百物語を一緒に

ぬるちぃるちる

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仲間はずれは良くないと思う。

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スマホの光を頼りに、辿り着いた教室の中を確認すると、未咲ちゃん、幸ちゃんの女子二人が待っていた。

ああ、幸ちゃん可愛い……。
あの頃と全く変わらない無垢で穏やかな微笑みと目が合うと、切なくて泣きたくなる。
そして、そんな感傷的な気分を台無しにするモニュメントが、二人の間に……。

「……おい、なんだこれは?」
 教室の真ん中に、無視できないほど巨大な蝋燭が一本そびえ立っていた。

「何って、蝋燭だろ?」
 それは見ればわかるけど、なんだこれ?膝上くらいまであるぞ?
しかもご丁寧に、目盛り付きで!
何なの?今時の百物語ってこういうスタイルなの?
確かにちまちま蝋燭100本片づけるよりいいけど……。

蝋燭をまじまじと眺めていると、横から声をかけられた。

「待ちかねたぞ。勇者たちよ!」
 リア充には難しかったのか、未咲ちゃんの王様なんだかラスボスなんだかよく解らない微妙な出迎えを受ける。
楽しそうだから文句はない。

そして、蝋燭に火をつけるよう頼まれた。
喫煙者でもないのに、ライターを持っているのは社会人としてのたしなみだよね。
「聖火点火だね!」
 語尾に星が散りそうな、元気いっぱいの声だけど……。

「全然違うと思うぞ……。」
 ……未咲ちゃん今日はやたらとテンション高いな。

「よーし、火が付いたら始めようぜ!最初はやっぱ空気読んで学校の七不思議から行くか?」
 え?ちょっと待てよ、お前らはともかく俺は今着いたところだろ?
幸ちゃんとどれだけぶりに会えたと思ってるんだ?
少しくらい話させろよ。
思わずにらんだ朔夜さくやに、征斗ゆきとは、解ってる解ってるというそぶりをして見せるが、絶対解ってないだろ!

「じゃあ、音楽室の怪談あったよな?」
 夜凪やなぎも話にのってきたので、話の流れを持って行かれる。

「深夜の12時丁度にピアノを弾くと、黒板の上の音楽家の肖像画が感想を聞かせてくれるって言ってたよ。ベートーベン以外。」
 幸ちゃんもそういうの興味あるのか。

「あんまりひどい演奏すると鍵盤の蓋閉められて、指を挟まれて二度とピアノ弾けなくなるって聞いた。ベートーベン以外に。」
 あ、ちょっと怖い話っぽくなってきたけど……。

「なんで、ベートーベンのけ者にするんだよ……。」
 何か可哀そうだろ?

「多分、耳が聞こえないからだと思う。」
 幽霊なんだから、肉体のしがらみから解放してやれよ!

こうして、俺たちの百物語は、釈然としない話から始まった。
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5月になりました。
ゆっくりになりますが、更新は続けますので
お付き合いいただける方はよろしくお願いします。
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