1 / 2
だってまさかと思うでしょ?
しおりを挟む
生まれる前の記憶がある。
ただそれだけのことで、皆が当たり前だと思って居る事が、
とても異常な事のように思えるケースがある。
むしろ生まれる前の記憶がある私の方が、この世界にとって異質であるというのに。
物心ついた時には、既に生まれる前の記憶があった。
幼稚園に入るころまでは、この世界も前世と同じ日本のどこかなのだと思っていた。
言葉も文字も服装も時計の見かたも地名も食べ物も何一つ違和感なかったのだから仕方ない。
そんな自分の思い違いに気が付いたのは幼稚園の時、今世で生まれて初めて遊園地デビューした時の事だ。
記憶は記憶、私は私、子供らしく前日眠れない程その日を楽しみにしていた私は、
赤いリボンで二つに高く結んでもらい、おろしたての生成りのワンピースに茶色のリュックを背負って
ご機嫌な様子でメリーゴーランドのポニーの上から、カメラを構えた両親に手を振っていた……はずだった。
ところが、何がどうなったのか、気が付いたら、ぐにゃっとしたシャボン玉の中から外の世界を見ていた。
周りには同じように何人も、シャボン玉に閉じ込められ、泣いたり、茫然としていたり、
中には芸人みたいなリアクションの人もいた。
シャボン玉の外の世界はゆがんでいて、どことなくぼんやりと非現実的な世界で、
カニのおばけと、戦隊物のヒーローみたいな人たちが戦っていた。
結論から言うと、ヒーローが勝った。
カニのおばけは、ヒーローに刻まれて、加熱され、大きな缶詰に閉じ込められた。
30分の特撮番組の半分がCMでも困らないくらいあっけなく。
問題はその後で、カニが倒された直後に、シャボン玉が次々にはじけ、
私の幼い身体は宙に投げ出されてしまったのだ。
「危ない!」
強く、澄んだ声が近くで聞こえ、青い影がワタシを抱き上げる。
ヒーローの青い人の腕が、私の幼児体型のずん胴を猫の子のように抱えていた。
「けがはないか?」
と、聞かれ、ビックリ顔のまま頷くと、すぐに優しく下におろされ、青い人は他の人に声をかけて回る。
私はこの一瞬んで、すっかり青い人のファン(……下手したら初恋のレベル)になって興奮し、見惚れていたが、
「大丈夫?一人なの?泣かなくてえらいね。」
と、近くに居たらしい少し年上の男の子に声をかけてもらい、そのまま手を引かれ、
両親の元へと戻ることが出来た。
そして、その日から、私のモブとしての受難の日が始まりを告げる事になった。
******************
28日の分の更新になります。
短いですが、一応間に合った。
ただそれだけのことで、皆が当たり前だと思って居る事が、
とても異常な事のように思えるケースがある。
むしろ生まれる前の記憶がある私の方が、この世界にとって異質であるというのに。
物心ついた時には、既に生まれる前の記憶があった。
幼稚園に入るころまでは、この世界も前世と同じ日本のどこかなのだと思っていた。
言葉も文字も服装も時計の見かたも地名も食べ物も何一つ違和感なかったのだから仕方ない。
そんな自分の思い違いに気が付いたのは幼稚園の時、今世で生まれて初めて遊園地デビューした時の事だ。
記憶は記憶、私は私、子供らしく前日眠れない程その日を楽しみにしていた私は、
赤いリボンで二つに高く結んでもらい、おろしたての生成りのワンピースに茶色のリュックを背負って
ご機嫌な様子でメリーゴーランドのポニーの上から、カメラを構えた両親に手を振っていた……はずだった。
ところが、何がどうなったのか、気が付いたら、ぐにゃっとしたシャボン玉の中から外の世界を見ていた。
周りには同じように何人も、シャボン玉に閉じ込められ、泣いたり、茫然としていたり、
中には芸人みたいなリアクションの人もいた。
シャボン玉の外の世界はゆがんでいて、どことなくぼんやりと非現実的な世界で、
カニのおばけと、戦隊物のヒーローみたいな人たちが戦っていた。
結論から言うと、ヒーローが勝った。
カニのおばけは、ヒーローに刻まれて、加熱され、大きな缶詰に閉じ込められた。
30分の特撮番組の半分がCMでも困らないくらいあっけなく。
問題はその後で、カニが倒された直後に、シャボン玉が次々にはじけ、
私の幼い身体は宙に投げ出されてしまったのだ。
「危ない!」
強く、澄んだ声が近くで聞こえ、青い影がワタシを抱き上げる。
ヒーローの青い人の腕が、私の幼児体型のずん胴を猫の子のように抱えていた。
「けがはないか?」
と、聞かれ、ビックリ顔のまま頷くと、すぐに優しく下におろされ、青い人は他の人に声をかけて回る。
私はこの一瞬んで、すっかり青い人のファン(……下手したら初恋のレベル)になって興奮し、見惚れていたが、
「大丈夫?一人なの?泣かなくてえらいね。」
と、近くに居たらしい少し年上の男の子に声をかけてもらい、そのまま手を引かれ、
両親の元へと戻ることが出来た。
そして、その日から、私のモブとしての受難の日が始まりを告げる事になった。
******************
28日の分の更新になります。
短いですが、一応間に合った。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる