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第十一章:「海の向こうから」
・11-10 第174話:「歓迎:3」
しおりを挟む 夜明け前、ルークはリーンを抱き抱え、魔女の城から出て、『魔女の森』の外に向かった。
あの後、魔女王ソフィアによって『移植転移』をされたリーンの体調が悪くなり、熱を出して動けなくなったからだ。
ソフィアいわく、体内の調整が出来ておらず、身体に馴染むまでしばらくかかるそうだ。
だが、リーンをこのまま『魔女の森』に置いておくわけにいかず、森が閉じてしまう前に、軽量魔法を使ってリーンを抱き上げ、ソフィアが『魔女の抜け道』を作ってくれて、出入口付近まで連れてきてくれた。
「…よろしくね」
ソフィアがルークに声をかけてきた。
ルークは眠るリーンを抱えたまま、足を止め、ソフィアの方に振り向いた。
「…貴女は、ソレでいいのか?」
気になっていたことを聞く。
「…うん?…子供の事?」
ソフィアは微笑んで言う。
「リーンの事、信用してるから…。それに、私が育てるより、リーンの元で自由に選ばせてあげたいの」
子供の未来を…か…。
彼女にも何か思うことが有るのだろう。
リーンと同じ様に長寿で、いつから魔女王として君臨しているのか分からないが、彼女には選ぶ事が出来なかったのかもしれない…。
「…俺の元に来ても、王族として逃れられない事も有るぞ」
「…それでも…」
ソフィアは苦笑いしている。
それでも、彼女の体内から外に出れず、命が消えるより…リーンの子供として、産まれてくることを望んでいる…か…。
ルークはため息を付き、リーンを抱え直すとソフィアに背を向けて『魔女の森』を抜け、バラのアーチをくぐり、小川に掛かる橋を渡った。
背中に視線を感じたが、ルークは振り向かず真っ直ぐに、アオとカズキが待つ馬車へと急いだ。
森を抜け街道に近付くと、見慣れた馬車が道を塞ぐように停まっていた。
見慣れた、ルークの屋敷の馬車だ。
ルークが馬車に近付くと、こちらに気がついたガズキが馬車から降りてきた。
「…ルーク様!…リーンさん…」
「ルーク様!」
アオも馬車から顔を覗かせ、降りてくる。
「リーンさんはどうしたんですか?」
「詳しい話は移動しながらだ」
アオはすぐさま馬車内の座席に、毛布を何枚も敷いて横たわる場所を作り、丸めた毛布を枕代わりにすると、そこへルークが、眠るリーンをそっと横たえる。
ガズキは準備しかけた朝食の食材を一旦終い、移動の準備を始め、日が昇り、辺りが明るくなって来る頃には、街道から馬車を動かし、少し先にある馬車の休憩所へむかった。
休憩所には小さな小川が有り、馬車を並んで停車することができ、誰でも使用できるので、馬に水や食事を与えたり、自分達の食事も出きる場所だ。
そこへ馬車を停車させ、ガズキは馬に水と食事を与え、アオが馬車の外でお湯を沸かして、朝食の準備を始めた。
リーンは横たわったまま…。
ルークはそんなリーンの髪を撫でる。
朝食の準備が出きると、馬車の中に三人顔を見合わせて、朝食を食べながら、ルークが『魔女の森』であったことを話し始めた。
アオもガズキも神妙な顔をして、頭を抱えながら、取りあえず口に食事を運んでいた。
「ルーク様はそれで良いんですか?」
『魔女の森』での事が話し終わると、アオが聞いてくる。
まあ、言われると思った。
「…リーンの子供だろ。俺にはソレだけで良い…」
誰が何て言おうと、リーンの全てを守ると決めたのだ。
例えソレが、魔女王との子供だとしても…。
「…ルーク様がそれで良いのなら、俺たちは全力で見守りますよ」
アオとガズキは顔を見合せ頷いて、そう言って微笑んだ。
良い仲間を持って俺は幸せだな…。
ルークは眠るリーンをチラリと見て、残りの朝食を食べ始めた。
あの後、魔女王ソフィアによって『移植転移』をされたリーンの体調が悪くなり、熱を出して動けなくなったからだ。
ソフィアいわく、体内の調整が出来ておらず、身体に馴染むまでしばらくかかるそうだ。
だが、リーンをこのまま『魔女の森』に置いておくわけにいかず、森が閉じてしまう前に、軽量魔法を使ってリーンを抱き上げ、ソフィアが『魔女の抜け道』を作ってくれて、出入口付近まで連れてきてくれた。
「…よろしくね」
ソフィアがルークに声をかけてきた。
ルークは眠るリーンを抱えたまま、足を止め、ソフィアの方に振り向いた。
「…貴女は、ソレでいいのか?」
気になっていたことを聞く。
「…うん?…子供の事?」
ソフィアは微笑んで言う。
「リーンの事、信用してるから…。それに、私が育てるより、リーンの元で自由に選ばせてあげたいの」
子供の未来を…か…。
彼女にも何か思うことが有るのだろう。
リーンと同じ様に長寿で、いつから魔女王として君臨しているのか分からないが、彼女には選ぶ事が出来なかったのかもしれない…。
「…俺の元に来ても、王族として逃れられない事も有るぞ」
「…それでも…」
ソフィアは苦笑いしている。
それでも、彼女の体内から外に出れず、命が消えるより…リーンの子供として、産まれてくることを望んでいる…か…。
ルークはため息を付き、リーンを抱え直すとソフィアに背を向けて『魔女の森』を抜け、バラのアーチをくぐり、小川に掛かる橋を渡った。
背中に視線を感じたが、ルークは振り向かず真っ直ぐに、アオとカズキが待つ馬車へと急いだ。
森を抜け街道に近付くと、見慣れた馬車が道を塞ぐように停まっていた。
見慣れた、ルークの屋敷の馬車だ。
ルークが馬車に近付くと、こちらに気がついたガズキが馬車から降りてきた。
「…ルーク様!…リーンさん…」
「ルーク様!」
アオも馬車から顔を覗かせ、降りてくる。
「リーンさんはどうしたんですか?」
「詳しい話は移動しながらだ」
アオはすぐさま馬車内の座席に、毛布を何枚も敷いて横たわる場所を作り、丸めた毛布を枕代わりにすると、そこへルークが、眠るリーンをそっと横たえる。
ガズキは準備しかけた朝食の食材を一旦終い、移動の準備を始め、日が昇り、辺りが明るくなって来る頃には、街道から馬車を動かし、少し先にある馬車の休憩所へむかった。
休憩所には小さな小川が有り、馬車を並んで停車することができ、誰でも使用できるので、馬に水や食事を与えたり、自分達の食事も出きる場所だ。
そこへ馬車を停車させ、ガズキは馬に水と食事を与え、アオが馬車の外でお湯を沸かして、朝食の準備を始めた。
リーンは横たわったまま…。
ルークはそんなリーンの髪を撫でる。
朝食の準備が出きると、馬車の中に三人顔を見合わせて、朝食を食べながら、ルークが『魔女の森』であったことを話し始めた。
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「ルーク様はそれで良いんですか?」
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まあ、言われると思った。
「…リーンの子供だろ。俺にはソレだけで良い…」
誰が何て言おうと、リーンの全てを守ると決めたのだ。
例えソレが、魔女王との子供だとしても…。
「…ルーク様がそれで良いのなら、俺たちは全力で見守りますよ」
アオとガズキは顔を見合せ頷いて、そう言って微笑んだ。
良い仲間を持って俺は幸せだな…。
ルークは眠るリーンをチラリと見て、残りの朝食を食べ始めた。
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