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:第6話 「対戦車猟兵:1」
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:第6話 「対戦車猟兵:1」
出動準備は、アランにとってどこか非現実的で、フワフワとした感覚のまま進んでいった。
戦争。
戦争だって……?
まるで、実感が湧いてこない。
それが、現実に起こっているのだということは、頭では理解できている。
でなければヴァレンティ中尉が出撃命令など伝えては来ないだろう。
冗談でこんなことを言う人では、絶対にない。
自分たちが実戦に投入される。
そんな日が来るなんて、夢にも思ったことはなかった。
イリス=オリヴィエ連合王国は、永世中立国だ。
国民皆兵で兵役の義務があろうとも、戦争に巻き込まれたことはこの数百年、一度もなかった。
この平和は、これからも続くのに違いない。
だって、これまでもずっと、そうであったのだから。
だから自分も、戦争に行くことなどなく、残りの兵役の期間を無事に終えて、故郷に帰ってまた、楽しい農場での暮らしを取り戻せるのだと、アランはそう信じていた。
なんの根拠もなかったのに。
そう信じていたのだ。
頭では分かっていても、まだ、現実を受け入れることができていない。
自分が軍服を身に着けているのはそういう決まりだから仕方なくそうしている、というだけのことであって、国家を守ろうとか、そんな気概はまるで持ったことがなかった。
それが、急に、戦争。
いきなり、実戦。
その事実を自分の運命として認めることは、今のアランにはまだ、できない。
戦う覚悟など、少しもできてはいなかったからだ。
それでも、出撃準備はどんどん、進んでいく。
なにしろ国家存亡の危機なのだ。
国境地帯に展開し警戒任務についていた友軍はすでに交戦状態に陥っており、一刻も早く援軍として駆けつけなければならなかった。
アランたちの分隊が所属している第二一七独立対戦車砲連隊とは、そもそも、そういう目的を持って設立された部隊であった。
王立陸軍は、主に五つの方面軍から成り立っている。
東部国境で帝国と対峙していた第一軍、西部国境で連邦と対峙していた第二軍、首都・フィエリテ市近郊を守備する第三軍、中部・フォルス市を守備する第四軍、そして南の、大陸から大きく突き出た半島の南端部にあるタシチェルヌ市と海を隔てたクレール市及び島嶼(とうしょ)を守る第五軍。
有事ともなれば真っ先に交戦状態となるはずの、国境と接する地域を守っている第一軍と第二軍にはそれぞれ、司令部が戦況に応じて隷下(れいか)の部隊の援軍や増強に差し向けることのできる独立部隊が付属させられている。
その内のひとつが、独立対戦車砲連隊だった。
主な任務は、ふたつ。
ひとつは、友軍の歩兵部隊の増強部隊として派遣され、前線で砲兵火力を発揮し、対歩兵・対戦車能力を提供すること。
もうひとつは、戦線を突破して戦車を先頭に突進してくる敵軍の先端部に迅速に展開し、その進撃を食い止めることであった。
そのためにこそ、三十七ミリという、陸戦で使用される火砲の中でも最小クラスのものが配備されている。
独立対戦車砲連隊には、とにかく、[間に合う]ということが期待されていた。
攻めにおいては、味方の歩兵部隊の進撃に追従して、小なりといえども常に砲兵火力を提供すること。
そして守りにおいては、必要な場所になるべく迅速に、そこが突破されてしまう前に展開し、迎撃を行うこと。
これらの目的のためにこそ、この部隊は存在している。
戦争では、きちんと舗装された道路ばかりを進んではいられない。
必要ならば野原を駆け巡り、時には泥濘を乗り越えなければならないこともある。
そんな時に、重い、大きな火砲ではついて行けない。
すぐに泥にはまり込んでしまうし、弾薬を運び込むのだって大変になる。
威力のある火砲と言えば重くかさばるものとなるのが当たり前なのだが、しかし、無暗に大きくしてしまうと結局、必要とされる戦場には展開できず、役には立たない。
戦闘の勝敗を決する重要な局面に間に合わないとなれば、それは、存在し無いのと一緒だ。
そこにいなければならない時に到着し、一弾をも放てないのであれば、たとえそれがどんなに強力な兵器であろうとも、無用の長物に過ぎなかった。
だから、軽くて小さなものが必要だった。
かといって、小さ過ぎて非力なものを持って行っても、無意味になってしまう。
たとえ前線への展開が戦機に間に合ったのだとしても、必要な威力を持っていなければやはり、役立たずでしかない。
なるべく小さく、軽く。
しかし、ある程度の火力は欲しい。
