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31.客

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我々の本拠地、……残念ながら家は無い……、に戻ると、浴槽の傍に、お客さんが浮いていた。

「はぁい、こんにちは、ちょっと、尋ねたいことがあるのだけれど、良いかしら?」
 声をかけられて、フロルのしっぽが太くなった。
警戒心MAXの表情だし、全身の毛が立っている状態なのかな?
ちょっと触りたい。

声をかけて来たのは、宙に浮いて、ゆったりと優雅にヒレを動かす、でっかい金魚だった。

きんぎょねぷた(ねぶたでは無く、ねぷた、ここ試験に出るとこ。重要!)の
山車だしのサイズの金魚に付けまつ毛した感じを思い浮かべて欲しい。

それがフレンドリーに、話しかけてくるのだ。
外敵の警報がゴクちゃんから来ないので、このモンスター(仮)は外敵では無いのだろう。

「どどど、どうぞ。」
 そうは思っても、気が弱いせいでどもってしまう。
平常時の滑舌かつぜつには割と自信あるのに……。

「あらー、大したことじゃないのよ。
 この辺りから、なんだか懐かしい香りがしている様な気がして、気になって来てみたの。
 そしたらー、この、ピンクの水槽の辺りから、やっぱりなんだかエレガントな香りがするじゃない?
 ねえ、これ、何の匂いかしら?」
 オネエもど金魚おねえもどきんぎょの狙いは、ピンクの浴槽だった。
一つくらいさしあげても良いのだけど……、入れないよね?
それに、浴槽がと言うより、浴槽の周りに残った匂いにつられて来たらしい。

「……かおり?」
 だとしたら、じゃぶじゃぶした時にあふれた、薔薇の入浴剤か、
グリーンアップルのシャンプーとボディソープだろうか?
試しに、湯船にお湯を張って、薔薇の入浴剤を入れて見る。

「ブリリアント……!これよぉー、これだわ!今の私に足りない物は!
 失われた記憶ロストメモリーの一端がここにある気がするわぁ。」
 そう言って、睫毛を震わせ、目を潤ませて、ヒレを湯に付けるオネエもど金魚おねえもどきんぎょ
早く巣に帰ってくれないかなぁーと思った。
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