ヒーローのいる世界

ぬるちぃるちる

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だってまさかと思うでしょ?

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生まれる前の記憶がある。
ただそれだけのことで、皆が当たり前だと思って居る事が、
とても異常な事のように思えるケースがある。

むしろ生まれる前の記憶がある私の方が、この世界にとって異質であるというのに。

物心ついた時には、既に生まれる前の記憶があった。
幼稚園に入るころまでは、この世界も前世と同じ日本のどこかなのだと思っていた。

言葉も文字も服装も時計の見かたも地名も食べ物も何一つ違和感なかったのだから仕方ない。

そんな自分の思い違いに気が付いたのは幼稚園の時、今世で生まれて初めて遊園地デビューした時の事だ。

記憶は記憶、私は私、子供らしく前日眠れない程その日を楽しみにしていた私は、
赤いリボンで二つに高く結んでもらい、おろしたての生成りのワンピースに茶色のリュックを背負って
ご機嫌な様子でメリーゴーランドのポニーの上から、カメラを構えた両親に手を振っていた……はずだった。

ところが、何がどうなったのか、気が付いたら、ぐにゃっとしたシャボン玉の中から外の世界を見ていた。
周りには同じように何人も、シャボン玉に閉じ込められ、泣いたり、茫然としていたり、
中には芸人みたいなリアクションの人もいた。

シャボン玉の外の世界はゆがんでいて、どことなくぼんやりと非現実的な世界で、
カニのおばけと、戦隊物のヒーローみたいな人たちが戦っていた。

結論から言うと、ヒーローが勝った。
カニのおばけは、ヒーローに刻まれて、加熱され、大きな缶詰に閉じ込められた。
30分の特撮番組の半分がCMしーえむでも困らないくらいあっけなく。

問題はその後で、カニが倒された直後に、シャボン玉が次々にはじけ、
私の幼い身体は宙に投げ出されてしまったのだ。

「危ない!」
 強く、澄んだ声が近くで聞こえ、青い影がワタシを抱き上げる。
ヒーローの青い人の腕が、私の幼児体型のずん胴を猫の子のように抱えていた。
「けがはないか?」
と、聞かれ、ビックリ顔のまま頷くと、すぐに優しく下におろされ、青い人は他の人に声をかけて回る。
私はこの一瞬んで、すっかり青い人のファン(……下手したら初恋のレベル)になって興奮し、見惚れていたが、

「大丈夫?一人なの?泣かなくてえらいね。」
 と、近くに居たらしい少し年上の男の子に声をかけてもらい、そのまま手を引かれ、
両親の元へと戻ることが出来た。

そして、その日から、私のモブとしての受難の日が始まりを告げる事になった。

******************
28日の分の更新になります。
短いですが、一応間に合った。
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