そうした葛藤の末に選ばれたのが、三十七ミリという口径の砲だった。
今よりも少しだけ昔、技術が未発達で牽引力(けんいんりょく)のすべて馬匹(ばひつ)ないしは人力に頼らねばならなかった時代に、問題なく持ち運ぶことができ、最悪、人間の手で押してでも歩兵部隊が戦っている最前線までたどり着ける機能を持たせ、それでいて戦力として員数に加えることのできる威力を発揮させるためには、このあたりのサイズがもっとも適していたのだ。
歩兵砲と呼ばれる、歩兵部隊と共に進退して直接的に火力を提供する兵器が前身となっている。
二十ミリとか、現在の口径よりももっと小さな砲が採用されることもあった歩兵砲に、機動力を残したまま、前の大戦、第三次大陸戦争で登場した新兵器である戦車に対応する能力を持たせたものが、対戦車砲として配備されている。
先の大戦で、塹壕戦によって膠着(こうちゃく)した戦況を打開するために開発され、投入された戦車は、技術的に不完全なものではあっても、重大な脅威であった。
歩兵が装備している小銃などでは歯が立たず、大砲がなければ撃破が困難な防御力に守られながら、榴弾を発射し陣地ごと兵士たちを吹き飛ばし、あるいは機関銃の掃射を行って来るのだ。
内燃機関が蠢(うごめ)く重低音と、鋼鉄製のキャタピラをキュラキュラと軋(きし)ませながら、のそのそと、だが確実に接近して来る戦車は、歩兵たちにとっては恐怖の的であった。
開発時に期待された通りの成果をあげることはできなかったものの、第三次大陸戦争でその有効性を実証した戦車は各国で相次いで採用され、この二十年と少しの間にさらなる進化を遂げている。
アランたちが伝え聞いている話だと、マグナ・テラ大陸の屋根、一万メートル級の山々が連なるアルシュ山脈の向こう側、北の連邦と帝国の主戦線では、多種多様な戦車が数多く投入され、激しい戦闘をくり広げているのだという。
こうした脅威に対抗する術を持たなければ、戦争に負けてしまう。
他国からの侵略を未然に防止するための抑止力も発揮することができない。
だから、鋼鉄の装甲に守られた戦車を撃ち抜く歩兵の守護神として、対戦車砲が開発された。
そして、この小さな火砲を使いこなす対戦車猟兵たちは、様々ある兵科の中でも、[もっとも勇敢な兵士たち]とも言われている。
それは、弾雨の飛び交う最前線にまで進出し、一千メートル以下の距離で、ほぼ生身のまま敵戦車と対峙(たいじ)しなければならないからだった。
出動準備は、アランにとってどこか非現実的で、フワフワとした感覚のまま進んでいった。
戦争。
戦争だって……?
まるで、実感が湧いてこない。
それが、現実に起こっているのだということは、頭では理解できている。
でなければヴァレンティ中尉が出撃命令など伝えては来ないだろう。
冗談でこんなことを言う人では、絶対にない。
自分たちが実戦に投入される。
そんな日が来るなんて、夢にも思ったことはなかった。
イリス=オリヴィエ連合王国は、永世中立国だ。
国民皆兵で兵役の義務があろうとも、戦争に巻き込まれたことはこの数百年、一度もなかった。
この平和は、これからも続くのに違いない。
だって、これまでもずっと、そうであったのだから。
だから自分も、戦争に行くことなどなく、残りの兵役の期間を無事に終えて、故郷に帰ってまた、楽しい農場での暮らしを取り戻せるのだと、アランはそう信じていた。
なんの根拠もなかったのに。
そう信じていたのだ。
頭では分かっていても、まだ、現実を受け入れることができていない。
自分が軍服を身に着けているのはそういう決まりだから仕方なくそうしている、というだけのことであって、国家を守ろうとか、そんな気概はまるで持ったことがなかった。
それが、急に、戦争。
いきなり、実戦。
その事実を自分の運命として認めることは、今のアランにはまだ、できない。
戦う覚悟など、少しもできてはいなかったからだ。
それでも、出撃準備はどんどん、進んでいく。
なにしろ国家存亡の危機なのだ。
国境地帯に展開し警戒任務についていた友軍はすでに交戦状態に陥っており、一刻も早く援軍として駆けつけなければならなかった。
アランたちの分隊が所属している第二一七独立対戦車砲連隊とは、そもそも、そういう目的を持って設立された部隊であった。
王立陸軍は、主に五つの方面軍から成り立っている。
東部国境で帝国と対峙していた第一軍、西部国境で連邦と対峙していた第二軍、首都・フィエリテ市近郊を守備する第三軍、中部・フォルス市を守備する第四軍、そして南の、大陸から大きく突き出た半島の南端部にあるタシチェルヌ市と海を隔てたクレール市及び島嶼(とうしょ)を守る第五軍。
