とした任務に加わるというのは、生物が保有する生存本能には反した行為だ。
そう分かっているのに、———その本能に、従うことができない。
さほど長く付き合ったわけではないとはいえ、互いに仲間として、同じ食事をし、共に訓練をして、並んで眠り、一緒に実戦まで経験した仲間を見捨てて、自分だけが生き延びるのか。
逃げるのか。
そう思うと、心の中が罪悪感でいっぱいになる。
そして、自分もここで戦うべきなのではないかという気持ちが、膨れがある。
だが、すぐにまた、死への、終わりへの恐怖で塗りつぶされる。
その、くり返しだ。
時間は確実に過ぎ去りつつあった。
もうすぐ、どんな形であれ、自分の意思表示をしなければならなくなる。
「わたし……、志願しようと、思います」
膝を抱えてうずくまり、堂々巡りの思考を続けていたアランの耳に、か細い、それなのにはっきりとした声が届く。
G・Jだった。
咄嗟に顔をあげると、セルヴァン上等兵とまず目が合う。
彼も唐突な言葉に驚いているらしい。
そして二人してジンジャー・ジョーンズ一等兵の方を見ると、———彼女は視線をうつむけたまま、唇をぎゅっと引き結んでいた。
「G・J。無理、するなよ? 」
気づかうように言ったのは、セルヴァン上等兵だ。
「ベイル軍曹も、パガーニ伍長も、散々、これは強制じゃない、って言っているじゃないか。
それに、君は、女の子だろう? 」
「そんなの、関係……、ありません」
返って来るのは、頑なな言葉だ。
「ルッカ伍長だって、女性です。だけど、残って、戦うって」
少し配慮の足りない言い方だったな、と、セルヴァン上等兵はしかめっ面をして黙り込む。
「G・J……。君は……、怖くは、ないのかい? 」
代わってそう問いかけたのは、アランだった。
信じられなかった。
彼にとってのG・Jのイメージというのは、ごく普通の、都会の女の子、というものだったからだ。
農村暮らしならば誰でも知っているような常識を知らなくて、きれい好きでおしゃれで、か弱くて少し線が細く、困っているところを見かけると放っておけなくなってしまう。
いい意味では可憐(かれん)で、悪い意味では頼りない。
それなのに、こんなにもはっきりと、絶対に生きては戻れない任務に志願するという。
彼女のような年相応な少女は、たとえ運良く生き延びることができても、辛い運命が待っている。
捕虜となった時に、敵が、どんなことをするのか。
よほど幸運な巡り合わせでも得られない限り、想像もしたくない仕打ちを受けるのが、戦場の常なのだ。
そのことを、———G・Jは、よくわかっている。
理解した上で、決めた様子だった。
「わたしの、故郷。……ここから、百キロくらい東に行ったところにあるんです」
その声は相変わらずか細いものだったが、やはり、はっきりと届く。
「お父さんと、お母さん。それに、妹が、います。お爺さんと、お婆さんも。
……最近、お爺さんが病気になって、入院しているんです。
だからきっと、急に避難しなきゃ、ってなっても、逃げられません。
それに、わたしの家も、学校も、好きなお店も、みんな、壊されちゃう。
そんなの……、そんなの、絶対に、嫌、なんです」
だからここに残って、戦う。
そういうことであるらしい。
確かに、ここでできるだけ踏みとどまれば、彼女の家族が避難に使える時間をより多く稼ぐことはできるだろう。
それは確かだし、残る兵士が一人でも多ければ多いほど、効果は高くなるはずだ。
だが、その程度でどうなるというのか。
本来であれば、昼間の戦闘でアランたちは全滅しているはずであった。
あの鋼鉄の怪物たちに蹂躙(じゅうりん)され、踏みつぶされて。
生き残ったのは滅多にない幸運なのだ。
それも、工兵軍曹のように捨て身で敵戦車を破壊した者がいて、敵が一時的に後退するという判断を下してくれたから。
主体的に手にすることができた結果ではなかった。
次に戦って、いったいどれほどのことができるというのか。
せいぜい数時間、敵の進軍を遅らせるくらいが精一杯だろう。
それになんの意味があるというのか。
もしかしたら、その間に味方が戦線を立て直し、防衛態勢を整えることができるかもしれない。
もしかしたら、稼いだ時のおかげで、家族が無事に逃げることができるかもしれない。
もしかしたら、故郷が戦火に焼かれることも、防ぐことができるかもしれない。
そんなことは薄弱な願望だ。
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たかが、[かもしれない]という程度のことに、命を賭けることができるのか?
自分自身で結果を確かめることもできないことに?
(そうじゃ、ない……)
ふと、気づく。
G・Jは決して、そんなわずかな希望を無邪気に信じているわけではないのだ、と。
彼女にとっての故郷。
そして家族は、たったのひとつ。
かけがえのないものだ。
その大切なものが、危険にさらされている。
ここで戦わないという選択をすれば、確実に失われる。
守るためには。
微(かす)かな可能性であろうとも、信じるしかないのだ。
———仮に、自分が彼女と同じ立場に立ったら、どうするのか。
懐かしい家。
そこに今も暮らしているはずの両親と、弟や妹たち。
そして、いつも賑やかで楽しい、動物たち。
戦火にさらされれば、その暮らしは失われる。
そこにある幸福も、笑顔も、思い出も、みんな。
生き延びることができたとしても家族は住み慣れた土地を追われ、家畜たちもいなくなる。
可能性を云々(うんぬん)する必要など、そもそもなかったのだ。
守るべきものを、絶対に失いたくないものを保つために、唯一の手段を取る。
ただ、それだけなのだ。
成功する確率が低い?
それが、なんだというのか。
やらなければ、ゼロ。
やれば、ほんのわずかでも望みがつながるかもしれない。
無と、有。
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