有事ともなれば真っ先に交戦状態となるはずの、国境と接する地域を守っている第一軍と第二軍にはそれぞれ、司令部が戦況に応じて隷下(れいか)の部隊の援軍や増強に差し向けることのできる独立部隊が付属させられている。
その内のひとつが、独立対戦車砲連隊だった。
主な任務は、ふたつ。
ひとつは、友軍の歩兵部隊の増強部隊として派遣され、前線で砲兵火力を発揮し、対歩兵・対戦車能力を提供すること。
もうひとつは、戦線を突破して戦車を先頭に突進してくる敵軍の先端部に迅速に展開し、その進撃を食い止めることであった。
そのためにこそ、三十七ミリという、陸戦で使用される火砲の中でも最小クラスのものが配備されている。
独立対戦車砲連隊には、とにかく、[間に合う]ということが期待されていた。
攻めにおいては、味方の歩兵部隊の進撃に追従して、小なりといえども常に砲兵火力を提供すること。
そして守りにおいては、必要な場所になるべく迅速に、そこが突破されてしまう前に展開し、迎撃を行うこと。
これらの目的のためにこそ、この部隊は存在している。
戦争では、きちんと舗装された道路ばかりを進んではいられない。
必要ならば野原を駆け巡り、時には泥濘を乗り越えなければならないこともある。
そんな時に、重い、大きな火砲ではついて行けない。
すぐに泥にはまり込んでしまうし、弾薬を運び込むのだって大変になる。
威力のある火砲と言えば重くかさばるものとなるのが当たり前なのだが、しかし、無暗に大きくしてしまうと結局、必要とされる戦場には展開できず、役には立たない。
戦闘の勝敗を決する重要な局面に間に合わないとなれば、それは、存在し無いのと一緒だ。
そこにいなければならない時に到着し、一弾をも放てないのであれば、たとえそれがどんなに強力な兵器であろうとも、無用の長物に過ぎなかった。
だから、軽くて小さなものが必要だった。
かといって、小さ過ぎて非力なものを持って行っても、無意味になってしまう。
たとえ前線への展開が戦機に間に合ったのだとしても、必要な威力を持っていなければやはり、役立たずでしかない。
なるべく小さく、軽く。
しかし、ある程度の火力は欲しい。
そうした葛藤の末に選ばれたのが、三十七ミリという口径の砲だった。
今よりも少しだけ昔、技術が未発達で牽引力(けんいんりょく)のすべて馬匹(ばひつ)ないしは人力に頼らねばならなかった時代に、問題なく持ち運ぶことができ、最悪、人間の手で押してでも歩兵部隊が戦っている最前線までたどり着ける機能を持たせ、それでいて戦力として員数に加えることのできる威力を発揮させるためには、このあたりのサイズがもっとも適していたのだ。
歩兵砲と呼ばれる、歩兵部隊と共に進退して直接的に火力を提供する兵器が前身となっている。
二十ミリとか、現在の口径よりももっと小さな砲が採用されることもあった歩兵砲に、機動力を残したまま、前の大戦、第三次大陸戦争で登場した新兵器である戦車に対応する能力を持たせたものが、対戦車砲として配備されている。
先の大戦で、塹壕戦によって膠着(こうちゃく)した戦況を打開するために開発され、投入された戦車は、技術的に不完全なものではあっても、重大な脅威であった。
歩兵が装備している小銃などでは歯が立たず、大砲がなければ撃破が困難な防御力に守られながら、榴弾を発射し陣地ごと兵士たちを吹き飛ばし、あるいは機関銃の掃射を行って来るのだ。
内燃機関が蠢(うごめ)く重低音と、鋼鉄製のキャタピラをキュラキュラと軋(きし)ませながら、のそのそと、だが確実に接近して来る戦車は、歩兵たちにとっては恐怖の的であった。
開発時に期待された通りの成果をあげることはできなかったものの、第三次大陸戦争でその有効性を実証した戦車は各国で相次いで採用され、この二十年と少しの間にさらなる進化を遂げている。
アランたちが伝え聞いている話だと、マグナ・テラ大陸の屋根、一万メートル級の山々が連なるアルシュ山脈の向こう側、北の連邦と帝国の主戦線では、多種多様な戦車が数多く投入され、激しい戦闘をくり広げているのだという。
こうした脅威に対抗する術を持たなければ、戦争に負けてしまう。
他国からの侵略を未然に防止するための抑止力も発揮することができない。
だから、鋼鉄の装甲に守られた戦車を撃ち抜く歩兵の守護神として、対戦車砲が開発された。
そして、この小さな火砲を使いこなす対戦車猟兵たちは、様々ある兵科の中でも、[もっとも勇敢な兵士たち]とも言われている。
それは、弾雨の飛び交う最前線にまで進出し、一千メートル以下の距離で、ほぼ生身のまま敵戦車と対峙(たいじ)しなければならないからだった。
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